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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
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間話 公務の少女

 眼前に迫るキングレイスヒヒ。見た目はゴリラが巨大化したとしか言い様のない青い毛皮に身を包んだ大型のヒヒ。この時点で既に何体倒しただろうか。記憶も曖昧に成る程の長い戦い。


怒る氷の進撃(アイスキャノン)


 そんなヒヒを包囲する様に魔力を展開し、意識を分散させた瞬間に氷の塊を叩き込んだ。目にも止まらぬスピードで放たれた氷塊は寸分の狂いもなくヒヒの顔面へと直撃し、顔は爆ぜてしまう。


巨岩を砕く氷柱の一(アイシクルランス)


 そして展開した魔力もそれぞれが氷の刃となり、自身に纏わりついていた何匹かのヒヒを追い払う様に撃ち放つ。顔面を潰されたヒヒがその場に崩れ落ち、一呼吸で息を整えると信頼する仲間の名前を呼んだ。


「ユッキー」


 何処からともなく現れたスノーオールは少女をその背に乗せると急速離脱、その場を離れて食い付いた敵を全て視界に収める。本来空中からキングレイスヒヒを狙った場合、石などを利用した投石攻撃を仕掛けて来るのだが、出し抜かれた形からその場で呆けたままのヒヒたち。


荒れ狂う雹牙の抱擁(ヘイルストーム)


 そこへ向けた上級魔法の詠唱破棄。これは天下のセブンス魔法学校の生徒と言えど、行えて良い所業ではなかった。だがそのスピード感を以ってしなければ、次の瞬間には反撃が来るのだ。少女は知っていた、敵の数が増えれば増える程、詠唱に回す十数秒が命取りになるという事を。


氷の刃(アイスブレード)


 数匹だけ居た上級魔法を耐え抜いたヒヒに向かい、スノーオールを操る少女。彼女はヒヒとのすれ違いざまに氷の初級魔法を発動し、その首を切り落としていた。


 更に二匹、三匹と一気に距離を詰める事で次々に血に染めていく。稀に反撃を試みるヒヒも居たが、足元を的確に凍らせ、動きを制限する事で発生した隙を付いて首を跳ね飛ばした。


「ユッキー、いける?」

「ピェー」


 小さく声を掛けたそれにスノーオールが反応する。戦闘が始まって既に数十分。一人では到底敵わなかったであろうキングレイスヒヒの群れに対して未だ戦いを挑み続ける少女。だが今は一人では無い、頼りになる相棒が居てくれる。その相棒が「まだいける」と返事をしてくれたので、敵を見据え改めて戦略を講じる。


 彼女自身、残る体力は既に僅か。それでもまだ魔力を振り絞って戦っていた。諦める時、それは即ち死ぬ時だから。


(そろそろ終わらせないとマズイ)


 温存出来ている魔力はタカが知れている。それでもまだ彼女が今なお生きているのはひとえに彼女の実力の高さ故だろう。


 と、一塊になっていたヒヒが一斉に投石を始めた。ただ石を投げると言っても、その一つ一つが木々を抉り岩を砕く速度で飛んでくるのだ。一発でもまともに食らえば致命傷は避けられない。


「ユッキー、お願い」


 少女は信頼するスノーオールに降り注ぐ石の弾幕を任せ、自身は改めて戦況を観察する。残るヒヒはあそこにいる奴らで全て。ならばもう出し惜しみをする必要もない。残された魔力を使い切る気持ちで戦略を巡らせる。


 ヒヒに三体で固まられていると大技を使わざるを得なくなる、だが先程の様な豪快な魔法を放てる程の余裕は既に残されていない。


水球による射撃(ウォーターボール)


 故に初級魔法を駆使し、ヒヒの一匹へと牽制攻撃をする事で敵の連携を崩そうと画策する。顔面に水玉をくらい強打したヒヒは見事に怒り、吠えながら塊から離れていく。残る二体はそれに釣られる様に慌てて追従するが、それは少女の狙い通りの展開で。


「ユッキー、低く」


 低空飛行を指示し、練った魔力を地面から発動する様に発動する。タイミングを見計らい、思わず追従してしまった後ろ二匹が近くなる瞬間を狙って。


地を這う氷の柱(アイシクルピラー)


 串刺しになる二匹のヒヒ。だがそこに一瞥も無いままに最後の一体残ったヒヒを始末すべく、スノーオールを操り接近戦を試みる少女。この時点でもはや魔力は殆ど残されていなかった。使えたとして初級魔法二発が限度だろう。


氷の刃(アイスブレード)


 氷の刃を構え相対すヒヒへと突っ込むも、当然ヒヒが反撃の構えで攻撃を仕掛けようとする、が。急に速度を落としたスノーオールにタイミングを外され、その爪は少女に届く事なく空を切る。直後、そのヒヒは首を刎ね飛ばされていた。





 戦闘を終え徐に地面へと近づくと、スノーオールから降り、何か合図の様なモノを示す。すると呼応する様に隠れていた一人の男が姿を現した。


「流石です」


 そう言葉を呟くと、少女は満足したのか再びスノーオールの背中へと移動する。


「次の任務もよろしくお願いします」


 そんな男の言葉に少女が返事をする事はなく、足早にその場から立ち去ったのだった。

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