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第六科学が世界に生まれて  作者: 桑鷹三好
入学試験編
14/67

天滿水城の秘密2

二次創作歓迎です。よろしくお願いいたします。

「違います!」


 俺は無意識にそう強く言い返していた。それは自分にとって受け付けがたい言葉だった。


『陰陽師』


 しかしなれど、その事実は間違いなく自分に付きまとう物だった。


「なるほど、ですがではさらに質問です」

「クリフ、あまり若者をいじめないでやってくれよ」

「いじめていません、質問をしているだけなので」


 エスティシャ先生が釘をさすが、クリフ先生は気にした様子も無く質問をする。


「まず第一に、あなたはご家族の影響を本当に今も受けずに生活できていますか」

「それは……」

「親の言いつけに逆らって家出したのに、何があったかは知りませんが親の言いつけに従い研究所に来て入学証明書を獲得し入学をした。それはどう説明しますか」

「……」

「そして二つ目、先ほどダイアン先生が質問したお菓子についてですが」

「え」


「あなたは間違いなく『和菓子が慣れ親しんでいる』と言いました。洋菓子であるケーキなどを差し置いて。そのお菓子は『実家が古くから日本で強い影響を持った家に住んでいる』から『よく慣れ親しむほどにだされた』からではないのですか? 少なくとも私には、あなたのご家族の話を聞けば聞くほどそのように感じましたが」


「……」


 正直しまったと感じた。目の前の人は恐らく自分より、いや、下手したら親父や祖父に匹敵するほど『相手にしたらあらゆる手をもってしても勝てない人達』だ。


「そして何より陰陽師足る証拠として、あなたは『最低三度』陰陽師としての才能を行使しましたね」


「……」


「まず一度目はモンキーファイの少年を抑える時に、目にも止まらぬ速さで動いた身体能力。次の行使したのは、キャットピープルの少女に追いつくための瞬発力。そして三度目が、今回呼ばれるきっかけになった」


「魂を抜いた術、相違ないか?」


「……はい」


 アークメイジにそう指摘された俺は、力なく頷いた。陰陽師を嫌い、違うと確かに言った。だが俺は指摘された回数、下手したらそれ以上に無意識の間に陰陽師としての能力を使ったかもしれない。


「でも何で、どうして知っているんですか」

「『遠見の眼』っていう魔法でね、いわゆる監視カメラって言えば伝わる? 千里眼みたいな、そんな魔法が研究所や街中どころか島中にあるんだ」

「風見鶏や植木鉢、ステンドグラスや路傍の石など、語る必要も気にすることもない様な様々なものを媒介にして『監視カメラのように監視する為に無機物を行使できる魔法』なんだ。しかし島中監視しようとしたら数が数。だからイルミシャさんしか対応しきれないって事で呼ばれたんだ。色々なギルドとか大学に所属していないのに、責任者の一人に選ばれているのも」


「この島中を、監視しているから」


 なんだそりゃ。島中を監視? どれだけの式神を用いれば出来る? 契約も従属も途方もなさすぎる……。魔法を使えない俺でも、普通の人間では出来ないことをやっている身だからこそ、その途方もなさが実感できてしまった。


「気が付かなかったなら、申し訳ありません」

「その上で聞きます。あなたは『魔法に属さない、あなた方が陰陽術と呼ぶ物を扱う陰陽師』ですね」


「……はい」


 イルミシャ先生の謝罪も、クリフ先生の言葉も何もギリギリで聞こえているような感覚だ。意識が今にも抜け落ちそうな。そんな感覚。だが何とか質問にだけは正直に答えた。


「その上で実は先に伝えねばならぬことがある」

「何でしょうか」


「実は、お主の祖父殿から『孫を後悔しない人生を歩むために、社会勉強をさせてほしい』と依頼を受けて、お主の父上殿に『入学金を全額前払いで支払われておる』からこそ入学は証明書を持ってこなくとも決まっておった」


「……はあ⁉」


 それを聞いた時、俺は頭が沸騰しそうになった。アークメイジは今何といった。


「どういうことですか⁉ それ!」

「言葉通りの意味です。本来入学証明書を獲得後に、入学手続きが本格的に行われて初めて入学金も当研究所では受け取るシステムになっているはずなのですが、お父様方の厚いご意向で予め入学金を受け取る代わりに『入学証明書を手に入れる』ことを省いてくれと言われておりました」

「な、じゃあ、どうして」


 どうして俺も一緒に受けさせられたんだ。すると、アークメイジが優しい顔でこう答えた。


「大事なものを見つけてほしいからじゃ」


「え」

「祖父殿も、父上殿も、大変後悔はしておられておる。だが、お主達の家系は『国』のために裏からとても重要な立ち位置におる家系じゃ。だからこそ不自由をさせてきて、せめて小学校や中学校、高等学校は普通の人生を歩んでほしいと語られておった。初めての反抗期だからこそと、今回の家出も認められたそうじゃ」

「は、反抗期じゃ」


「私は言ったはずですよ、『夢と無謀をはき違えないでください』と。あなたのそれは間違いなく無謀です。自分の信念すら揺らぎ、自分で何でも出来ると勘違いをして、ただ目的も目標もなく突っ走る。それを無謀と言わないで他に何と形容するのです」


「!」


 怒りそうになる。だが確かに将来のビジョンもないのにただ漠然とした何かしか、将来像しか言えない自分は無謀なのだろう。重い言葉がのしかかる。


「だからこそ、お主には期待もしておる」

「はい?」


「正直別件の方から、陰陽術とやらについても科学で解明できないかという話が来ておるのじゃが、儂はそこまでお主に迷惑をかけるつもりはない。あくまでも儂は、お主がこの研究所を大切なものを見つける場所にして欲しい。それだけなのじゃ」


 もう帰って良いぞ。そう言われたので、俺はお菓子を懐にしまうと、部屋を後にした。


「お菓子持ち帰るのに懐紙使っていましたよ」

「やっぱり彼育ち良いですよね、一橋先生」

「あれが懐紙」

「ふう、まあ及第点ですか」

「やりすぎだクリフ、いじめるなって言っただろ」

「まあまあ」

「これからが楽しみな生徒じゃ」


 研究所の責任者達は、各々水城に様々な思いを抱きつつ、研究所は動き始めるのだった。

正直突っ込みどころは多いあれになるはずですが、これから少しずつ突っ込みを受けた所を修正していくのでしばらくお待ちください。

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