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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
ダンジョン攻略編
56/67

気乗りしない再会

皆様の作品お待ちしております。

 今回転移場所として選ばれた場所は首都の北部にある山間だった。どうやら、このあたりのエリアをしばらくの間一般人の立ち入りを制限することで人員輸送などを行いやすくするとのことである。

 何故人員輸送という、俺が日本からエンバンティア・日本共同学術研究所に来た時や研究所からエンバンティアへミッションで向かった時には使わなかった言葉を使っているのかは理由があるのだが、まだその理由をオルスやミレー、リタたちは知らないはずだ。


「はあ、来たな」

「すげえ、これが日本の首都なのか……」


 魔法陣からは専用の車で数十分の移動、そして首都に到着。

 ここ数年の間に加速度的に都市開発が行われたにもかかわらず、既に巨大なビル群が犇めき合う光景を見てオルスは興奮を隠せないでいた。


「俺も、こんなの造れるようになるのかな」

「ん? 造る? お前土方にでもなるのか?」

「ん、ああ。ギガンティアは体格が大きいから工事現場で働く人は珍しくないんだよ」

「でも、骨折する人が種族的に多いって研究報告というか発表が」

「ああ、学内の研究発表だろ。ただ体格が大きいからって理由で力仕事に従事する奴が多いから、よけい科学的に考えたら骨折しやすい奴が多いんだろうな」


 身長が極端に高いから、骨密度などの関係で骨折がしやすい種族である。そんな発表の話を出すとオルスは認めるように話す。だが、そんなことより。


「それで、冒険者止めるのか」

「! そうだ、俺お前と冒険者するの止めなきゃいけなくなるのか! ああ、どうしよう!」


 なんか久しぶりにこいつが馬鹿しているところを見た気がする。


「ミレー、リタ? どうしたんだ」

「え、なんにゃ」

「いや、二人ともなんか元気がなさそうに見えて」

「いや、何でもないですよ」


 ならいいけど、そう言うが二人の様子はなんか変な気がする。そして、俺も現在進行形で気乗りはしないでいた。


「はあ、どうやって会えって言うんだよ」

「会うって、許嫁か」

「それもあるけれど家族にだよ。ダンジョンで何度も陰陽術は結局使っているし」

「俺の試験でも陰陽術を使っているから第三者の意見もあるしな」

「何で兄貴もいるんだよ」


 炎仁も一緒にいた。てっきり四人旅になると思っていたのに。


「俺の任務はお前を家族と許嫁のいる場所まで連れて行く事だからな」

「はあ、もうさ。見えているんだよなあ」

「見えているって、あの黒塗りのでっかい車か?」

「それ」


 そう言って、指示された駅前に到着すると周囲の邪魔になっていないのか不思議な位に長いリムジンがあって、そのそばで人型の式神が車の中から人が出るのを促すように扉を開けた。そして、それと同時に二人の男性が車内から出てくる。


「久しぶりだな、水城」

「なるほど、少しはましな面になったじゃないか」

「それはどうも」


 俺の祖父であり天滿家元当主、天滿草縁。

 俺の親父であり現天滿家当主、天滿土骸。

 その二人が俺を見ていた。


「それで、後ろのお嬢さん方とお兄さんがお前の召使か?」

「違う、大事な『仲間』だ」

「ほう、愚弄する訳ではないがお前に付いてこれる奴がいるのか」

「それは私からも付け加えさせてください」

「炎仁」

「この三名は俺の式神を一体討伐しました。力は一番弱い猫の式神ですが、それでも隠蔽術は何の抜かりもありませんでしたが魔法はそれを看破できるようです」


 その報告に、二人は初めて感心したようである。


「ほほ、炎仁にそこまで言わせるとはな」

「魔法か、何も考えずに対岸の話だと思っていたら足元を掬われるのは我々の方か」

「やもしれません」

「それで、何時まで俺はここで話して……」


「ばあ!」

「うわ!」


 そこで俺は本気で後ろから抱き着いてきた奴にびっくりをする。だが、親父達を使ってまで盛大な時間稼ぎをこんなちゃちな事のために使える奴なんて、俺は知る限り一人しか知らない。


「何しているんだ白山!」

「えー、みー君私の事あいちゃんって呼んでよ。ね? 呼んで?」

「ふう、せめて愛子で許してくれ。それに、俺のことも水城って呼んでくれ」

「うん、それでいいよ水城」


 そう言って、彼女は俺から離れる。そして親父達の方を見れば祖父はおろおろと、親父は頭を抱えている。


「二人とも、仲が良いのは良いが神々のお怒りを買いかねないことは……」

「私は何度も言っているんですよ。この位私に気兼ねなく接してくれるから水城が好きなんだって。だから私は咎めないのに」

「だが、これでこいつが当主の座にいる間はずっと白山のご意思が強くなる。当然後ろの神々達も」

「くーちゃんはそんなひどいことしない気がするけれど、神社の者が粗相した時はおっしゃってください」


 そんな話をしながら、くるっと回って愛子はオルスやリタやミレー達を見る。


「初めまして。白山愛子です。お名前伺っても良いですか」

「オルス・クロップだ」

「リタ・ミヒューにゃ……です」

「ミレー・カティアンナです」

「うん、よろしくお願いします」

「挨拶が遅れましたな。天滿草縁じゃ。老いぼれじゃがよろしくのう」

「天滿土骸だ。水城の父として言わせてもらうが、この馬鹿のために仲間になってくれて本当にありがとう」

「あ、はい」

「よろしくお願いしますにゃ」

「どうもよろしくお願いいたします」

「皆様、お車の準備はもう出来ておりますのでどうぞお乗りください」


 式神に促されてしまったため、俺達は車に乗って移動することにした。


天滿草縁(そうえん)と天滿土骸(とぐろ)と読みます。各々植物の様な式神とアンデッドの様な式神を操る、術者としてはかなりの異端児です。まあ普通式神は鬼と呼ばれる怪物などを使役する所から始まるのに、全然関係ない物や既に死んでいたりするものを操るとか……という話です。


くーちゃん……菊理媛神です。白山も別名である白山比咩神より取りました。

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