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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと世界樹の迷宮牢
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076:ロビン・ラックと世界樹の麓-4-

世界樹の迷宮というタイトルのゲームの存在に気が付きました。マジのガチで知らなかったので、今のうちに僅かに変更させて頂きます。意識過剰で恥ずかしいのですが、一応ご迷惑とならぬ様……笑

 話し合いを終え、全員が当然参加するとして、どの様に立ち回るか、フォローし合うかという事をある程度決めた後、三人は再びゲートのある広間へと訪れていた。


 その事に気が付いた説明役の老人が、間も無く訪れるであろう旅立ちの時を予感し、スッと側に寄ってきていた。そしてその上で、三人で見上げる入り口の景色。


 木で出来ている筈が、まるで洞窟の入り口なのかと錯覚する様な抉られた木の窪み部分があり、そこに炎が轟々と燃え滾っていた。その周囲に広がる黒い焦げも相まって、初見組みの三人には物々しい雰囲気を感じ取らせていた。


 だが炎自体が邪悪な気配を放っているかと聞かれれば決してそうではなく、寧ろ何処か安心する様な心強い温もりを放ってさえいた。そんな炎と相対し、強く見つめる三人。これが入り口であるとどれだけ言われ様とも、流石にいきなり信じるには迫力がありすぎる。


 ゴクリと、誰かが生唾を飲んだ音が聞こえた様な気がする、互いに牽制し合っている様な空気の中、この男が。


「ねぇ、もう入って良いの?」

「ん? あ、あぁ、良よな?」

「勿論ですとも」

「よーし、じゃ俺から行くねー!」

「ちょ、おまっ、バカ先走るな!」


 ロビンが駆け出した事で否応なく走り始めたラディック。彼の顔には「もうどうにでもなれ」とでも書かれているかの様な一種の諦めがあり、またその一方で普段と何一つ雰囲気を変えないミアも続いて走り始めていた。


 炎に包み込まれる三人、全員の姿が見えなくなったのを確認してー


「ご無事を、祈っております」


 案内役の老人が、炎に向けて一礼をしていた。



 ━━━━━



「ーーーはっ! おい二人ともぶ……じ……か?」


 炎を越えてその先は、見渡す限りの草原であった。その俄に信じ難い程の景色の変貌に思わず言葉に詰まってしまったラディック。だがそんな彼の隣りには。


「凄いねラディ! 何でこうなるの!?」


 ワクワクのロビンと。


「不思議」


 ワクワクのミアが並び立っていた。


「ねぇラディ! 何でこうなるの!?」

「いやそれ言い出したら炎に飛び込む所から意味不明なんだって落ち着け」


 キラキラ輝く目をする二人を嗜めると、ラディックは己の手を握っては開きと繰り返し、感覚の違いを確認する。どうやら魔力は失われている様だが、感覚的なズレが大きく発生している訳でもなく、まるで元々これくらいの魔力で毎日過ごして来たかの様なしっくり感を覚えていた。そしてそれが逆に気持ち悪くもあったラディック。


「良くわかんねーけど、聞いてた通りだったな」

「うん、魔力が全然練れない!」

「不思議」


 魔力は練れなくなっており、失われている。ならばどうすれば増やせるのか。今までと同じ様にここで一から修行のし直しか、はたまたこのままある程度何とかしなければならないのか。ラディックはその思考をフルに働かせていたが、答えが出る箇所など殆ど無かった。故に。


「ひとまず飯と寝床だ。食える実が何処かにあるって聞いたからな、それを探す所から始めよう」

「オッケー!」

「意義、なし」


 広大な草原、これが世界樹の中だとは到底思えない様な広い世界に放り出され、そしてありとあらゆる事が未知と来れば警戒もひとしおだ。だがそこに来て約二名。


「見て! 向こうに何か飛んでるよ!」

「あっちに、川!」

「オイ、木の実だっつってんだろ」


 友達と共に何かをするという事自体が新鮮なロビンとミア。二人にとって、これは試練でもあり、新たな経験の一ページでもあったのだ。


「ーー!? 待て、少し動くな」

「ん、何か居たんだね」

「どっち」

「こっちの方角、あそこの茂みだ。多分一体」


 僅かに気配を察知して、そしてすぐさま魔眼を発動する。敵の位置を正確に捕捉し、また周囲に他の敵が居ないかの索敵を済ませる。そして魔眼を解除する。今のラディックにはまだそれ程長期的にこれらを使い続けられるだけの魔力は備わっていない。故に、上手く使いつつ危機を一つ一つ凌ぐ他ないのだ。


「初戦、先制、する」

「……確かに。今は敵の様子を見る上でも先に仕掛けた方がリスクが少ないか。頼む」

「【流れる水の調べ】、水球による射撃(ウォーターボール)


 普段は詠唱を破棄するミアも、初級の魔法に対して丁寧に詠唱から魔法を構築し射出する。既に膨大な魔力を保持するミアにとって、上級魔法の必要魔力が変動するリスクこそ回避の必要はあれど、初級魔法の必要魔力が半減しようとそれ以下になろうと、残存魔力に対する大きな影響は無くなっていた。故に詠唱破棄の技術を修めてからというもの、中級辺りまでは殆ど詠唱はしなくなっていたのだ。そのミアが、初級を詠唱する。ミア自身、かなり久しい行動に少しだけ戸惑っていたが、やはり慣れたもので、強力な水球が寸分狂わず狙いの茂みへと強襲する。


 飛び出して来たのはゲル状の液体魔獣、スライム。


「チッ、相性が悪かったか!」


 スライムは炎の攻撃には滅法弱いが、逆に水属性の攻撃にはやや耐性を持っている。故にダメージの通りが悪かったのだ。だがそこに。


「どっせーい!!」


 遠慮など皆無な勢いで蹴りをお見舞いするロビン。その勢いに二つに分裂してしまったスライムだが、ニョロニョロと左右のスライム同士が再び結合しようとツルを伸ばし合っていた。そこに。


「させるかよっ!」


 ラディックが攻撃を仕掛ける。スライムはコアを所持しており、そこを攻撃されると再生できなくなるという、所謂「急所」を所持した魔獣である。故に彼は迷いなくそれを狙いすまし、破壊する事に成功する。


 その直後、ロビンからの攻撃で分裂状態にあったスライムは保形力を失い、力無くその場に崩れ落ちてしまう。


「おー、倒せたね」

「最初がスライムで助かったな」


 コクコクと頷くミアが、突然何かが聞こえたかの様なリアクションを取り始める。左右を見渡し、何も無い事を確認すると、顔を斜めにして疑問系を表現する。


「何かあっー!」


 ラディックがそこまで言いかけた辺りで、彼の脳内でも不思議な声が聞こえていた。



 ー【レベルアップ1→2】ー

 魔力を獲得したぞ。

 あと3メリーも。

 良かったな。

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