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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと世界樹の迷宮牢
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080:ロビン・ラックと世界樹の麓-8-

 どうにかハイオークの討伐に成功した三人は、倒したハイオークから経験値を得た事でレベルを上昇させる。この事によって討伐数ではなく、討伐難易度に応じたポイントの付与と考えを改めたラディック。どうやら倒した数をカウントする事に意味はないらしい。


「ん、何か落ちてるよ?」

「ドロップアイテムか。今度は……鍵?」


 ハイオークが居たであろう足元に落ちていた鍵を手にするラディック。すると、


 ークエストを獲得しましたー

【最終目的、黒鬼の討伐】


「!?」

「ん? どうしたの?」


 ラディックが油断した瞬間に頭の中に声が聞こえて来たのだ。さしもの彼もこれには驚き、思わず表情に出してしまった為ロビンが心配そうに見つめて来ている。


「この鍵、どうやらイベントの発生条件だったみたいだ」

「オークの家の鍵じゃないの?」

「な訳ねーだろ、宝箱とかのだよ」

「何で!? オークが落としたのに!?」


 納得いかないロビンは仕方ないとして、なんとか彼に説明を試みるラディック。ゲームという存在を知らない者にこれをどう伝えたものか……。


「多分、ここの近くに何かあるんだ。そこでこれを使うんだと思う」

「何でそんな事分かるの?」

「勘だ」

「うーむ、そうなのか」

「ま、それは良いとしてだ」


 ラディックは雑な説明でロビンを納得させ、鍵をポケットへと収納する。そして徐に木々の生い茂る川へと近寄り、美味しそうにぶら下がる木の実を一つもぎ取った。そして、口に入れる。


「お、美味いな」

「あーずるい! 俺も食べる!」

「私も!」


 そしてロビンとミアもそれに続き、三人は一旦そこで休憩する事に。念願の拠点である。ロビンとミアはウキウキであった。


 それはさて置き。今回の戦いではミアの活躍が最も大きく、また逆に言えばミアの消耗が最も大きかった。それ故にロビンやラディックの元気さだけでは、ここから先へと進む訳にはいかず、一旦大きく休憩する事に。


 ここに生えていた木の実は、空腹を満たせるだけでなく、やや魔力も回復している感覚があり、やはり現実の木の実とは少し雰囲気が違っていた。少しでも回復したかった三人にとってかなり重要な事であった。


 何故なら現存する最大火力はミアの中級魔法だ、つまり生命線である。と、ここでー


「ん? ……気のせいか?」


 ラディックが少し訝しみながら周囲を見渡した。だが少なくとも視野範囲に怪しい気配や魔力は見当たらない。だが見られていた気がしたのだ。「こんな場所で?」と疑問は尽きなかったが、何者かに尾行されている、そんな気配な似た視線を感じていた。しかしながらー


「感じなくなったな」

「何かあったの?」

「んや、今のとこ大丈夫そう」


 少なくとも敵意のある雰囲気では無かった。不思議なのはただ見ているだけというのが、この場所に於いて不可解でならない事だが、今はひとまず先にやる事があった。それはミアの魔力的回復である。暫くミアを休ませる目的も兼ねてラディックはある提案をした。


「俺ちょっと偵察行ってくる。多分だけど、村が洞窟か、それに近い何かが付近にあると思うんだ。さっきの気配も気になるし、先に進む上で何か有利になるなら獲得しておきたい。ここ頼めるか?」

「オッケー! ミアは俺が守ってるから!」

「頼むぞ」


 それだけ言い残すとラディックは足早にその場を立ち、自身の勘を信じて周囲の偵察へと出かけた。


 さて、再び二人取り残されたロビンとミア。


 ミアは先日、ロビンのこれまでについてある程度話を聞いていた。ミア程では無いにしても中々に凄惨な人生を過ごして来たロビンに対して、彼女は益々親近感を覚えていた。


「ロビン」

「ん? どうしたの?」

「ロビンは、どうなりたい?」

「どうなりたい? んー将来って事?」

「(コクコク)」

「分かんないなー、将来かー。俺さ、結構先の事を考える意味もない様な生活してたからさ、このままいつか死ぬんだろうなーって何となく思ってた。だから未来を思った事無くてさ」

「良く、分かる」

「あ、そうだよね。ごめんミアの方が大変なのに」


 ふるふると首を振り、その答えを否定するミア。

 そして再び質問を繰り返す。


「何か、ある?」

「今の俺ならかー。無いかな!」


 とても良い笑顔で「無い」と言い切ったロビンに目をパチパチさせて呆気に取られるミア。まさか無いとは思わず、虚を突かれてしまった形となっていた。


「ラディがいて、アルヴィスがいて、サジやクライブ、みんなと出会えて、俺はもう幸せなんだ」

「だから、無いの?」

「うん! だから俺は、今度はみんなを幸せにしたい!」

「……!」

「勿論ミアも幸せにしてあげたい!」

「……はぅ」


 再び虚を突かれるミア。どうもロビンと居る者はペースを乱されがちの様だった。そしてロビンはミアに少し近寄って。


「ミアは将来、何かしたい事ある?」

「ふぇ!? あ、その……わた、私?」

「うん、ミアは?」


 一転、逆に問われる形に。自身が問い掛けたのだ、勿論こういった展開も考えられる。だがミアは心許した者が少ない故に、まだ会話に慣れておらず、特にロビンと話す時はこういった事態に陥りがちだった。


「ロビンと、居たい」

「それも良いねー! 絶対楽しいよ!」

「うん」


 遠慮なく距離を詰めてくる所や、ところ構わず感情を表現する所、それに素敵な笑顔で隣に居てくれる事。


 ミアは対人関係の経験は少なかったが、書物を読み漁っていた為、知識が無いわけではなかった。そして彼女自身、身の内に芽生えた感情の名前に、いよいよ自覚を持ち始めていた。


(ロビン……)


 あれをしよう、これもしよう、きっと楽しいよ、未来を明るく語るロビンは彼女にはとても眩しくて。太陽を直視する事は諦めた彼女だが、今度のこれは諦めたく無かった。彼女自身不思議な感覚ではあったが、この感情はあの時、死地から救い出してくれた時から肥大化し続けていたのだ。


(ありがとう)


 未来を語る、それはロビンにとってもミアにとっても。当たり前の様に無かった事象なのだ。ロビンにとってもそれは嬉しくて楽しくて、とても幸せな事で。そしてそれはミアにとっても同じで。


 ミアは思っていた。先程ロビンがみんなを幸せにしたいと言っていた発言。自身は既に幸せであると、アナタはなりたい自分になれていると。そしてそんなロビンを支えてあげたいと。


「ロビン」

「なに?」

「楽しみ、だね」

「うん! ここから出たら色々やろうね!」


 少女はロビンに恋をしていた。

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