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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
エンバンティア編
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聖都アルゲバテインでの戦闘

皆様の作品お待ちしております。

「どうだい、エアタクシーの乗り心地は」


 そう言ってミトレさんはエアタクシー、魔法科学図書館が出資している会社の運航する新たな乗り物を自慢する。場所は村を出て数分した頃の空の上だ。そう、今俺達は空の上を飛んでいる。


「すげえ、これ魔法で飛んでいるんだよな!」

「それに、一人でやっているのに落ちる気配ないですよ。凄い魔法ですね」

「ほほほ、昔から魔法の持続時間だけは自信あったんじゃ。この位お安い御用よ」


 そう言って金属製のバイクの様な機体に跨り、俺達の乗るゴンドラを引くのは老齢のおじいさん。腰には杖が括り付けられている。


「何言っているの、その杖自体が魔法の力を強くするおかげでしょ」

「ほほ、間違っとらん。だがこいつも隠居して仕事の無くなった頃よりは喜んでおるじゃろう。死ぬまで儂はこの仕事に転職じゃ」

「お二人は知り合いなんですか」

「そうじゃな、儂が冒険者だった頃によく素材を売りに行っておったんじゃ。ギルドや商人よりよっぽど高く買い取ってくれた」

「研究者に研究用としてドロップアイテムが出回るのは少なかったしね、それにゴールドクラス冒険者の持ってくる素材になったらもう」

「ゴールドクラス!」

「そんなに強かったんですか!」

「昔の話じゃ」

「そう言って、高々20年前の話でしょう」


 魔法のおかげで横風に吹かれはするが、寒さや突発的な暴風などに襲われる心配はない。こんなに空の旅が快適なんて思わなかった。少し五人で乗るとゴンドラが狭いが。それに……。


「リタ、さっきから喋らないな。そんなに怖い?」

「こんなに高いなんて聞いていないにゃ!」


 ゴンドラにしがみついているリタは、空の旅を満喫するオルスと、魔法についてお爺さんに話を聞くミレーとは大きな違いがあった。

 そんな旅をしてやって来たのは。


「やっと着いたにゃ」

「そうです! 私初めて来ました」

「ここが聖都アルゲバテイン」

「皆凄い顔しているな」


 それこそまるで、とてつもない場所に初めてやって来た人みたいに。


「水城君はイメージつかないかもしれないけれど、ここはエンバンティアの人にとっては一番信じられている宗教であるアルケミヌス教の女神を崇拝するための聖地でもあるんだ。人生で一度は行ってみたい場所なんだよ」

「あー、お遍路とか聖地巡礼みたいな感覚ですか」

「そういう事。それに、ここは魔法研究の最先端都市という側面も持っている。それは、学術国家であるエンバンティアにとって国家の運命すら司る場所でもあるんだ」

「大袈裟な」

「大袈裟じゃないよ。何せ私が同行したのはここで会える一番偉い人に会うためでもあるからね」

「一番偉い人……」


 その不穏な言葉に連れられて、俺達は聖都の中央にある巨大な宮殿に案内された。


「ここは」

「アルゲバテイン王宮。その昔戦乱の時代に知恵だけで国を守り抜いたアルゲバテイン王の居城だと言われている場所で、現在は選ばれた魔法使いや戦士だけが立ち入りや居住を許された場所さ」

「それ、滅茶苦茶凄い場所じゃ」

「アルゲバテイン王の直系の方々は今は別の場所に居を構えていらっしゃるから、ここは自由で問題ないよ。だからこそ、私達でも立ち入りできるんだ」


 そう言って、彼女は慣れた様子で門番に説明すると、俺達と数名の研究員に入るように言ってくる。そして門は開かれる。


「さて、水城君。まず注意がある」

「はい」

「この後入ったらすぐ戦闘できるようにしておいて」

「は?」


 こんな場所で?


「もしかしたら君くらい強い人なら、大変なことになるかもだしね。ほら、私じゃどうしようもないから君から入るんだ」


 トパーズクラスが本当なら、と彼女は言う。そう言うので、俺は宮殿に一歩踏み込む。


「!」

「何者だ!」


 まだ一歩目。門番が門を開けたからこそ入っただけ、なのに。


「門番が入れたとしても、貴様たちを入れるなど私が許さん。直ぐに帰れ」

「だからって、何の迷いもなく首取ろうとするか……」


 敵の水平に切られた剣を白羽取りしていた。


「水城さん!」

「止めろ! 敵は入った奴だけを襲う! 入らなければ!」


 襲ってこない。そう言って、俺は敵のお腹を蹴り距離を少しでもと空ける。そして呪符を二枚取り出すと式神を召喚する。


「急ぎだ! 雪丸! 錆金!」

「合点です! 主殿!」

「そんなにやばいのか……」


 和装の狐の式神は交戦的に、もう一人の鬼らしきぼろ布を纏った式神は気だるげにそう言った。

 

「魔獣使いか、ならば」

「主には指一本触れさせません!」


 そう言って、襲ってきた女と雪丸の戦いが始まる。それはまさに雲の上の戦いというのが正しいか、剣と刀が目に見えない速さで結びあっていた。


「錆金、動きを封じるだけで良い」

「無理、動きが速すぎて倦怠感を覚えさせないと雪丸の方をやるかもしれない」

「じゃあそれで」

「仰せのままに」


 錆金は手を上下に合わせるように構えると、視線の先に先程の女性が入るようにして、何か喋り始めた。すると。


「やったか!」

「このまま足をもつれさせる」


 そう言って、彼は操るように女性の動きを翻弄する。すると雪丸は動きやすくなったのか剣に対して刀が少し有利に動き始めた。そして。


「やあ!」

「!」


 女性の剣と、雪丸の刀が鍔迫り合いの末に動きが止まった。その時だった。


「そこまでです」


 そう言って、一人の女性が入って来たのは。


「レイネス、あなたは何度客人を攻撃すれば気が済むのかしら」

「し、しかしフランソワ様、これは」

「黙りなさい。私の顔に何度泥を塗れば済むのかと言わないと分からないかしら」

「……はい」

「さて、ミトレ。入ってください。後ろの三人や研究者の方々も一緒です」

「よし、妖精姫の許しも得られたし入るよ皆」


 そう言って、他のみんなを先導する形でミトレさん達が入って来る。俺って一体……。


「それはそうと初めまして。私はフランソワ・ミレティユール。あなたの学長と同じアークメイジの一人ですわ」

「! アークメイジ、ガリウス・アスモダイ先生と一緒の」

「ええ、あなたお名前は」

「水城です。天滿水城」

「そう、よろしくね、水城」


 俺はそう言って、彼女と握手をするのだった。

筆が深夜なのに乗ったのでもう少し書きます。

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