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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと世界樹の迷宮牢
82/88

078:ロビン・ラックと世界樹の麓-6-

「【流れる水の調べ】、氷の飛礫(アイスストーン)


 存在が確認されたゴブリンに対し、正面から普通に戦いを仕掛けた三人。ラディックの提案で、ゴブリンは最下級であれば知能が低く実力以上に楽に倒せると聞き、戦いに臨んだのだ。そして今、最後の一体残されていたゴブリンの頭部が弾け飛び、三対三で繰り広げられていた戦いはロビン達の勝利に終わっていた。そしてそのタイミングで。


 ー【レベルアップ2→3】ー

 また魔力を獲得したぞ。

 あとついでに9メリーも。

 喜べ。


 三人の脳内に謎の声が響き渡った。コボルト二体とゴブリン三体、一度目が一体の討伐でレベルが上がった事を思えばかなりペースダウンしていると言えるだろう。この時ラディックだけは「次は10か、或いは25体か」と状況に規則性を見出し、レベルアップの法則を掴もうと密かに知識を蓄えていた。そしてここに来ていよいよ気になるのが。


「いやメリーってなんだよ」

「ラディでも分からないの?」

「多分だけど……通貨の単位かな」

「分かるの!? 何で!?」


 まるでエスパーの如く凡ゆる不思議を看破していくラディックに終始驚かされっ放しのロビン。ひとまずそれは良いだろう。


 そしてミアは残存魔力を計算し直しており、最初から既に三発撃っている状況だが、まだ二発ほど余力を残している感覚を覚えていた。レベルの上昇により獲得した魔力で初級二発分補給された形だ。


 一方で、ロビンは。


「多分もうちょい動けそう。次も俺が前でいくね」

「悪いな、その分索敵は任せろ」

「ありがとラディ!」


 増えた魔力から、まだある程度のクオリティで戦闘が継続出来そうだった為、ラディックに進言し、引き続き自身が先行する形で陣形を組む事に。


 ラディックは現時点では意外にも最も魔力が少なく、敵の捕捉やラストアタックでの挟撃に参加する形で魔力を温存していた。そして。


「これ、まぁまぁ使えそうだ」

「やっぱラディは剣がある方がやり易いよね!」


 先程拾った魔道具がナイフを召喚する物で、それを装備したラディックは基礎的な攻撃力が向上していた。


「ミア嬢は大丈夫か?」

「後、二発、いける」

「お、嬉しい誤算だな。助かるよ」


 クルクルと手元でナイフを回転させるラディックはそれをパシッと手中に収めると、まるでそこにナイフなど無かったかの様に収納した。特に特殊能力を持たない低レベル武器ではあったが、魔力を付与した手刀に比べると段違いに攻撃力が乗る為、素直にありがたかった。


「さて、ひとまずがむしゃらに歩いて来たが。それらしい物は見当たらずだな」

「今日の所は何処か場所を決めて休もうか」

「だな、日も暮れるし。あそこの岩場の陰で休もう。まずは俺が見張るから三交代制で休むぞ」

「オッケー!」

「了解」


 段々と時間が過ぎる事で辺りが夕焼けに包まれて来ており、どうやら世界樹の中でも昼と夜がそれぞれ存在する事が判明する。今の所、未だ見つからない食料の問題さえクリア出来れば、比較的順調な滑り出しだと言えるだろう。三人は辺りを警戒しつつ、手頃な岩場を近くに見つけた為、そこで休む事に。やがて辺りはすっかり真っ暗闇となり、灯りは付けずに三人は休み始める。と、同時に。ロビンは就寝した。


「ロビンは?」

「寝た」

「いや早過ぎるから、まだ3分も経ってないから」


 スヤスヤと寝息を立てて眠るロビン。今に限らず、彼はありと凡ゆる場所で眠る事が出来るのだ。永らく狭苦しくかつ寝心地も悪い押し入れの中で生活してきた彼だけの必殺のスキルであった。どうやら世界樹の中でもそれは通用するらしく、彼はラディックに許可を貰うや否や爆睡してしまった。


「いつも、こんな?」

「まぁな、こいつ今までずっと押し入れで過ごして来たらしいんだよ。だから何処で寝ててもその時よりマシらしくてな。アイツにはここくらいの何もない広い床は、それだけで寝心地の良いベッドなんだと」

「変な人」

「俺もそう思うよ。ミア嬢は寝ないのか?」

「寝れない」

「……まぁそうだよな」


 思えばこの二人が二人だけで話をするのは珍しい状況だった。だが気まずいかと言えばそういう訳でもなく、既に互いに命を預けあって戦う関係。それにロビンという仲介する存在もいる。蟠りを持つ方が面倒な為、二人は特に気まずいという感情は持っていなかった。それにラディックは既に王子にタメ口をきいているのだ。今更七大貴族に気後れする理由もないだろう。


「ロビンの事、聞きたい」

「お、成る程な。まぁ眠くなるまで俺が知ってるロビンの話でもするか」


 コクコクと頷くミア。

 心なしか嬉しそうな表情をしていた。


「あいつとは最初、殆どすれ違いの様な状況で声かけられてよ。その時に【ラディックさん】なんて言うからさ、気まずいだろ? だからやめてくれって言ってな、好きに呼んでくれって声かけたんだよ」

「(コクコク)」

「そしたら【ラディ】だぜ? 極端過ぎんだよ」

「ふふ、ロビン、っぽい」

「だろ? ミア嬢はどうなんだよ」

「共通の、本、紹介した」

「あー、言ってた気がする。教室でも遠慮なく叫ぶからなアイツ。すぐわかんだよ」

「(コクコク)」

「何の本だったんだ?」

「えっと、ーー」


 そしてそれから暫くの後、時間もあれだからとミアに代わりラディックが眠りに行く事に。話していた時間の分だけ睡眠時間を失っていた為、それを考慮して彼が順番を変わったのだ。そして、そこにロビンが起きてくる。起こされなくても起きたい時間に起きられる。怒られない為に獲得した彼のスキルの一つであった。悲しいスキルである。


「あれ? ラディじゃなかったっけ?」

「変わって、くれた」

「何で?」

「寝れなくて」

「あー、そっか。こんな場所だもんね」


 そういうロビンは全力で眠っていた為スッカリ回復しており、この辺りは流石であった。そしてミアは、やはり少し眠れなくて。


「話、したい」

「良いよ! 何の話しよっか?」

 ロビンと少し話をする事にした。そして「良いよ」と返事をしつつ、ロビンはミアのすぐ隣へと座る。その距離の近さに少し動揺したミアだったが、彼女は前々から気になっていた事があったので、それをこの際だから質問してみようと話題に出してみる事に。


「ロビンの、魔法」

「ん? 閃光神の戯れ(セラフィックノヴァ)?」

「(コクコク)」

「アレはね、凄く強くなる魔法!」

「あれ、凄く、難しい」

「え、そうなの?」

「(コクコク)」


 どうやらミアは魔法自体は見た事のない物だったが、その詠唱から魔法の理に関しては当たりを付けていたらしい。それぞれの詠唱を二度聞いたというのはラディックを除けば、彼女だけであり、ミアは水魔法に関しては一角を修めている。故に気がつく事もあるのだ。


「閃光神の、許可、降りない」

「え、そうなの? ……許可?」

「魔法の、源」

「うーん、まぁ確かに俺が魔法を使ってるっていうよりかは、使い易い様に貸してくれてるって感じするしなー」


 自身の手を見つめ、不思議そうにするロビン。


「閃光神さんが認めてくれたから、魔法が使えるって事?」

「(コクコク)」

「何で?」

「ロビン、凄い」

「そうなのかな、実感無いけどなー」


 そして、自身の力のみで発動出来ている気がしないロビンは空を見つめて黄昏ていた。そんな彼に。


「私は、好き」

「ん?」

「あの魔法」

「えー嬉しい! どっちが好き?」

「閃光神、両方、好き」

「俺もなんだ! 凄く綺麗だよね!」

「(コクコク)」


 隣に並んでロビンと会話する。その何気ない時間が凄く幸せで。


「ミアが訓練する時に作る人形だっけ? アレも見てみたい!」

「また、今度」

「うん! 絶対だよ!」


 また今度。次があるというのはとても暖かい事なのだと、この素敵な時間を噛み締めるミアだった。

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