車中での会話
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「ねえね、話聞かせてよ。エンバンティアってどんな場所なの」
車の中、俺は愛子にエンバンティアとはどんな場所なのかと話をするようにねだられていた。だが、正直何も話すことが無いだけに困っていた。
「正直話してもつまらないと思うぞ。魔法と学術の国だって言っても別に俺は教育機関とかに行ったわけじゃない。ただお使いと護衛として連れて行かれただけだしな」
「その話が聞きたいんだよ。知っているでしょ、私が遠出出来ないの」
「はあ。今度何か写真とか用意できるもの考えておくよ」
「ありがとう。行けるわけじゃなくっても水城が行った場所を知れるだけで嬉しいよ」
「なあ、ちょっと良いか」
「どうしたの?」
そこで、オルスが話に割って入る。愛子がその話を聞く。
「遠くに出られないってどういうことだ。別に健康そうに見えるが」
「愛子殿は神に仕える巫女として、神事や霊的に縁のある場所へのお参りを除けば、島根県内から出ることを制限されておるのです」
オルスの疑問に祖父がそう答える。
「何故、制限される必要が」
「心配性の神様や使いがいっぱいいるからな」
俺はそう言って、オルスやミレーやリタにも見えるように調律する。
「「「 ! 」」」
その途端、三人が一斉に車内で立ち上がりそうになった為に俺と愛子が止める。
「落ち着け。大丈夫だ」
「そうです。皆顔が怖いけど怒らないように言っていますから」
「でも、こんなに周りに沢山の」
「モンスターじゃないぞ。この外見でも神使や高名な武者の霊魂だからな」
「だからって、皆水城の事を憎んでいるように見えるにゃ」
「そいつは俺が祝言をぶっちしたからだな。愛子の温情に感謝しろよって」
「それじゃあ水城さんの肩の周りにいる子供の顔も」
「それも見えているのか。見えていないつもりだったけどな」
俺は調律を失敗したかとやり直す。だが、変だ。
「おかしいな。これでは別に悪霊は見えないはずなんだが」
「水城、考えても仕方ないよ。それより説明しようよ」
「ああ。とりあえず安心してほしいのは、まず愛子の隣とかにいる狐とか鎧武者とかは神使や昔の豪族の霊魂で今は愛子のために仕えている式神や従魔と似たものにだと思ってくれれば良い」
「つまり、愛子……さんの指示に従うにゃ?」
「そういう事」
「でもでも、それじゃあ肩にいるそれは」
「こいつらは俺の元家族の悪霊だ」
「元家族!?」
「俺の家系は才能主義だから、弱いやつは一定の年齢ごとに殺されて生き残った奴の糧にされるんだ。ただ、その中にはこうして悪霊となり呪わんとする輩がいるってだけ」
「何で、平気でいられるにゃ」
「幼い頃から親父も祖父もこんなんだったからな。それに、この程度の呪いなら自力で返せるし」
自分にとっては当たり前のことだった。だが、そこで愛子が何故か抱いてくる。
「おい」
「そっか、その話をこの人たちには出来るんだね」
「何だよ突然」
「ううん、何でもない」
そう言う割にはぎゅっと力強く抱きしめる愛子は、悲しそうな、嬉しそうな、そんな表情をしていた。
「大旦那さま、もうまもなくで到着です」
「おお、すまないの。皆もうすぐ着くから準備しておくれ」
そう言われるや車はゆっくりと停車して一分後にはドアが開けられる。そして、俺は驚愕する。
「ここ何処だよ」
「何処って遊園地だけど」
なんでだよ、俺は心底そう思うのだった。




