ダンジョンの逃亡者3
日付跨いだけれど、寝るまでが一日だからまだセーフ!
皆様の作品お待ちしております。
「宝を得ることを確約⁉」
信じられないと言いたげな顔をして、ミレーは俺を見る。
「あり得ません、ダンジョンでお宝を得ることを確約するなんて。クエストみたいなものならいざ知らず、無謀すぎます!」
「だが、商人達だって宝が手に入ると言われれば、そして自分達の店でそれを売りさばいて良いと言われるのなら十分黙る理由にはなるんじゃないか」
「ですが、じゃあ魔法は何を使ったのですか? 力を強化するような魔法を使うのが普通のドワーフがどんな魔法を使ったらあんなことが出来るんですか」
「まずだが、ミレーはどんな魔法を使われたと思っている」
そう質問すると、ミレーは自分の考えを述べ始める。
「まず思いつくのは空間移動。ダンジョンをそのまま自由に移動できる魔法です。例えば一度行ったことのある場所までなら何度でも移動できる魔法。こういったものだとしたら可能だと思いますが、それこそアークメイジクラスの魔法使いでないと使いこなせないはずです」
「ああ」
「もしくは隠蔽系の魔法。これなら暗がりで自分の姿を隠す、透明化するなどするだけなので簡単に隠れられますが」
「狭いよな、ここ、少なくとも俺達が隠れるために奥まで来たのに誰も出て行く様子が見られなかった」
天井に逃げられたとかなら話は別かもしれないが、一旦黙っておこう。
「もしくは認識阻害系。これも、リタさんに目くらましの様に使えばすぐにどうとでもなります」
「でもそれなら、俺が気が付くはずだな」
オルスがそう否定した。
「魔法として初心者でも使える魔法なら、何か違和感がある。でも派手な物ではアークメイジクラスしか使えないような魔法になってしまう。どっちにしてもおかしいんです。私の知識にはそんなドワーフいるはずが」
「いるんじゃないのか、こういう状況を作り出せるドワーフが」
「いる訳ないですよ」
「いると思うぞ」
「いません」
「いる」
「いう訳ありません! どうしてそう言えるんですか」
「ドワーフが強力な魔法を使えないというバイアスをいかに払拭できるか。少なくともエンバンティアの生徒程クリア率の悪いらしいこの試験らしいじゃないか」
「何でそんなことを知っているんですか?」
ミレーは疑うような底冷えした声音で問いかける。委縮してしまいそうだが、洞窟の中そろそろ結論を付けないといけないために俺は話す。
「一橋先生に聞いたよ。確かにドワーフは魔法が使えない種族だと。しかしそれは悪いバイアスだって言っていた、少なくともエスティシャさんという魔法を使えるドワーフを知ってしまった以上、ドワーフが全員魔法を使えないという考えは捨てたって。ヒントとしてそんなことを言われたなら、流石に信じるしかないだろう」
「ですが」
「科学は疑う事から始まる。だが、魔法は信じることから始まるんだろう。だから、信じてくれ。怖いかもしれないが、あのドワーフは強力な魔法が使える。だが、攻略できない訳じゃない」
「ちょっと良いか」
そこで、オルスが話に入って来る。
「ミレーには悪いが、俺は入学した時はティグミーは弱い種族だと思っていた」
「……」
「だけど、ミレー見ていたら今もすげえ俺より何倍も考えているし、何よりヒーラーだぜ。魔法使いとして攻撃職の次の花形じゃねえか。そんな凄い奴がいる種族を弱い種族だって思っていた事、本当に悪いと思っているんだ。それから、おれも止めるようにしているんだ。種族ごとに出来ないことがある、これはあの種族には出来ないって考えることを」
「私も、人間族は空を飛べない種族だって思っていたにゃ。でも、今この時も地球の空では沢山の飛行機って巨大な乗り物が飛んでいるって知って、凄いにゃって思って。今は無理かもしれないけれど、それって実は私の思い込みなんじゃないかなって思って、えっと」
「皆さん」
「ミレー、落ち着いてくれ。今魔法に関して一番考えることが出来るのは間違いなくミレーだ。だが、ここでミレーがパニックになったらチームが破綻する。だから」
パンッ!
「ミレー?」
「いえ、喝を入れただけです。大丈夫です」
そう言って、ミレーは前を見据える。
「正直、私はドワーフが強力な魔法を使う事も、それに私たちが踊らされていることも信じられません。ですが、今更ですが相手はクリスタルクラスのエンブレムを掲げられる所にいる人です。私の常識で測ることが間違いでした」
そう言って、ミレーは俺を見据える。
「話は戻りますが、恐らく商人ギルドに代表として選ばれたことも、その理由も今はきっと結論は出ません。ですが、それは後で聞けばいい。何時か聞けると気が来た時に。ですから、今はこの試験のクリアを優先しましょう」
「ああ」
「おう!」
「分かったにゃ!」
「とりあえず情報が何もありません。これからもう一度同じようにエスティシャ先生を探し……え⁉」
そこで、ミレーは驚きの声を上げる。
「なんで、こんなことが」
「どうした」
「エスティシャ先生が、五人います」




