それはきっと大切な『 』
皆さんの二次創作待っています。よろしくお願いいたします。何ならこれを原案に別作品に昇華しても全く構いません。
『ふざけるな! 俺はそんな家にも国にも縛られた人生絶対に嫌だ! 俺は俺の人生を行く!』
『そんな風に飛び交う声を無視して、止めようとする護衛用の式神を払いのけて、俺は屋敷を後にした』
『式神から振り下ろされる鬼の金棒を躱して、遠くから飛んでくる呪符をかわし、何としてでも俺は屋敷を飛び出すと決めていた』
「……」
『その返事を聞くやいなや、即座に俺は眼の前の猿のような人の顔を掴んで、霊力で常人以上に強化した腕力で地面に叩きつけた』
『猫耳の女性は慌てて逃げ出した。俺はすぐさま霊力を込めて足を速くして犯人をを追いかけて、追いつくと後ろから飛びつき地面にたたきつける』
『か、返すにゃ、私の魂を返すにゃ! 返してくれないと困るにゃ!』
『悪かったにゃ、私が悪かったにゃ、だから私を返してにゃ』
『そう言って、女性にとって大事な抜き取った半分の魂を返す』
「くそっ」
数か月前の家出した日の記憶、そして今日の霊力を使用した記憶がよみがえる。
嫌ったはずだった。
だが、自分は霊力に頼り解決をした。何なら脱魂の術さえ限定的だが使った。
「縛られているのか……まだ実家に」
それは俺にとって何よりも耐えがたい事実だった。確かにそうでもしなければ解決しなかっただろうと冷静な自分がいる。何せ相手は魔法という自分にはない力を使ってくる相手だ、万全を期すなら使わない手はない。だがそれ即ち、家の力に頼るという事に違いないのだ。今は嫌っているあの家の力を。
「俺は……俺は……」
「水城?」
「!」
そこで、俺は後ろを振り向くとリタが、オルスが、ミレーがいることに気が付いた。
「だ、大丈夫かにゃ。元気ないにゃ」
「氷のクリフになんか言われたか、気にするな。あいつは冷徹な奴だって有名だ」
「私たちに出来ることはありますか」
「えっと、あの……」
グウウウウウウウウウウウウ
「……」
「……」
「……」
「……」
「ハハッ! シリアスな場面で腹の虫がなるとか、ビースティアかよ! 水城ってそんなところもあるんだな」
「いや、これは」
「それじゃあご飯でも食べるにゃ。せっかくだから屋台通りでたくさん買ってパーティーするにゃ」
「それいいですね。賛成です」
「いや、あの、えっと」
なんかよく分からないまま三人の間では話がまとまり、そのまま屋台通りに行くことになった。そして屋台通りから一番近い研究所の寄宿舎、というより俺の部屋に移動してパーティーが始まった。
「じゃあこれより、四人の入学祝を兼ねてパーティーを行う! 皆入学おめでとう! 後は」
「はやく乾杯するにゃ! ご飯が冷めるにゃ!」
「何だよ、じゃあ乾杯!」
「「「 乾杯! 」」」
「か、乾杯」
そう言って、テーブルに敷き詰められたサラダや肉の丸焼きに串焼き、饅頭などを囲んでパーティーが始まった。
「改めてせっかくだから自己紹介しないか」
「自己紹介ですか」
「ああ、まず俺からな。オルス・クロップだ。家は平民の家だが、これでもエンバンティア魔法学院一般課程を卒業して入学したんだ。年齢は18な」
「あ、じゃあ二浪ですか」
「ああ、2ダブだ」
ミレーさんが気が付いたように言っちゃうが、それって気が付いても言っていい物なのか。そして本人も快活そうになぜか肯定しているし。
「じゃあ次私から、改めましてミレー・カティアンナです。エンバンティア魔法学院一般課程卒業後に、魔法専攻課程で回復魔法を中心に勉強していました」
「魔法専攻課程! すげえじゃねえか」
「それに回復魔法って、もしかしてヒーラーにゃ」
「はい、将来はお医者さんかヒーラーになりたくって勉強していました」
魔法での回復魔法の位置がどの位置にあるかはまだ不明だが、医者と同等に語られるとしたら地球感覚では滅茶苦茶優秀な人じゃないか。
「でもその後、よかったらこの研究所に来ないかって打診があって来ました」
「あ、じゃあ紹介仲間にゃ」
「リタさんもそうなんですか」
そして、リタさんが話を始める。
「リタ・ミヒューにゃ。盗賊ギルドに所属しているにゃが、紹介を受けてこの研究所に来たにゃ」
「盗賊ギルド?」
「ああ、水城は知らないよな」
「闇の女神フファ様の導きによって、改心をした大盗賊ガリアン・レナハートによって開かれたと言われる由緒あるギルドです。冒険者ギルド、商人ギルド、職人ギルドには及びませんが人気の高いギルドですよ」
「リタみたいな貧民街出身にも優しいギルドにゃ、三食寝床もあるのは嬉しかったにゃ」
「本当にビースティアって食事と寝床さえ与えればって感じなんだな」
「な、うるさいにゃ。ご飯が無ければ生きられないのにゃ」
「はは」
そのふくれっ面に、つい俺は無意識に笑っていた。
「! 笑ったな」
「え?」
「気が付いていないのか、水城お前、さっきから笑っていなかったぞ」
「いや、それは」
そう指摘された瞬間、俺は言葉に窮する。だが、オルスは気にせずに話し出す。
「俺達会ったばかりだからまだ知らない事ばかりだけれど、協力した仲間だぞ。それもお前のおかげで。きっと俺なんかお前がいなければ入学出来ていなかったからな」
「あ、それ私も思います」
「私もにゃ」
「え」
その言葉に俺は驚くが、何を言うのかと言わんばかりにオルスが言う。
「だって、お前の知恵が無ければ許可証を一人で探さなきゃきっと俺はいけなかったんだぞ。そんなの俺に無理に決まっているだろう」
「私も、あの時水城さんに話しかけられなかったら無駄に時間を過ごすだけだったと思います」
「私も、正直許可証取り返された時にもう本当は諦めていたのにゃ。だから私の分として渡してもらっていたのは嬉しかったにゃ」
「皆」
「だからさ、無理にとは言わないが、お前のことを教えてくれよ」
「えっと、あの」
何を言えばいいのか分からない。俺は正直、自己紹介が苦手だった。
「その、あの」
だって学校では陰陽師であることは隠していたから、素直な自己紹介などしたことがない。なのに……。
「天滿……水城です」
「ああ」
この人たちには、素直に言っても良いと思った。
「でも、この名前は偽名です」
「え?」
「はい?」
「にゃ?」
「自分の家は……代々陰陽師って言って……魔法使いとは違うけれど魔法使いみたいな……そんなことをしている家系で……でもそれを正直には言わないようにって言われて育ってきていました。それに、本名も陰陽師にとってはとても大切で……真名を知られると術を使えなくなるきっかけになるから普段から偽名で過ごすようにと言われていました……だから……その……」
「わかった、これからよろしくな。水城」
「え」
「水城にとって大切な名前がもう一つあって、それをまだ俺達に教えられないのは分かった。だが、だったらいつか教えてもらえるくらいに俺達も仲良く、そして強くなってやる。だからこれからよろしくな、水城」
「でも、俺」
「俺は馬鹿だから事情は分からねえよ。でもお前と友達になりたいのは本当なんだよ。それじゃあ駄目か」
「私も、水城さんの事もっと知りたいんです」
「私もにゃ」
「……ありがとう、皆」
そう絞りだすのがやっとだった。涙はそれから知らないうちに沢山出ていた。
「あれ、止まらないや」
「何だよ、そんなに嬉しかったのか」
「良かったですね水城さん」
「ほら、お肉食べるにゃ」
「何でお肉何ですか」
自然と笑顔はこぼれていた。
『』の中ですが、あそこは作者にもまだ何を入れるか決められません。候補が多すぎて。入れるかも別として。
なので皆さんの感じた何かが入っているって事にしてください。