表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
65/88

061:ロビン・ラックと死の少女-2-

 クライブとサジはフィリービア内にあるアルカンシエル王宮にてアルヴィスの護衛の任に就いていた。そんな彼らの元に一人の男が訪ねて来たのだ。


「客? 俺たちに?」


 面識のないデマイズの男。不審に思いつつもその男から手紙を受け取ると、そこにはラディックの名が記されていた。デマイズの使者がラディックの手紙を、この内容を信ずる上でこれ以上必要な事など何もなかった。


 ひとまずそれをアルヴィスへと渡し、中を確認して貰うと、信じられない内容が記述されていたのだ。


 ミア・ホワイトニュートの暗殺。

 帝級レベルの魔核(コア)の存在。


 この二つを阻止すべく、ラディックとロビンが既に動いているという旨の内容であった。そして時間と場所も記されてあり、どう考えても迷っている暇はなかった。


「俺は行けない。だが王宮内にいるのであれば護衛までは必要ないだろう。行ってやって貰えるか?」


 アルヴィスは二人の信頼する友に、この手紙の脅威を託した。そして二人は。


「他ならぬ命の恩人の危機だ。俺ァ止められたって行ってたかもしれませんぜ大将」

「アルが止める訳ないだろ」

「俺みたいな護衛捨てちまえジョークですよ」

「そのジョーク次やったら二日間飯抜くからな」

「ぐっ、それは勘弁して下さいよ……」


 こうして緊急時に備えてある身支度を一瞬で済ませると、二人は目的地である断頭岳、その合流地点を目指す事となったのだ。


「ここが合流地点ですかね、間に合ってます?」

「間に合ってるよ。悪ぃな手間取らせて」

「サジー! クライブー!」

「お、ロビン少年が居るって事はまだ大丈夫なんだな」

「悪いなギリギリになって」

「んや、間に合ってくれてる時点でマジで助かってるから」


 この状況に陥ったその最初の段階で、ラディックは既にアルヴィスへ向けた手紙を出していたのだ。そしてその上で、二人に頼みたい事を伝える。


「敵が来る方角にも寄るけど、恐らくロビンとミアはこのルートかこのルートを抜けてくる。だからここかこの位置で敵を分断さて欲しい。出来れば2チームはそっちに回す感じになるけど、いける?」


 この質問に対してサジとクライブは。


「山薙の残党とかいう俺の残務まで混じってんだ。むしろこの役回りをくれた事に感謝すらしてるぜィ」

「2対4、甘くは無いな。だが引き受けよう。それぞれが多少の無理を通さないとこれはかなり厳しそうだ」

「けどよ、ラディックの兄貴」

「兄貴は止せって……」

「この位置で分断して戦うと、魔獣の群れも連れて来ちまうんじゃ?」


 これを受けたラディックは二人に向けて信じられない事を言い始める。


「魔獣の群れは全部俺が引き受ける」

「は?」

「いや、いける……のか?」

「やるしかねーんだよ。この人数だとこういう事になっちまう」

「たかが4人相手にヒーヒー言ってられませんぜクライブの兄貴」

「だな、俺たちも終わり次第合流する。いや、瞬殺して向かおう。それまで死ぬなよ」

「死ぬかよ。でも助かる、頼むぜ」




 ______





「さてさて、アンタらには悪いがあまり手間取ってる余裕もねぇんだ。とっとと始めさせて貰うぜ」

「そう言う事だ」

「何なんだコイツら……クソっ。兎に角殺して向こうに追いつくぞ、流石にガキを殺し損ねたら後が不味い」

「クソが!!」


 どうやらこの山薙は末端構成員だったらしく、サジの顔は知らない様だった。そうなると必然的に、戦い方も知らないと言う事になってしまう。互いに距離を取りつつ、この状況での戦闘を考慮した思考を巡らせる、そんな余裕を。


「【真理の果ての色無き檻、理の戒めに絡め取られし夢幻の衣の一端よ、我が身、我が意を通しここに顕現せよ】」


 この男が与える筈もなかった。


「なっ、無属性……だと」


 同じ詠唱から繰り出されるが故に、個々の魔法の僅かなニュアンスの習得が困難な無属性。その発動のシビアさは【激しいダンスの最中に料理に塩を加える】様なもの。加える量が多過ぎても不足しても機能しない。そんな針の穴を通す様な魔法を、この場面で行使する男。


 土属性、無属性魔法使い、サジ・ノートス。


交錯する真実の行方(ドッペルゲンガー)


 それは彼の得意とする戦術であった。


 サジの姿を見ようとすると僅かに()()()()。詠唱を終え、魔法は発動された。だが特に何も起こってはいなかった。だが、不敵に笑みを浮かべるサジ・ノートスのその表情を見る限り、何も無いというのはまず有り得ないだろう。


「チッ、しゃらくせぇぇ!!」

「おっと」


 元山薙の剣撃がサジを強襲する。それを受けようとするそのサジの短刀を山薙の剣が……すり抜けた。


「なっ!?」

「何でだろうなぁ」


 そして剣による鍔迫り合いを想定していた山薙は重心を後ろに置きすぎており、前に伸び切った腕を支えきれずに少しだけヨロけてしまう。そんな到達点を失った力の篭らない攻撃を容易く躱し、首筋に手刀を一撃。


「ぐはっ!」

「一丁上がりでさァ」

「な!? 野郎、何をしやがった!!」


 膝から崩れ落ちた山薙の一人。そして自身の仲間がやられて混乱するもう一人の山薙。敵は不可解な攻撃をする。故に慎重に攻撃を進めようと、そう考えた瞬間に。


「ちょっと失礼」


 サジが突然前に突っ込んで来たのだ。


「ばっ、死ねぇ!!」


 だがそのサジに剣は当たらず、更には剣を振り切った山薙をすり抜け、まるで幻を相手にしているかの様に山薙の身体と重なり合って、そのまま通り抜けてしまう。


「は? な、何が……ぐはっ」

「はい二丁上がりィ」


 そして通り過ぎた筈のサジはやはり目の前にいた、スッと前に出て山薙の横に回り込み、首筋への手刀一閃。


 その場に倒れ込んだ元山薙二名。ここまではサジの想定通り。そして、問題はここからだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ