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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
昇格試験編
33/67

昇格試験始まる

皆様の作品お待ちしております。

 入学から約3か月、ダンジョン実習やエンバンティア特有の薬草などを用いた実験などの授業や、種族間交流を兼ねた食文化の体験会。

 その他いろいろなイベントを経験しながらコツコツと単位を貯めて、授業をこなして、そしてついに俺は教員より許可を得ることが出来た。


「よーし、今回も元気そうな奴らが集まったな」


 研究所の最高責任者であるエスティシャ・ベロル先生の快活な声に、俺達は体育座りをしながら緊張した面持ちで顔を見る。


「さて、ここにいるって事は全員もう分かっているな。そう、昇格試験だ」


 昇格試験。それは、現在のカリキュラムより上位のカリキュラムを受けられるように、割り振られたクラスを上のクラスに上げるための試験である。

 日本の試験と違うのは、エンバンティアの試験は実力主義。

 学年という概念が存在しないためにクラスアップに関する教師の許可が下りるか、日本の制度を参考にした定期開催の試験に受かるかしない限り永久にスチールという最下位のクラスのこともあり得るのである。

 そのため、生徒達は卒業要件を少しでも満たすために教師にレポートや授業の手伝いなどで印象付けを行い、試験を受けるための許可を獲得しやすくしているのである。


「通常授業に慣れるまでの期間として、そしてもうすぐ定期開催の試験だって近いから普通私のこの昇格試験は受けない奴が多いんだが、今年は何時にもまして受けたがりが多いな」


 エスティシャ先生は嬉しそうにそう語っている。周囲には五十名以上の生徒が並んでいる。階級もスチールの生徒から他の階級の生徒まで。

 それこそ俺だってシルバークラスだから下手なこと言えないが、これでも受けるのを止めた生徒もいるのかと思うと意識の高さが窺える。


「さて、調査不足の奴はいないか? 準備不足は失敗の元だ、なにせ今回も会場はダンジョンだ!」


 そう言いながら、後ろの扉を指しながらエスティシャ先生は声をあげた。

 試験会場はダンジョン。それもこの間『誘いの牧羊神父を倒した』ダンジョンである。しばらくは討伐推奨クラスの高いモンスターがいないか、調査隊も組まれていたらしいが試験には恐らく支障が無いという事で今回は許可が下りたらしい。


「分かっていると思うが、試験中に不慮の事故などでトラブルが起きたって生憎教師は助けられない。そこまで含めて自己責任で、この試験を受けてくれ。と言っても、そもそもこの会場にちゃんと来られた奴らはそんなの分かっていると思うけれどな」


 そう、実はこの昇格試験『会場となるダンジョン前に集合すること』から試験内容なのである。要するに『必要な情報を取捨選択して、目的地にたどり着けるか』を見られているのである。

 俺の場合は先日の実験協力を理由に、一橋先生に会場は何処か聞いたらあっさり教えてくれた。先生曰く「試験会場? どうせ毎年変わるかもとか言っているけれど変える気ないでしょエスティシャさんは」とのことだ。


「じゃあ、そろそろ試験内容について話そうか」


 その言葉に、俺達試験を受ける生徒は一気に緊張感が走る。


「試験内容はいたってシンプル、私を捕まえる。それだけだ」


 そう一言いうと、俺含めて初めてこの試験を受ける人たちが互いに様子を窺う様に視線を交わす。それを見ながら、エスティシャ先生は話をし始める。


「今からこれらを渡すから、チームごとに受け取れよ。じゃあ、10分だ。10分で今回のダンジョンに潜るチームメンバーを決めろ」


 またこれか!


「水城! 今度こそダンジョン一緒に潜ってくれ!」

「私と行きましょう!」

「待ちな! 私の物だ!」


 ここ最近の授業毎回これだ! そして授業じゃなくって試験でも毎回これか! シルバークラス生徒のチームへの引き込み合戦。

 一年目の生徒だからこその珍しい光景だった。


「悪いが今回チームメンバーは決めているんだ」

 

 そう言って俺は生徒を押しのけると、既に集まっている三人の元に向かう。


「遅いにゃ、水城」

「相変わらず人気ですね」

「羨ましいぜ、そんなにあっちこっちに引っ張りだこなんて」

「そう言うなら一度経験してみろよ」


 そう、もちろんリタ、ミレー、オルス、この三人とチームを組んだ。


「何で毎回そうなんだよ」

「せめて五人目として」

「私の方がクラス上だしさ、ね」


 そう言われるが、俺は頑なにこの四人でチームを組むことを譲らない。むしろこのまま残り時間を待つのも億劫なため。


「エスティシャ先生。お願いします」


 四人で教師の下に向かう。エスティシャ先生はそれはそれは面白い物を見る目で俺達を見る。


「はは、入学許可証手に入れた時から相変わらず変わらないな、この四人は。よし、じゃあ先に渡すぞ。一番目のチームは水城達のチームだ」


 そう言って、俺は何かスノードームのようなもの、リタがペンダントを渡された。


「これは」

「その球は自分の位置を中心として、周囲の何処に私や他の人影があるかを識別するための物だ。そっちのペンダントはイルミシャ・サリアが監視のために使うアイテムな。危なくなったら何時でも助けられるようにって保険だ」


 なるほど、『遠見の眼』に使う媒介か。


「それじゃあ他の奴らもチームを組め。試験が始められないぞ」


4章はどれだけの長さになるか……。

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