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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
昇格試験編
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合格発表

皆様の作品お待ちしております。

「よーし、試験結果を報告するぞ」


 ダンジョン前の広場……は俺が(正確には式神の草編姫が)派手に草を這わせてとてもじゃないが話を出来る状態ではない感じにしてしまったために、急遽試験結果の合否発表はイルミシャ先生が確保しておいてくれた学科学習棟の部屋の一つになった。


「まず、今回の試験は実に優秀な結果になった。もちろん私を見つけられずに、私を捕まえられずに、ダンジョン内で彷徨った生徒が大半だった。だが、トロールの襲撃に対して今は協力するべき時間だという判断で戦闘した生徒や、ダンジョンから外に出て救助を呼ぼうとしたチーム。この辺は評価が高いぞ。ただし、逃亡した末に何もしなかったチームや、それでも私を探す事を止めなかったチームは大幅減点、優先順位をつける事さえできないのは一体何を授業で受けていたのか後で報告書に纏めてもらうからな」


 トロールの襲撃という知らない何かが話に出てきたため、俺は質問のために手を挙げる。


「はい、水城。試験の結果に繋がる致命的な話さえしなければ受け付けるぞ」

「……」

「どうした、質問しないのか?」


 要するに『下手なこと言えば幻覚見せて、その上で合格剥奪とかなる』のか? 嫌だなあ。でも手は上げちゃった以上質問しないのも不自然だし。


「あの、トロール襲撃って何の話でしょうか」

「あ? 水城お前達だって見ただろう。40人近くの生徒が戦闘していたの」

「もしかしなくても、やっぱりダンジョンであの戦闘音がモンスターを引き寄せたんですか」

「その通りだ、ダンジョン探索学でも危ない行為の一つとして教えられるはずだよな」


 そう、ダンジョンではモンスターを引き寄せかねない長期戦闘、もしくは不必要な魔法などの使用は止めるように徹底されている。やたらと戦闘がヒットアンドアウェイというか、一撃必殺を徹底されているのもそれが理由だ。

 理由は単純で、より強いモンスターを引き寄せかねないから。

 今回の場合は、それがトロールだったという事だろう。


 つまりこの教師は、それを分かっていて優先順位を間違えた生徒が危険行為をしてしまうか否かを見極めていたのだ。


「本来危険行為をした生徒は問答無用で試験不合格のはずだ。だが、今回はトロールの襲撃というアクシデントが起きた。そこでようやく事態が変化したことに臨機応変に対応出来た生徒はスチールからブロンズへの合格ラインまでは上げてやる。まあ、甘々な採点だがな。少なくとも、クリフの採点ならこうはならないと思えよ」


 何人かの生徒はブロンズへの昇格に喜び、そしてクリフ先生ではこうはいかないという話に緊張していた。そりゃあそうだろう、今回エスティシャ先生からサインを獲得したとしても、次に獲得する相手は他の先生たちだ。それこそクリフ先生ならこうはいかないだろう。

 逆に何で俺にサインくれたのか本当に今でも謎だが。


「今回の試験では他にもブロンズ以上に上がった生徒も何人かいるが、まあそれよりもまずはあのチームのメンバーを讃えないと始まらないよな。天滿水城! オルス・クロップ! リタ・ミヒュー! ミレー・カティアンナ!」


 そう言って、大きな声で呼ばれた俺達は一斉に生徒たちの視線を集める。頬杖ついて聞いていたオルスや、眠そうだったリタも、緊張しているミレーも背筋を一瞬にして伸ばしている。


「まず、オルス、リタ、ミレーの三人だ。三人は戦闘や移動速度上昇のために機転を利かせた事や、優先順位をつける事がちゃんとできている事が評価ポイントだ。一瞬ミレーが混乱しかけた事や、オルスがミレー抱えた時はひやひやしたがまあ些末な事だ。何せチームの輪を乱さないことはダンジョン探索で重要な才能だ。三人には十分その才能が見られた。よって、三人はスチールクラスからサファイアクラスへ昇格だ」


「サファイア!」

「それってもしかしなくても」

「飛び級で昇格です!」


 三人が手を取り合って喜びを分かち合う。恐らく今回の試験で数少ない飛び級での合格者だから。

 

「最後に天滿水城」

「はい」

「お前は本当に優秀だな。今回の試験のギミックを解いただけでなく、私の捕縛までやってのけた。少なくとも私に戦闘技能さえあればまだ粘れたと思うが、まあ無理だっただろうな」

「そうでもないと思います。先生はドワーフですから、最初に俺達めがけて突進とかしかけられたら負けていたかもしれません」

「はっは、そうかもな」


 そう言って、エスティシャ先生は笑っていた。


「あの草の蔦やらは燃やしているところだが、お前さんの力で消せないのか」

「それが出来ないのが難点でして。それに、草編姫の本来の能力は草を使う事による医術や回復術。あれは副次的な能力に過ぎませんから」

「なるほどな、そりゃあ本当に強い従魔だな」


 そう言ってエスティシャ先生は感心していた。


「さて、そんな話はどうでも良いんだ。水城、お前は今回の試験で唯一人のシルバークラスからの昇格者だ。泣いて喜べ、トパーズクラス昇格だ」

「トパーズクラス」


 教室中がざわめく。入学したての生徒がトパーズクラス昇格。それはそれだけ凄い事なのだろう。

 一つ昇格。確かな昇格。でも、ゴールドクラスに行ったあのエルフの人には、より強い人たちがいると言っていたあの人にはまだ追いついていない。


「何を見ているのか知らないが、お前は十分強いぞ。それに確約してやる。ゴールドクラスやクリスタルクラスに昇格するときサインが欲しかったら私の部屋まで来い。サイン書いてやるから」


 その言葉に、さらに場はどよめいた。


「すごいにゃ! サイン書くなんて言われるなんて」

「やるじゃねえか水城!」

「おめでとうございます!」

「ありがとう、皆」


 その言葉が嬉しくて、それだけ俺は返した。


「それとだ、最後に水城達には急遽ミッションがあるんだが良いか?」


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