秘策
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「!」
「駄目ですよ、あの場に向かっては試験妨害で不合格にしないといけなくなります」
クリフ先生のその言葉に、俺は素直に足が止まる。何か術や魔法を使われたわけではない。だが、本能的に試験を不合格にされるという事実が俺の助けたいという思いを踏み止まらせてしまった。
「さて、話しの続きをしましょうか」
そう言って、クリフ先生は俺が足を戻したのを確認してから話始める。
「私が今回の試験をした一番の理由は、魔法と陰陽術で互いに攻撃しあえるのか。そして結果は一橋先生の予想通り『根源の理論が違うから相性抜群とはいかないが効果がみられる』でした」
「でも、きっとシルバークラスの人ほど驚いたはずだ。俺がゴールドクラスの卒業生だと知らされているからこそ高威力攻撃をしたはずなのに思ったより効いていない」
「そこまで予想してこの試験したんですか」
なんて意地悪な人達なのかと思った。
「食事に例えれば簡単です。ステーキを食べるのにスプーンを使いますか? スープを飲むのにナイフとフォークを使いますか? 道具を使い分けますよね。要はそういう事です」
「でも、陰陽術で対抗する鬼……式神を倒せと言うのは彼らにしてみればナイフやフォークを使って煎餅を食べろと言っている様なものですよね。そもそも素手で食べるという道具……ではないかもしれないですが、食べ方が根本的に違うし」
「知っているかも怪しい。そこはその通りだな。お前の言う通り」
「こんなの、最初から負け戦じゃ」
「それならその程度って事です」
「え」
「別に私はそこまで鬼であるつもりはないですよ。事実、今もどうにかこうにか頑張っている生徒は評価しています。ただ『合格点の評価に届いていない』だけです」
「あくまでも合格点は1体でも式神を倒す事。そこは譲られていないからな」
二人はそう言っているが、試験の評価を知ったらなおこの試験を合格できる人がいるのか、オルスやミレー、リタは合格できるのか不安になって来た。
「うわあああああああああ!」
「止めるにゃオルス! 頑張れにゃ!」
「そんなこと言ったって! これどうするんだ!」
「回復魔法入れます。ヒール!」
「おう! たすか……うおおおお!」
丑の背中でオルスがロデオをしながら動きを封じようともがいている。そしてリタやミレーがどうにかこうにかしている中オルスが魔法を使う。
「ええい、シールドバニッシュ!」
「ぶおおおおおお!」
至近距離からの攻撃。それは確かに丑にダメージを与えるが、それでも動きを封じるには至らない。
「ぐおお! また回転を!」
「リタさん! 今度こそ決めますよ」
「はいにゃ!」
そう言って、リタが丑に突撃する、狙いはまた肛門。確実に今は実力不足だと分かっている彼らだからこそ狙う剝き出しの弱点である。だが。
「ぶお」
「! また止まって」
「ぶおおおおお!」
「にゃあああ!」
「リタさん! どうして」
タイミングは完璧だった。敵が回転して丁度リタの腕の長さできっちり肛門に刃物を刺すことが出来る瞬間だった。なのに敵はその数秒前にまたもや止まり、後ろ蹴りを決めるのだった。
「うごおおお!」
「ヒール! リタさん、ごめんなさい」
「大丈夫にゃ。でも何でにゃ。どうしてあれだけ回っている敵にタイミングを合わせられないにゃ」
それは私も疑問だった。あくまでも攻撃は敵が『一方向しか見ていなくて、その状態で暴れている時』ではなく『ぐるぐる回って敵もどこを見ているか分からなくなっているはず』のタイミングを狙っている。
ぐるぐる回っている時の方が何処から攻撃されても対応出来そうだが、そこはリタさんの隠密魔法でカバーしているはずだった。なのに、何時、何処を狙っても敵に攻撃を看破されてしまうのである。どういうことか。
「……まさか」
「ミレー?」
「すみません。正直、この予想が正しかったら狙うべき敵がかなり限定的になります。それに、考えを今も牛を封じていただいているオルスさんに共有できないのであれですが、私にはもう」
「ミレー、落ち着くにゃ。作戦があるなら教えてにゃ」
「はい」
そう言って、私は自分の考えを伝える魔法でリタさんにだけ考えを伝えた。
「オルスさん!」
「おう」
「これからホーミング魔法を全ての敵に対して撃ちます! だから全力で魔法を避けてください!」
その言葉にオルスは冷や汗を噴出させ、リタは覚悟を決めた顔をする。
「待て! お前のホーミング魔法は敵味方関係なく攻撃する!」
「オールオールレーザー!」
「待てええええええええええええ!」
ミレーは魔法を放つ。全方位、敵味方関係なく攻撃を始める光の奔流は全てを浄化しようとするが如くうねる。そして。
「! 見つけました!」
「私も見つけたにゃ!」
「はあ⁉」
とあるものに気が付いたミレーと、同じく気が付いたリタは二人して走り出す。
だが。
「きゃあ!」
「来るにゃ!」
一斉に他の丑以外の式神たちが襲ってくるのだった。




