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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
エンバンティア編
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冷蔵庫

皆様の作品お待ちしております。

「温室は失敗したが、じゃあ次は冷蔵庫の発表だな」

「よ。よろしくお願いいたします」


 今度はおどおどした様子の女性が前に出て発表し始める。


「私の場合は、正直日本の氷室や昔の氷をそのまま入れていた時代の冷蔵庫を再現したような形になります。少なくとも、電気による温度管理は温室を作った彼と同意見で大規模な工事が必要ですが、エンバンティアでは現実的ではないと言った感じです。代わりに、氷系統の魔法使いの作り出した氷を切りだして冷やす、もしくは氷魔石で長時間冷やせば今のエンバンティアでも十分再現性はあると思います」

「食べ物を冷やすと腐らない、とのことですが。それはどのような原理なのでしょうか」

「空気中にも、何処にも微生物という目には見えない生き物がこの世界にはいるんです。当然食べ物の中や表面にも。そして、その生き物の中には食べ物を腐らせてしまう生き物もいるのですが、冷やすとその微生物の活動を抑制できるので長期保存が可能になるのです」


 フランソワの質問にも、女性は丁寧に答える。が。


「ちょっと待った、『微生物』は多分エンバンティアには無い言葉だから翻訳の指輪を嵌めさせないと伝わらないぞ」

「ご、ごめんなさい」

「いえいえ、お気遣いなく」


 ミトレさんが指輪を嵌めて話始める。


「それで、これがどう役に立つんだ。食べ物が腐らないなどと言っても、乾燥したパンなどを食べれば十分じゃないか」

「普通に冷凍保存って物流革命起きる様な技術なんだけれどなあ」


 レイネスさんが怪訝そうに質問するがそこで、俺がポロっと喋ったことにフランソワさんと成果発表をした女性が目を輝かせる。


「物流革命って、具体的に何が起きるのでしょうか」

「お願いします! 日本の方から言ってくださると私だけより信憑性が増します!」

「言っちまったんだ水城、ちゃんとフォローしてやれ」


 いらないことを喋ったばかりにミトレさんにもそう言われたで、俺は素直に考えを伝える。


「まず、大掛かりな設備は必要ですが食品の長期保存が可能になる。これは、聖都でも採れたての野菜や魚などを食べられるかもしれない、そういう事に繋がるんです」

「魚って、足が速いですよね。本当に可能なんですか」


 ミレーが質問してくるので、俺は正直に思ったことを伝えた。


「巨大な水槽ごと冷やしながら運ぶのか、それともカチコチにしてやるのかは知らない。でも、日本では珍しい話じゃないだろう」

「大体一度に運搬できる量は」

「エンバンティアで陸路なら馬車、空路ならエアタクシーだが、どちらにしても正直費用対効果に見合う量あるかは不安ですね。エンバンティアは広いですから、海でとれた安い魚もここに来る頃には高級品になっちゃうと思いますね」

「何だ、それでは意味がない」

「ですが、物流革命が起きると言ったからには、何か方針があるのですよね」

「えー、まあ一応」

「教えてください」


 そうフランソワさんに言われたので、俺は机上の空論になりそうな意見を伝える。


「まず巨大冷凍倉庫を備えた商人ギルドの巨大倉庫を、空路か陸路で中継地点として都合の良い都市に配備します。そしてリレー方式で運搬するのが一番現実的でしょう。要するに長距離一人だけで運ぶのは大変ですが、複数人で運べばという事です」

「だとすれば、街道の整備と商人ギルドに対しての倉庫の拡充に対する費用負担などについて話す必要が出そうですね」


「仕事の話なら混ぜてくれや」


 そこで、冷蔵庫の話をしていた会議室の中に一人の男性が入って来る。若干子供に見える快活そうな男性だ。


「ダゼル、あなたまた無断で外出していましたね。一か月ぶりに来たと思えば何ですか」

「良いじゃねえか、ドラゴン共と一緒に空飛ぶの楽しいんだからよ」

「ドラゴン」

「彼は通称ドラゴンライダーと呼ばれていて、エンバンティア各地で野生のドラゴンを討伐しては従えて乗り回しているクリスタル級の冒険者なのです」

「ドラゴンって、あのドラゴンだよな」

「ああ、あれだ」


 そう言って、窓の先指をさした先には俺の思い浮かべたような水色の肌をしたドラゴンが空を飛んでいた。何者なんだこの人は。クリスタルクラスって研究所にいた頃は実感湧かなかったけれどこんなに常識の埒外みたいな人ばかりなのか。


「さて、それはそうと何の話していたんだ。女中共は仕事の話しているからとしか言わないからよ」

「それは、遅れましたが現物を見せてお話ししましょう」


 そう言うと、研究員の女性が絨毯をひく。そしてその絨毯の中に何人か人が……。


「入って行ったよ! なんで⁉ あ、これがあの空間歪曲型収納絨毯か」

「さて、何が出てくるのでしょう」


 そう言って、女性がフランソワさんが心待ちにしている前で冷蔵庫が少しずつ出てきてこちら側で控えていた研究員によって床に置かれる。


「これが冷蔵庫ですか、食べ物を冷やして長期保存する」

「これを先ほども言ったように、輸送手段としても応用した技術を使えないかと話したのです」

「そこ詳しく教えてくれ」


 そう言われたので、ダゼルさんに俺は詳しく説明した。


「なるほどなあ、よし。じゃあ必要な資金は俺が負担してやるよ」


 ダゼルさんは二つ返事でそう言った。

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