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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
ダンジョン実習編
24/67

5単位

二次創作お待ちしております。よろしくお願いいたします。

『誘いの牧羊神父 討伐確認報告 証言者、クリフ・マゴメント』


 その一報がなされた時、今度こそ研究所は驚きの渦に見舞われた。件の噂のシルバークラスがトパーズ級モンスターを討伐した。

 それもたった一人で、しかもダンジョンの崩落に巻き込まれた事故の最中にというおまけ付きのせいで研究所中を震撼させた。

 こんなのありえない、人間離れしすぎていると。


「随分大々的に報じられましたね」

「そりゃそうだろう。この研究所を卒業する時の大体の奴が『シルバークラス』だ。それ以上に到達できる奴は大体が『優秀生徒や表彰されたことのある研究員や魔法使い』なんかだ。そんな奴らでも倒さずに逃げるはずのモンスター倒したとかおかしいだろう」

「でも本当に生きていて良かったのにゃ。もうこんな思いこりごりにゃ」


 ミレーが学内新聞を見ながらため息をついて、オルスもあまりの出来事に呆れながら答え、それでもリタが心の底から安心したように内心を吐露した。


「皆さんだから聞いているのですか! あんな敵で主が死ぬはずないのです!」


 そこに一人、見かけない姿があった。見た目は狐と言った様子なのだが、青白い毛並みに和装と腰から下げられた刀が特徴的な、子供の様な身なりの人である。

 その狐は、腕を組みながらふん! とふんぞり返りながら話をする。


「霊力が宿っていないのが不思議な敵でしたが、あれぐらいの敵なら主は何度も倒していますから……」


「なあ、こいつ誰だ?」

「さあ、知らないにゃ」

「ずっと水城さんにくっついていましたよね」


 そうこの狐、ダンジョンから救出された帰り道でも水城の傍を離れようとせずにいたために話を出来なくさせた元凶でもある。今は水城に言われてここで待っているが、それで困ったのは三人である。

 話が出来ない。何せ今この狐の話は。


「ophipdhaphpahpapbdpbjlwbjbljsougbal」


指輪が無いために三人にはこう聞こえているのである。

 

「勘弁してくれよ、水城。俺達まだ地球の言葉聞き取れないんだって」

「水城さんはエンバンティアの共通語、少しですが話せるようになったみたいですよ」

「入学して1か月でとか凄いにゃ」


「okoahobsouvhsabgdouhasoxbjzloausvljsau!」


「おい、まだ何か喋っているって」

「会話が出来ないって本当に不便にゃ」

「水城さん……」

「ただいま」

「水城!」

「水城! 大丈夫かにゃ!」

「ああ、どうにか諸々の手続きも終わって」

「kaodjioadhuons!」

「ああ、雪丸ただいま。でも心配しすぎだって」

「あ、雪丸って名前だったんですね」

「雪丸、この指輪を嵌めてくれ」


「主、この指輪は何なのです?」


「お、やっと聞こえたぞ」


 翻訳の指輪をはめたら、その青い狐の話がやっと聞こえるようになった。


「式神にも有効なのか、いよいよとんでもない道具を発明しているんだな、魔法の世界は」

「魔法? 主何をおっしゃられているのです?」


 それから、水城は今水城がお父さんなどからの命令でこの研究所に来たこと。そして、そこで俺達とチームを組んだことを説明した。

 すると、その狐は何だか複雑そうな顔をした。


「主殿の友達殿であれば祝福したいのですが、仲間となると……というより、雪丸の様な式神がいるのであれば、入学許可証とやらを手に入れるのだって呼んでくださればよいものを!」

「あ、いやそれは……」


 水城が珍しく『言われればそうだけれど、全く考えていなかった』みたいな顔をしているのが面白い。


「それになぜ女子が二人もいるのです!」

「別にそこをどうこう言われることは無いだろう!」

「雪丸にとって恋敵が増えるのですから死活問題です!」


「雪丸お前男だろう」


「え?」

「にゃ?」

「え?」

「え?」


 そこで、何かエンバンティアと俺とで明確な齟齬があったようで考えのすり合わせが行われる。


「そいつってビースティアじゃないのか」

「べーすてあ? なんてものじゃないです! 式神です!」

「しいて言うなら従魔みたいなものだ」

「じゃあモンスターにゃ?」

「モンスターではないと思う……あくまでも雪丸は思業式神って言って、日本神道で神の遣いなんて言われる狐をモデルに、こんな式神がいると心強いなって思いで作った式神だから」

「そうです! 雪丸は主のおかげで生まれたのです!」

「えっと、式神って何かを説明できますか」

「そうだな、えっと」


 とりあえずそこから、俺は式神とは何かを説明した。式神とは、陰陽師が使役する神様(鬼の事、多分鬼嫁の巫女の鬼とは違うと考えられる)である。と言っても、流石に国の創造とか大それたことは出来なくって、占星術(星の巡りや気象に地理などの情報を用いて占う事)で病気の流行などを予言することを生業にする陰陽師が、補佐官や病気の根源の討伐のために使っていると伝えた。


「それってさらりと言っていますが凄いですよね」

「神様従えるって次元が違いすぎるにゃ」

「病気だとかの予言って……それだけでこっちは助かる命が多いぞ」

「天照大御神みたいな本当に創生に携わったような神と比較したら神格は下だし、知ることは出来ても防げるかは別だから難しいけれどな」


 そう言って、俺は雪丸の頭を撫でた。


「でも、まさか式神を報告していなかったからあんなことになるとはな」

「あんなこと?」

「あ、もしかして従魔報告申請ですか?」

「なんにゃ、それ?」

「研究所内で報告されたモンスターの内、危害を加える危険が無いから殺さなくていいって言う許可に関する申請です。基本はモンスターテイマーが出されるのですが」

「式神も従魔扱いだから、ちゃんと報告されていなかったって事は報告義務違反だよなって単位没収された」

「幾つ」


「式神七体分だから三十五単位」


「三十五単位⁉」

「結構取られたな」

「あら? でもトパーズ級のモンスター倒したんでしょう?」


 そこで、イーグラルの女性が話に入って来る。オルス達によると、ダンジョンで少し話した女性だと教えてもらえた。


「なら、それなりに討伐報酬の単位もらえたんじゃ」

「でも、四十単位しかもらえなかったから」

「グフッ、フフ」


 そこで、何がおかしいのか女性は笑い始めた。


「ごめんなさい、まさかクリフにそんなに安く買いたたかれて反論しない生徒がいるんだって……」

「え?」

「だって、トパーズ級のモンスターなんて」




「単位にして200単位を獲得できるモンスターだぞ、こいつは」

「10人で討伐した場合でしょう。別に20単位よりは多く渡しましたよ」


 ダイアン・アスモダイは神父の頭骨を見ながら、クリフを睨みつける。だが、クリフは気にしたそぶりも見せずにそう受け流す。


「単身討伐をそんなに評価しないのか」

「シルバークラスでもモンスターを倒せば200単位獲得できるなんて事例を作れば、馬鹿な生徒がダンジョンに無断で潜り始めます。その不利益を予防しただけですよ」

「だとしても」

「まあまあ、お互い立場はありますが、水城さんが納得していらっしゃいますから」


 イルミシャ・サリアがそうはいったことで不承不承と言った感じだがダイアンは頭骨を受け取ってどこかに向かった。


「ありがとうございます、私も彼には申し訳ないとは思っているので」

「いえ、あなたがよく泥をかぶっているのは知っていますから」

「それで、彼は依頼を受けてくれそうですか」

「夜間警備の話ですか? 楽しみです。受けてくれると良いですが」


 イルミシャ・サリアは夜の研究所を見ながら面白そうだと笑顔をほころばせた。




「主を騙すなど無法千万! その男刀の錆に!」

「止めろ雪丸! 俺は怒っていないから」



今日は病院に行く予定があったために、その時間でたくさん書けました。もう少し話を続けたいと思います。

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