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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
ダンジョン実習編
25/67

夜間警備

皆様からの作品は今でもお待ちしております。どうぞ振るって自分の稚拙な文章を超えた作品を作ってください。お願いいたします。

 夜間警備、それは鬼嫁の巫女であるイルミシャ・サリアが睡眠のため警備を出来ない間、生徒達や研究者が持ち回りで警備をする仕事である。

 簡単な物であれば寄宿棟といった人の少ないか、もう寝ている人しかいないような場所を任されるが、場合によっては資料室など人が深夜に立ち入っていると問題になる可能性がある場所を任されるために意外と重要な業務である。


「早い到着じゃないか。それも全員到着とは。ビースティアがいるから遅刻者がいると思っていたぞ」


 エルフの男性はそう言いながら、四人全員を見回す。俺、オルス、リタ、ミレー、ちゃんと確認し終えると男性が宣言する。


「それじゃあ、夜間警備を始めるぞ」


 そう言って、研究所内を移動しながら説明を始める。


「夜間警備は本来シルバークラス以上の生徒のみに認められた責任ある仕事だ。何せ鬼嫁の巫女の仕事の代理でもあるのだからな。失敗すれば諜報を許す可能性さえあるから」


 そこで、男性は魔法を空に向かって撃つ。すると、何かに命中したのか墜落する。


「ああして不審物を見つけたらすぐ対応するように」


 行くぞ、そう言われて俺達は何かの墜落した広場の方へと向かう。すると、そこには涙を流している二人の生徒がいた。そして二人は俺達に気が付くと掴みかかって来る。


「何だよ! お前ちょっとドローン飛ばしただけで破壊するなんてひどいじゃないか!」

「そうだ! せっかく単位貯めて交換してもらったドローンなんだぞ! 長い手続きまでして!」

「ドローン?」

「飛行できる小型機械だ。こう言ってもエンバンティアの生徒には伝わらないだろうが、そのうち地球の文化について詳しく知ったら教えてもらえるはずだ」

「何話無視しているんだよ! 俺達の宝物壊しやがってよ!」


 リタが首を傾げたら、エルフの男性は説明をしてくれた。しかしそれが逆に二人の生徒の逆鱗に触れたようだ。


「俺達の姪が俺達の働いている場所の様子が知りたいって言うから、昼間は研究目的じゃないのに飛ばすのは許可が下りないし、それだから夜にしたって言うのに」

「だとしてもやったことはやったことだ、名前とクラスを教えろ。単位剥奪申請をする」

「そんな!」

「なあ、二人とも」


 そこで俺は二人の生徒に話しかける。


「良かったらクエストに依頼したらどうだ」


「え?」

「おい、貴様何を」

「別に研究所内でも、パンフレットに乗っているように研究所が撮影している写真だってある。別にそう言うのなら問題ないんじゃないか。研究所だからこそデータとかの流出には煩いだろうけれど……」

「はあ、まあその通りだ。困ったらクエストに依頼してみる。それこそ、教師や研究所の関係者がクエストを見て依頼を遂行する事例だってある」

「! それじゃあ」


「ただし! 夜間の飛行物体の使用禁止や一部魔法の使用制限などにはそれ相応の理由がある。だからこそ次からは絶対に止めろよ」

「わ、わかった」

「うん、うん」


 エルフにすごまれた二人はすごすごと帰って行く。


「姪って、何があったんですかね」

「エンバンティアの聖都アルゲバテインの最高学府に並ぶとさえ言われる研究所だ。中を知りたい奴は山といる。興味本位、投資、コネクション作成、そして家族からの信頼や疑惑。かくいう私も、里の同胞には心配された」

「心配?」

「家族や仲間は気になるのさ。科学なんていう未知のものを学ぼうとする奴らが本当に大丈夫かがな。子供ならきっとなおさらさ」

「子供って」

「エルフからすれば他種族など皆子供さ。私も今年で五十だが、最近は娘が同じくこの研究所に入るかもしれない」

「娘⁉」

「ああ、私はこれでも研究所の最初期メンバーの一人だから、五年は少なくともいるぞ」

「それで、こんな夜間警備何てことしているのか」

「むしろだからだ」

「どういうことですか」


 そう聞くと、エルフは憂う様に話し出した。


「私はアークメイジの様に魔法は強くない。クリフやエスティシャの様にダンジョンを生きる術がない。ガリウスの様な筋力も、イルミシャの様な呪いを解除する特別な才能も無い。そして何より、ミスター本郷やミス一橋の様に類い稀なる頭脳だってない。何もかもが足りないんだ。アクアマリンクラスの私にはな」


「「「 アクアマリンクラス⁉ 」」」

「普通に滅茶苦茶優秀じゃないですか」

「そうでもないさ、ゴールドクラスの研究者の中にはエンバンティア本国で専任調査を任されるような優秀な研究者もいる。ミスター本郷はそんな研究者を多数束ねているから何時でも忙しそうだよ」


つまりだ。


「最初期からいるから研究所のことを知り尽くしているが、秀でているものが無くって優秀だと認めてもらえなかった私みたいなのしかやりようがないんだ。研究者の中では夜間警備の仕事はな」


 それは自分より周りがゴールドへ至るという昇級難所を合格したからこそ言える、悲しい言葉だった。


「だが、私はこの仕事に誇りを持っている。研究所の安全が間違いなく私のおかげで守られている。奢りすぎかもしれないが、それでも少しは貢献できているとな」


 そう言って、話を聞きながら数か所回った。食糧庫では食料をつまみ食いする生徒をしょっ引き、司書室では夜行性の生徒に日本語を教え、部活動棟ではやっていることが魔法的に問題がない儀式かを確認していた。

 

 そして、夜は明けて。


「よし、夜間警備は終了だ」


 長い夜間警備が終わった。


「眠かったにゃ」

「結構疲れましたね」

「でも達成感はあるな」

「これから授業だけれどな」


「「「 嫌な事思い出させないで(くれよ)(ください)(くれにゃ) 」」」


「はは、まあ頑張れ」

「お疲れ様です」


 そこで、突然話しかけられた俺を除く四人は驚倒しそうになっていた。


「イルミシャ・サリア」

「鬼嫁の巫女にゃ」

「クリスタルクラスのエンブレム、初めて見た」


 皆が皆お辞儀をするため、俺も習ってお辞儀をする。すると、彼女はエルフの前に行き話し出した。


「この後は研究でしょうか」

「はい、夜間警備前に準備しておいた装置の確認がありまして」

「申し訳ないのですが、それが終わった後で良いので私の部屋まで来ていただけないでしょうか。場所はご存じですよね」

「え、ええ、はい」

「良かったです。では、後程」


 そう言って、巫女が帰って行くのを見届けて、俺達も解散した。


 数日後、あのエルフの男性がゴールドクラスに昇格したのを聞いた時、俺達は真っ先に祝いに行った。

それから、男性は喜んで報告してくれた。

 夜間限定だが、研究所内の全ての資料や書籍の紛失管理に関する最高責任管理者に任命されたことを。

 同僚たちが先にゴールドに行く中、めげずに夜間警備を続けた姿勢を、研究所内の最高責任者が認めた瞬間だった。


2章が思ったより早く終わっちゃったから3章に入るけれど、その前に世界観説明? でもイーグラル(鷲人族)ぐらいしか説明出来ることない

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