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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
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050:ロビン・ラックとデマイズの里-1-

「うわー久しぶりー! 前はゆっくり景色を見る余裕も無かったから嬉しい!」 

「あれはな、アルヴィスがあんな事になってたんだから仕方ねーよ」


 中間休暇、それはセブンス魔法学校がより学校生活を充実させる為に校内の一斉整備を行う二ヶ月間の事。校内に留まることは許されず、行き先の無かったロビンは自信を誘ってくれたラディックの実家のある【デマイズの里】へと身を寄せていた。


 木材や石を基調とした自然の中で獲得出来る物を加工し、それを建物の材料として利用しており、首都から西へと離れている事もあり、やや田舎感のある雰囲気をしていた。だがそのデザインは洗練されており、道も整備され、自然重視なのに整っているという何ともデマイズらしい優秀さの溢れる里となっている。


「ひとまずウチに来いよ、荷物置こうぜ」

「友達の……家」

「なんで息が荒いんだよ……」


 友人の部屋は既に訪れていたが、家は初めてなロビン。


「お前がロビンかい? 軟弱そうな奴だねぇ」

「よ、よろしくお願いします」

「良いから、とっとと荷物を置いてきな」

「はい!」


 ラディックに案内され、使っても構わない空いた部屋を借りたロビンは、その部屋の隅に自身の荷物を置き、ラディックの部屋へと同行する。


「うわー、ラディはここで過ごしてるんだね」

「別に何もねーよ、普通だろ?」

「俺の部屋の10倍広い!」

「それはもう部屋じゃねーんだよ」

「ラディのお母さん綺麗な人だね!」

「鬼の様に怖ぇんだよ母さん」

「え、そうなの!?」


 驚愕するロビンは一旦置いておき、ラディは兼ねてからやりたかった事をロビンに話してみる事に。


「なぁロビン、ちょっと着いてきて貰えるか?」

「どこいくの?」

「裏山」

「裏山ー! 行きたい!」


 荷物だけを置いて足速に裏山を目指すと、そこは少し開けた場所にはなっていたものの、人の気配がまるで無い静かな場所だった。


「実はなロビン、頼みがあるんだ」

「頼み? 俺に?」

「いや、どちらかというとお前じゃなくて使い魔、ニクス先生って言ったか?」

「そうだよ!」

「呼んでくれないか?」

「え、ニクス先生を?」


 誰か第三者が居る場面でニクスを呼ぶ、それは彼と共に過ごす様になってから初めての事だった。


「大丈夫だと……思うけど。ニクス先生?」


 スッと、その場にニクスが呼び出される。


「珍しいですね、アナタが俺を家以外で呼ぶなんて。何かありましたか?」

「えっと、ラディがさ」

「ラディ? あぁ学友の一人ですね。ほう、貴様が俺を?」

「あ、その……」


 鋭い目線で睨みつけるニクス、まるで最初の頃のロビンと過ごす時の様な、疑いつつも何かを試す様な雰囲気を醸し出していた。ところが。


「ありがとうございました!!」

「……は?」


 ラディックは綺麗にくの字に曲がり、お礼をしたのだ。


「ロビンの眼の話を聞いて、合点がいきました。ゼルドリスと戦っていた時、俺の不始末のせいで貴方に迷惑を掛けたんですよね?」

「……まぁ、そうとも言えるかもしれませんね」


 あの時の状況は薄々理解出来ていたニクス。実際、あの時ロビンが出した力はニクスの物だった。そしてそれはニクスが与えたのではなく、ロビンが無意識に引っ張り出していた様な形だった為、ラディックに迷惑をかけられたという意識も無かったニクス。


 だが言葉にしてみれば【助けた】訳ではないが【迷惑を被った】のは事実かもしれない。肯定するしかなかった。


「貴方は俺の命の恩人だ。正直、どうロビンを逃せば良いかばかり考えていたけど、多分自分の事は諦めてたから。今こうして生きて居られるのは貴方のお陰なんです。世話になりました」

「……まぁ良いでしょう。俺は気にしてませんよ」

「ありがとうございます!」


 少しも飾らず、面と向かって正面から礼を尽くすその姿勢が気に入ったニクスは、少しだけ面持ちを柔らかく変化させていた。「警戒し過ぎる必要もないか」という様な雰囲気だ。そんなニクスに、ラディックは言葉を続けた。


「あと、少し質問よろしいでしょうか?」

「……良いでしょう。何ですか?」


 少しだけ、また視線を強めたニクス。


「ロビンの急成長、これは貴方の力だと考えております」

「そうですね」

「あの……もしよろしければ……」


 この時、もしも「あの時の力を俺にも使え」などと言おう物なら八つ裂きにしようかとも考えていたニクス。他者に神級魔法を行使するなど侮辱行為以外の何物でもないのだから。だがラディックは。


「俺の修行方針を示して頂きたく」

「……修行、方針?」


 そう言って、再び頭を下げたのだった。つまり彼は師事を仰ぎたかったのだ。自身に足りない物、或いは身につけるべき事。ラディックは既に一定のレベルに到達している。故に、何から手をつけて良いのか分からなくなっていたのだ。


「……魔力を見せてご覧なさい、全力で」

「はい!」


 ラディックは眼を魔眼に変え、その上で全力の魔力で自身の身体を強化する。それを見たニクスは特に驚く事も無く。


「もう良いですよ」

「えっ」


 ものの5秒ほどで止めて構わないと小さく手を前に出したのだ。


「えっと、その、どう……でした?」


 顎に手を当てて思案するニクス。隣のロビンはニクスとラディックが絡んでいるのが嬉し過ぎてキラキラのニヤニヤで眺めている。


「単純に、まず魔力の絶対量が少な過ぎる」

「……成る程」

「そして眼がまるで使いこなせていない」

「はい」

「あと属性は土ですね?」

「はい、そうです」

「火の素養が発現しかけています。伸ばしなさい」

「えっ!?」

「決して相性の良い属性とは言えませんが、土と火も使い方次第では戦術の幅がまるで変わるでしょう。混合魔法もあります、使い方も含めよく考えなさい」

「はい、ありがとうございます!」


 小さく拳を握り「マジか、俺、二属性目が」と呟くラディックは嬉しさが顔に出てしまっており、話を終えた瞬間から火の素養について考えられる限り思考を巡らせていた。そしてニクスは。


「ロビン」

「はい!」


 ついでと言わんばかりにロビンを呼び立て、その声に慌てて正面を向いたロビンは佇まいを直した。


「アナタはまず魔力の絶対量が彼以上に足りていません」

「はい」

「俺との修行で多少はマシにはなりましたが、ゴミカスの域を僅かに出たに過ぎません」

「酷いよー、でもマシにはなってるんだね」

「彼に付き従い、魔力が視える事を使いこなし、基礎を徹底的に納めなさい。魔力の量、操作、流動、全てです」

「まだ足りないんだよね、よーしやるぞー!」

「そうすれば、多少の発展系の話も出来るやもしれません」

「えっ!? そうなの!?」

「励みなさい」

「はい!!」


 それだけ言葉を残すと、ニクスは夢か幻であったかの様に、まるで景色に溶ける様に消えて居なくなったのだった。

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