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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと世界樹の迷宮牢
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075:ロビン・ラックと世界樹の麓-3-


「行くしかねーけど、かなりヤバいぞ。どうする?」


 説明役の老人がその場を離れ、三人はそのまま話し合いへと状況を移行していた。


「行くに決まってんじゃん!」

「……私も」

「悪ぃ、言い方が悪かったな」


 そう言うとラディックは目の前に出されていた飲み物で口内に水分を補給し、先ほどまで殆ど一人で話し続けていた状況をリセットする。


「前提から話すぞ、魔力を失うって事は魔法を行使出来ないだけじゃなく、移動、攻撃力、防御力に至るまで全ての能力が減少する。中がどういう構造になっているかは分からないが、死の可能性がチラつかされている様な場所だ。甘くねーだろうよ」


 このラディックの発言に対し、意外にもこの者が返事を用意していた。


「さっきの、話。魔力は、初期化、合ってる?」

「ん? あぁ、まぁ失われるって言っても【最初の状態に戻される】って言ってたな。何かあるのか?」


 自ら発言する事はまだ珍しく、質問が出たという事は思う所があるという事だろう。故に、ラディックはその返答を促した。


「私、最初から、使えてた。初級、だけど」

「は? マジ? って事は……ミアは初級なら最初から使えるって事か?」

「三回、くらい、いける」

「天才かよ……」


 ラディックが呆れる程の事態。これはさしものラディックをして異常な事であった。要は何も訓練する事なく、最初に行使を促された時点で既に三発までは撃てたという事だ。


「多分、動きは、鈍る」

「魔力なしだからな、動く方は苦手か。後衛向きだな」


 そしてこの問答にこの男が。


「えっと、俺は確か最初の魔力チェックの時あったじゃん? あれで500くらいの数字だったと思う。戻されるならあの状態かなって思ってた」

「500か、まぁ即死はない……か。ん? 500もあるのか? 最初から? ……待てよ」


 そうして思い返してみる、自身の過去を。才能がないと兄弟や母からボコボコにされて育ったラディックは、確か最初の時点では魔力的な素養が殆どなく、地獄の訓練を繰り返しており、血と涙に染まりながらスパルタな教育にみをおいて身を置いていた。故に、今をもって尚母が怖いラディックである。という事はー。


「初期スペックは俺が一番下……なのか? マジか、人の心配してる場合かよ」


 ロビンとミアの両者を視界にいれつつ驚愕の意を示すラディック。だが、それとは別にラディックには驚異的な利点が一つ存在している。


「けどアレか、最初から魔眼は【有り】って事か。それだけはかなり助かるな」

「俺は暫く見えないかも」

「そうなのか?」

「うん。修行して強くなった時、初めて見えたから」

「……あの時か。あそこまでは無理なんだな」


 この話にミアはまだ「??」と頭の上に疑問符を浮かべており、二人だけで納得していた。だが初期状態ではロビンの眼は当てに出来ない、それどころかー。


「んや、多分どこまで行っても見えないと思う」

「は? 何でだ……あ、ニクス師の恩恵だから……」

「そ」


 得心がいった表情をするラディック。そしてすぐに表情がやや曇る。何だかんだと常時発動出来るロビンの眼は、彼に関わる全ての人達の窮地を救って来ていた。そしてその威力を理解しながら共に行動していたラディックにとって、この欠落はかなり痛手であった。或いは、自身の眼がある以上の痛手とも言えるかもしれない。


「魔法はどう思う?」

「んー動く事も考えたら初級なら一回……かな」

「十分だよ。合計四発か、無駄には出来ねーな」


 そして魔法の一つ一つの重要度が上がる以上は、それぞれが使える魔法を擦り合わせておく必要があった。故に確認する。


「ミア嬢、初級って何が使える?」


 現在行使可能な魔法の種類を。だがこの質問に。


「全部。得意なのは、氷」

「はっ、そんな気はしてたよ。マジで助かるぜ」


 薄々感じていた天才の予感、それが見事に的中してしまう。逆にロビンはというと。


「俺は回復だけ。他はまだ発動出来なくてさ」

「上級がもう出来るのに?」

「んー」


 彼は未だに初級中級の回復魔法以外は扱えていなかった。光属性と言えど様々な魔法が存在しているが、理から紐解き、魔法へと構築できなければ、詠唱を覚えたとて発動は叶わない。


「上級の奴はさ、多分【向こうから】行使してくれてる? みたいな感じがする」

「向こうってどこだよ」

「え? ほら、こう、魔法を詠唱してる時に曖昧になる、向こう側?」

「分からねーよ、分からねーけど……向こう側か」


 この表現に少し引っ掛かりを覚えたラディック。唇と顎の間辺りに手を当てて思考を巡らせる。過去の魔法発動時の経験と、先日会得した混合魔法。それらを垣間見るにー。


「……成る程、魔力を使って何処かから引っ張って来ている【魔法という現象】の溜まり場ってイメージか? まだ少し違う気もするが……そういう感じか」

「うん、俺の場合、気配を感じるっていうか、サポートされてるっていうか、そんな感じ」

「は? 魔法に構築をサポートされる?」


 ラディックは再び考えるが「そんな事あるか?」と訝しんだ表情のままミアを見つめてみる。するとミアもまた首を横に振っており、ここには同意出来ない様だった。


「ロビン特有か。まぁなら一旦置いておこう。ロビンは初級一発、ミア嬢は三発な。出来れば万が一に備えて回復用に温存したい。無理はしないでくれ」

「ん、分かった」

「了解」


 この時点で判明していた話を纏めると。


 ロビンは回復を一回まで行使しつつ、戦闘用の魔力も少しであれば用意出来る。


 ラディックは魔法行使程の魔力は無いが、多少の戦闘は出来るのと、魔眼を行使出来る。


 そしてミアは魔法を三回まで行使出来るが、運動能力が低下する為、後衛に固定される。


 これらを上手く機能させながら、状況をクリアせねばならない。三人は決意を新たにしていた。


「目指すは三階層、辿り着き次第【生命の葉】を探し、帰還する。良いな?」

「意義なーし!」

「私も」


 目標は三階層、【生命の葉】。

 三人の新たなる冒険が幕を開けた。

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