調査隊
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ギルドからの調査依頼、そのために集った冒険者や生徒はほとんどがシルバークラス以上の歴戦の者たちが集ってくれた。その数30人以上。とてもじゃないが報酬を自分達では払いきれない数になっていた。
「大丈夫そうですか」
「はい、まあ」
優しいイーグラルの女性にお茶を渡されるが、この人だってシルバークラスの現役冒険者。要するに自分達より何倍も経験値も上で、強い人なんだと思わされる。
オルスは肩身の狭い思いをしながら、お茶をいただいた。
「でもクリフさんも珍しく優しいですね。この依頼にスチールであるあなた達三人の同行を許可するなんて」
それは確かに思う。だが、同時に何を考えているのか分からないとも思う。さっきからわざと遠回りをしている、要するに虱潰しにどんな抜け道や細い道も使われた形跡がないことを確認しながら進んでいるが、そこまでやる必要があるのか。
俺達が疲れて定期的に休憩を取っているのもそれが理由だ。まっすぐ事故のあった場所まで進めばいいものを。
「ここだけの話、どうして研究所のクラス分けがあの10階級になっているか知っていますか? 数字じゃなくって鉱石の名前に」
「え?」
「にゃ?」
「……いいえ」
突然の脈絡のない質問にリタもミレーも困惑しながらだが、俺も知らないと答える。すると、女性はこう答えた。
「冒険者ギルドで働こうとしたらでどの程度の強さか、『文字が読めない人でも分かるように』なんです。鉱石の稀少具合で判別できるからですね。冒険者ギルドなら、強い人ほど直感で目の前の相手の強さが大体わかっちゃいますが、初心者冒険者さんはそうはいかないですから」
「はあ」
「だから、実はダンジョンに入る前からあなた方とは話したいなとは思っていたんです。こんな危険な依頼に、報酬目当てと思えない人がいるなんて不思議ですから」
女性は純粋に興味を持った目でそう質問してきた。
「実は」
そこで俺は、素直に水城のことを話した。当然、水城のおかげで研究所に入れたことも。あいつが強いことも。
「うーん、そこまで聞くと私も数日経つまでは自力での帰って来るのを期待しちゃうくらいには強い人だと思いますけれどね」
「そうですか」
「でも逆に言えば、ギルドもこんな依頼をしてまで調査のために人集めるって事は、期待している新人何だろうなってちょっと妬けますけれどね」
私の時には助けてもらえませんでしたし、何て女性は悲しそうに言っていた。
「因みにですけれど、この依頼がどうして救助以来じゃなくって調査依頼なのか想像ついてる?」
「何を話しているのですか」
「げっ、クリフさん」
「もう皆さん準備出来ております」
「じゃあ行こう。話は進みながら続けて話そう」
そう言いながら、女性は先に行ってしまう。それからまた数十分して、ようやく例の事故の起きた場所に到着した。
「穴が塞がれる前にバーディアンは降ろせる人を降ろして下で探索の準備を始めてください。それから」
「あの、クリフさん」
そこで一人の男性が言いにくそうに喋り始めた。
「下で戦闘が起きています。このまま降下しては安全を確保できません」
「そうですか、場所は」
「高さは2階層程度下。ただし東西南北には全く移動していないため、本当に穴を降りればすぐに戦闘のど真ん中に下ります」
「逆に優秀ですね。助けをあえて待つ選択をしたのか、一歩も動かないなど」
「でも、水城は見つかったのにゃ!」
だが、クリフは悩むそぶりを見せる。そして5秒もしないうちに決断をする。
「チームを分けます。戦闘のできる15名、ドワーフなどの冒険者や生徒を中心に降下させてください。他の降下のためにロープを支えるバーディアンやスチールの三人は私と一緒に別ルートで向かいます」
「「「 了解 」」」
「え、どういう事ですか」
「この穴は間違いなく、救助しようと飛び込んだ人を逃がさないために今でも開いている穴です」
そう説明を受けながら、バーディアン達空中を飛べる人たちによってロープがたらされて上下に移動する道が開通すると。
「うらああああああああ!」
ドワーフたちが一斉に穴に飛び込んでいく。すると。
「穴の修復が始まったぞ! ある程度ロープで降りたらそのまま自然落下しろ!」
「全員下り終えました!」
「よーし! バーディアンは急いでロープを回収するんだ!」
穴が塞がり始めた。それでもシルバークラスの冒険者や生徒たちは慣れているのか物怖じせずにロープを回収して、降下していった冒険者達を見送ると慣れたようにクリフさんの元に集まる。
「さて確認です。あの場所までの最短ルートは」
「「 東に200の穴。それからは正規ルートに入ります 」」
「結構。到着推定時間は」
「「 20分 」」
「15分で向かいます。皆さん体力は温存していますよね」
「はい!」
「オルス、ミレー、リタ」
「はい」
「は、はい」
「はいにゃ」
「今度は皆さんがシルバークラスの移動速度に合わせていただきます」




