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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
エンバンティア編
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いざ、エンバンティアへ

皆様の作品お待ちしております。

「それでは皆さん、集まりましたね」


 そう言ってスタッフに教員、それに俺達同行者全員をクリフ先生が一瞥する。


「これは言わば皆様の成果発表の様な物です。この研究所はエンバンティアのために、そして日本のために常に学術的に発展をし続けなければいけないです。そしてただ作っても意味はない、使えるものを作らないといけない。これはエスティシャ・ベロル先生の言葉です」


 そう言いながら、見回した末に話を続ける。


「例えば、皆さんが当たり前のように使っている空間歪曲型収納絨毯、それはかのアークメイジが発明した大型製品さえも絨毯の中に収納できる道具です。それもどうにか実用化したのも、この研究所が初めてのはずです」

「空間歪曲型収納絨毯?」

「知っているかにゃ」

「知らないです」


 オルス、リタ、ミレーがそう言っているのが聞こえる。名前からしてきっとどんな道具かはわかるのだが、エンバンティアでさえ馴染みのない道具なのか。


「では最後に、一度行けば帰りは1か月後のゲートを開く日まで帰れません。忘れ物があったとしても、何も私たちは出来ません。くれぐれも注意してください」


 最後に、俺達の方に来たクリフ先生は何かパスポートの様な物を渡してくる。


「そちらはスカイワードジャーニーのエアタクシーのフリーパスです。研究所所属の人なら移動距離によらず無料で使える優れ物ですが、くれぐれも無くさないようにして下さい。一度無くした人がいるのですが、彼が戻って来たのは現地でアルバイトをして飛行代を稼いだ後でしたので」


 そう言って、クリフ先生は言葉少なに俺達を転移魔法陣の方に向かわせる。


「さあ、楽しいエンバンティアの任務を。皆に女神の加護があらんことを」


 最後にその言葉が聞こえて、空間が歪む。そして気が付いた時にはエンバンティアにいた。


「二回目だな」


 最初は、入学試験のために日本から研究所のある島に来た時。そして今は、エンバンティアに来るために来た。そう、エンバンティア。未知の世界にだ。


「ここは何処にゃ」

「ここは聖都アルゲバテインの西にある、カリサン村の麓の研究所だよ」


 そう言って、一人の女性が話しかけてくる。


「こんにちは皆。私はエンバンティア・日本学術研究所のエンバンティア代表外交部所属の研究者のミトレ、クラスはまだアクアマリンだけれどよろしくね」


 そう言って、緑色の髪をした女性が気さくに話しかけてくる。


「それで今日は、急遽補充人員のトパーズクラスにサファイアクラスメンバーのいるのチームが入ったって聞いていたけれど、誰だい」

「俺達です」


 そこで俺達は手を挙げる。


「ああ、君たちか。よろしく、名前は」

「天滿水城です」

「オルスだ」

「リタにゃ」

「ミレーです」

「うんうん、良い名前だ。さて、それじゃあ早速だが私宛の手紙を渡してもらえないかな」


 俺達は複数ある手紙の入った袋の中から、彼女宛の手紙を見つけて渡す。そして彼女は刃物も使わずに魔法で封を切ると、中身を読み始める。


「今のどうやったにゃ」

「紙が自然と切れて行きましたよ」

「あんな魔法見た事ない」

「ただの力を加える魔法さ。私はハーフピクシーだから魔法の精密さは自信あるけれど、使える魔法の種類が無いのがネックでね。さて、素材回収水溶液が完成したと」


 素材回収水溶液?


「さて、これは誰の発明品かな」

「はい、私です」


 そう言って、一人の研究員が何か瓶の様な物を持ってきて前に出る。でも、こんな物さっきまで持っていたか?


「じゃあ、早速性能テストに行こうじゃないか」


 彼女は嬉しそうな顔をして、俺たち全員を研究所のとある一室に案内した。


『キャアアアアアアアアアアア!』


 パアン!


「モンスターじゃないですか!」

「うん、モンスターだね。それもネームドモンスターだ」


 彼女はなんてことないようにそう語った。檻の中では鞭を持った人型のモンスターが奇声をあげながら檻の破壊を試みている。


「何でこんなモンスターがいるんですか」

「科学に触れることで、最近研究者を中心に価値観が変わったんだ。実験の過程で悲しい事件を地球の人達は何度も、それも人として許されない過ちさえ犯した。だが、そのおかげで発達して救われる命もある。なら、僕たちは研究のために神に怒られようとも実験をしようと思ったのさ。多少の危険を冒してでもね」

「だからって、こんなの危険すぎないかにゃ」

「だとしても、やるしかないんだ」


 そう言うと、女性は何の迷いもなく赤い髪のモンスターに瓶の中身をかける。


「倒して!」

「は?」

「早く倒して! 溶液が蒸発して効果を失う前に!」


 突然女性からそう言って俺に倒すよう指示をする。なので、俺は急いで呪符をそのモンスターにぶつける。


『キャアアアアアアアアアアア!』


 炎に包まれながら、モンスターは地面に崩れ落ちていく。そして、モンスターの終わりとして煙となり消えると、その場に三つのアイテムが落ちる。


「やった、遂に完成した! かもしれないよこの数は!」

「やりました!」


 瓶を持ってきた女性とミトレさんは抱き合って喜びを分かち合うと、檻を開けて中のアイテムを見分し始める。


「名前は、女帝の炎鞭、そして赤い髪に女帝の拘束具。へえ拘束って言う頭、腕、足全てが上手く使えなくなる状態になることでドロップするのか、これは新しい報告書が書けるかもな」


 そこで彼女は嬉しそうに見ている様子から、気になったことを質問してみた。


「あの、もしかしてドロップアイテムの名前が分かるんですか」

「ああ、そうだよ。私の魔法はドロップアイテムやダンジョンで出てくる素材の鑑定が出来る魔法もあるんだ」


 ドロップアイテム研究の第一人者の一人だしね。そう彼女は言った。

忘れそうなので今の内に今回倒されたネームドモンスターの名前を。


・炎の女帝 推奨討伐クラスはトパーズクラス相当。炎の鞭を振るい火傷させて来るモンスター。何より厄介なのは女性が一人でもいると攻撃力が増す、そして一人もいないと魅了魔法で惑わして確実に殺しにかかる性質。姉妹モンスターとして『風の貴婦人』『水の女王』『土の女傑』がいて、それぞれ槍、杖、斧を扱って襲ってくる。なお無性の人には反応しないという性質もある(性器を切除済みなど)。

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