クリフの試験
皆様の作品お待ちしております。
「これより、定期試験の実戦を始めたいと思います」
クリフ先生の声が訓練場で発せられる。今までにないほどの重い言葉だ。
「既に他の先生たちが独自にやっている試験を受けた人たちもいるでしょうが、私は厳しく試験の結果を採点させていただきます。何せ、私たちは別に命を落としてほしい訳ではない、例えどんなにギルドのことしか考えていないなど『能の無い』意見を言われようともです」
その言葉に、初めて試験を受けるのだろう人は訝し気な表情や若干笑う様な顔をしているが、その一方で試験を既に受けた人や、その試験に落ちたのであろう人たち程顔を引き締める。
何せこれは「定期試験」である。数少ない「試験を自主的に開くことが少ない」教師の開催する試験を受けられる、そして難易度の高い試験を受けられる貴重な機会なのだから。
それはミレーやオルスやリタの顔を見ればどれだけ本気なのかを窺える。
だが、俺は正直一人だけ嫌な気分になっていた。
「その前に、紹介したい人がいます。挨拶をどうぞ」
「水城! おーい! 元気にしていたか!」
なんであの糞義兄がいるんだ。いや、クリフ先生から予め聞かされていたから知ってはいたけれど。
「オッホン」
「! ごめんなさい、挨拶します。ん。えー、初めまして皆さん。私の名前は天滿炎仁。天滿水城の義兄で、ゴールドクラスでこの研究所を卒業をした陰陽師です」
「ゴールドクラス!」
「そんな人がいたのにゃ! 水城」
「知り合いがゴールドクラスなんてすげえじゃねえか!」
ミレー、リタ、オルスにそう言われるが俺はどうでも良かった。あの義兄がどうして来たのか。何の理由もなく動く人間じゃないのは俺は嫌というほど知っているのだから。
「では、天滿水城。まずは前に出てきてください。あなたは今回の試験で唯一人陰陽術の対抗策を知っている人です。なので試験の内容を少し厳しくしたいと思います。トパーズクラスですしね」
「何をするんですか」
「彼の式神を過半数倒してください」
そのクリフ先生の言葉と同時に、炎仁が札を構える。その数10枚以上。そして札が宙を舞うと。
「「「「「「「「「「「「「「 ブオオオオオオオ! 」」」」」」」」」」」」」」
子、丑、寅、卯、他にもエトセトラエトセトラ。
兄貴の操る数多の式神たちが一斉に出現する。
「それでは試験始めです」
言われて俺も札を出して、掛け声をあげる。
「仕事だお前達」
「お呼びですか主殿!」「あらあら、炎仁殿の式神ですは」「うーわ、マジカヨ」「しかも強くなっていないかねー」「もーう、どうして面倒な相手の時だけ焔華を呼ぶかな!」
雪丸、草編姫、錆金、埴輪郎、焔華、五体の式神が出現する。
「1分で倒せ」
その指示をしてから、30秒後。
「そんなにいりません、主殿」
「私は倒すことは敵いませんが」
「足止めぐらいは俺も出来る」
「皆の攻撃は全て知っているねー」
「まあ、焔華の支援あってのことだよね!」
兄貴の出現させた式神は駆逐されつくした。
「早さも実力も全てが聞いていた通り、炎仁君より上。その噂相違なかったようですね」
「ははは、また敵わなかったな」
クリフ先生は素直に俺をほめて、兄貴は若干の悔しさと嬉しさを滲ませてそう評した。
「ともかく、これであなたのクラスは私の権限でアクアマリンクラスに昇格です。先日の筆記試験も優秀でしたし、十分素養はあると言えます」
「どうも」
そして、クリフ先生は俺の戦闘を見て驚くような顔をしている他の受験者に対してこういった。
「続いて、皆さんへの試験内容を発表いたします。試験内容は簡単。先ほど見せた炎仁君の従魔、これを一体でも倒せれば勝ちです」
そう言うと、また義兄は札を出してばらまき。
「ぶおおおおお」
従魔が出現する。
「試験内容は簡単です。何せ私は何もルールを設けていません。蹴落としても、協力しても、一人で上手く立ち回っても何でもいい。とにかく従魔を一体倒せればそれでいい。それだけです。当然炎仁君を倒しても構わない」
「ひどい先生だ」
「では、試験開始です」
俺はこの時「この糞教師」と思った。だってこれでは不利ではないか。明らかにシルバークラスやそれ以上のクラスの人たちは結束して倒そうとする。そしてそれ以下のクラスの人たちは、漁夫の利を狙うなどしてこれまた上手く徒党を組もうとする。
「おい」
「水城がいにゃいのに」
「どうしましょう」
俺という戦力が既に合格しているから先ほどから「もう合格者なら試験に参加しないでくださいよ? 下手に手を出せば試験妨害でクラスも下げますから」なんてクリフ先生は言っている。
オルス、ミレー、リタは苦しい試験を受けざるを得なくなっていた。




