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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
定期試験編
54/67

試験終了後の一幕

皆様の作品お待ちしております。

「合格を祝って、乾杯!」

「「「 乾杯にゃ! 」」」


 俺の言葉に続けて三人がグラスを鳴らして応じる。寄宿舎にある俺の部屋、テーブルには豚の丸焼きや魚のムニエル、他にも串焼きや饅頭や色々な物が並んでいる。


「でも、正直合格できるとは思わなかったな」

「ミレーが機転を利かせたおかげにゃ」

「でも、これで私達も少しは近づきましたね、水城さんに」

「そうだね、俺はアクアマリン、皆は『シルバー』クラスだからな」


 あの後、全員の昇級後のクラスが発表されて知ったのだが、何と三人は全員シルバークラスに振り分けられた。要するにサファイアクラスから飛び級で昇級である。


「このままだと、俺もみんなに数段昇級されてあっという間に追い越されちゃうのかな」

「何言っているんだよ。お前でもアクアマリンクラスになるのにトップクラスで速く駆け上がっているっていうのに、俺達が同じ速度で行ける訳ないだろう」

「水城さんはエスティシャ先生の試験では数少ない『ギミックを解いた』正規合格者としての昇格、そして今回のクリフ先生の出す『他の挑戦者より厳しい基準』で合格した人ですよ」

「普通に考えてあれを私たちがやらにゃいといけないとか大変にゃ」


「でも嫌とか出来ないとは言わないんだな」


「当然だろ」

「勿論です」

「当たり前にゃ」


 挑発的に言うと、三人は一致した思いを揃えた。だからこそ、話し時かと思い俺は伝えることにした。


「皆、実は伝えていなかったことがあるんだ」

「にゃ?」

「どうしました、改まって」

「言ってみろよ」

「実は、『俺達全員がシルバークラス以上になったら』全員強制参加のミッションがあったんだ」


「「「 ! 」」」


 その言葉に、全員が表情を固くする。


「俺達がシルバーになれてなかったら」

「当然水城さんだけ参加でしたでしょうね」

「話すのが遅いのはこの際どうでも良いにゃ。それより早く詳細を伝えるにゃ」


 全員、既に肝が据わっているというか、必要な情報だけを求める姿勢が出来上がっていた。頼もしいったらありゃしない。


「実は、皆に来て欲しい場所があるんだ」

「来て欲しい場所」


「日本だ。それも元首都だ」


「! 元首都だって!」

「それってつまり、『東都府』にゃ!」


 リタの言葉に俺は頷く。


「ああ。旧名東京都と呼ばれた一大都市だ」

「原宿、池袋、新宿! 行けるなら行きたいにゃ!」

「首都機能が移されたことで、今でこそ日本最大の学府たる東都大学、旧名東京大学ぐらいしか名所と呼べて今も勢いのある場所は無くなったけれどな」

「それでもエンバンティアの都市よりは人多いんだよなあ」

「国一つに一億人ですもんね」


 オルスが苦笑しながらこぼし、ミレーもそう口にする。


「だからこそ、今回の出来事は直ぐにでも解決しないといけないんだ。だから力を貸してくれるか」


「決まっているだろ」

「やってやるにゃ」

「はい」


「良し。じゃあ明日にでも意思が固まったと伝えるから。それに、ミッションの前に俺はいかなきゃいけない場所があるけれどな」

「にゃ?」

「償いだよ。俺の過去にやった出来事のな」

「それって?」


「西都の実家から『島根都』の『許嫁のいる』神社に来るようにと言われている。だから、まずそっちに顔を出さないといけないんだ」


 俺はその言葉を何気なく言った。だが。


「あの、水城さん……」

「水城って、許嫁がいたのにゃ……?」

「ん、ああ。第一実家を出た時に結婚式も一緒に飛び出しているしな」


 二人の女の子がなんとも言えない表情になったのに彼は気が付かなかった。




「ミッションや許嫁さんの事、話したようですよ」


 水城の部屋にいる虫を介して覗いていたイルミス・シャリアはそうクリフ・マゴメントに告げた。


「全く、このタイミングでまず島根都に行けとは、一体何を考えているのでしょうか」

「流石に水城さんのご家族ですし、何も考え無しという事はないと思いますよ」

「そうじゃよ、何せ炎仁君の時にもお主は話しておるじゃろう」

「……」


 ガリウス・アスモダイの言葉に、クリフは口を止めた。


「正直、私は今の現当主は苦手ですがね。あれは私と同じに人間です」

「あら、じゃあますます頼りになる人じゃないですか」

「そうじゃのう」

「お二人だけですよ。私を見て頼りになる人だなんて思う人は」


「依頼されていた武器防具の素材が集まった」


 そこで、ガリウス・アスモダイが話に入って来る。


「今度のミッションの追加補充人員は試験合格者だろう。何人だ」

「13人です。水城さん達の新入生も含めてですが」

「……合格したのか」

「水城さんは当然のように。そして一緒にいた三名も合格しました」


 クリフさんがリストを渡して、そしてガリウスさんがそれを見る。


「少なくないか。想定必要追加人員はこの3倍はいなかったか」


「足りない分はエンバンティア本土から補充します。そのためのその前のミッションですし」

「その前のミッション?」


 イルミシャさんが首をかしげると、クリフさんが説明をする。


「円卓会議がうるさいかもしれないですが、将来的な国交を考えればクリスタルクラスの冒険者を数名なら派遣してくださるでしょう。それだけいればシルバークラス数百人分程度の働きはしてくれます。そう言った根回しをするための本土への派遣や手紙の受け渡しでしたし」

「だが、今回のミッションの最低参加クラスがシルバークラス設定はお前の独断だろう。もっと人数を増やしても」

「それでも、質が悪い冒険者を入れるくらいならこの方が良い。私はそう思います」

「難しいですね、何せミッションの内容が……」


 そう言いながら、三人の会話は夜に消えていくのだった。

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