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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
51/88

048:ロビン・ラックと魔核の脅威-8-

 ラディックと二人、人生初の買い物に出掛けたその翌日。朝の朝礼でジャミールが教室へとやってくる前の僅かな一時の事。


「ミアー、おはよー!」

「……」


 ロビンが出席するよりも早くに自分の席に着いていたミア。彼は少し心配していたのだが、彼女の雰囲気は特に普段と変わることの無いいつも通りそのものであった。


「昨日公務だったんだね、何してたか聞いても大丈夫?」


 この言葉。散々迷った挙句、アルヴィスのアドバイス通りストレートに聞く事にしたロビンだった。彼はあの手この手の絡め手はそもそも苦手なのだ。


「……魔獣の、討伐」

「え、そうなの?」


 てっきりアルヴィスの言っていた【何かに同席する】タイプの公務だと予想していたロビン。面食らってしまった形とはなったが、その分気になる事は更に増えてしまった。


「それって大丈夫なの?」

「……平気」


 表情一つ変える事なく、また目の前の本から視線を外す事もなく。淡々と聞かれた事にだけ答えるミア。まるで興味無さ気に素気ない態度を続けており、他の者だと「嫌がってるのかな?」とそろそろギブアップするレベルの塩対応だった。だが実はそうでも無い様で。ミアは不意にゴソゴソと自身の鞄を物色すると、その中から一冊の本を取り出した。


「これ」

「あー!! 三巻!!」


 例の本、その続きだった。この流れを元々予想していたミアは、今朝の時点で既にこれを回収に行っていたのだ。これにはロビンもホクホク顔で。


「めちゃくちゃ嬉しい! ねぇこれって何巻まであるの?」


 そう聞いてみるが、この返事も予想外で。


「それで、最後」

「えっ」


 最後の一冊となってしまっていた。だがロビンが思い返すにこの壮大な物語が一巻で終わらずに続いていたのであれば、逆に三巻で完結するとは考えられなかった。


「これってさ、ここで話は完結するの?」

「……しない、続きが、ない」

「成る程、まだ無いんだ」


 読める続きは無いが、それは完結したのではなく未発表であるが故であった。だが、その希望も。


「最後の発売、8年前」

「だとしたら……続きはないかもしれないんだね」


 その言葉にコクリと無言で頷いたミア。


「それなら他にどんな本読んでるのかまた教えてよ!」

「……!」


 驚き、また少し怪奇な目を向けるミア。だがロビンは臆する事なく。


「ミアのおススメだったら俺何でも読めそうな気がするから!」


 凄まじいポジティブな発現が追い討ちをかけてきて、頷くしかなくなったミア。しかしながら、同時に「薦めるなら何にしようか」と考え始めており、こういった機会もあまりないミアにとって、少し楽しい事にもなっていたのだった。



 ♦︎




「おはよう諸君、今日は……何かあったか? エトセル・メイヤード」

「いえ、今日は魔法構成学の後に戦闘理論があるだけで、特に行事はありません」

「だそうだ。では教科書を開け」


 朝の教室。部屋へと入ったジャミールは開口一番エトセルを指名し今日の予定を確認。真面目なエトセルが毎日それらを確認している事に気が付いてからは、朝は彼に必ず質問が飛んでいた。


「今日は魔法構成学、無属性魔法についてやっていく」


 この流れをエトセル自身は特に嫌がっておらず、彼はその日の予定は事前に把握しておきたい性分なので、それを話す事で役に立てるなら特に問題は無かったのだ。


「無属性魔法は他の属性と比べるとかなり特殊だ。特色として大きく二つの事が言える。言ってみろジェイド・ランバード」

「完全詠唱もしくは魔法陣が無ければ発動しない」

「そうだ。詠唱短縮の不可、これが一つ目だな。無属性は全て完全詠唱が必要となる。そして二つ目がもしも詠唱を簡略化したい場合は既に構築されている魔法陣が必要となるという事だ。ではその詠唱を読み上げる。心して聞け」


 そう言うと、ジャミールはボードに詠唱を記述する。そしてそれを読み上げた。


「【真理の果ての色無き檻、理の戒めに絡め取られし夢幻の衣の一端よ、我が身、我が意を通しここに顕現せよ】だ。無属性には階級が存在せず、すべてこの詠唱で発動可能だ。だが、面倒な事にその意識だけでは殆どの無属性魔法は発動しない。何故なら魔法それぞれに僅かにニュアンスが違うからだ」


 そして彼は用意していた一枚の写真を取り出し、そしてそれをボードへと貼り付ける。


「これが一番有名な魔法陣だろう。無属性魔法【使い魔召喚】。改良に改良を重ねた結果、この魔法陣は利用者の意思や魔力を消費する事なくそれらを接触させるだけで発動出来る優れ物だ。だがこれは異例中の異例。転移であれば転移の、空間拡張であれば空間拡張の。それぞれの意図する僅かなニュアンスを汲み取って魔力を行使しなければ発動しない」


 そう言いながらジャミールは魔法陣の隣に学校全体の見取り図を貼り付けて「因みに」と銘打ちながら話そびれていた内容を補足する。


「この【使い魔召喚】の魔法陣も、この魔法陣で発動したいのであれば校内の特定の場所で使わなければ効果を成さない様に組まれている。お前らも知ってる通りここだ。ここでしか発動しない。この様に無属性はかなり特殊な立ち位置をした魔法となっている。魔法の奥ゆかしさを楽しみたい奴らは無属性を深掘りしていくがいい。因みに俺は得意だ」

 サラッと自身の感想を乗せるジャミール。無属性はその特性上、誰でも使える代わりに使う者を選ぶ傾向にある。故に特定の誰かであればすんなり使えてしまったり、逆に達人が遂ぞ発動出来ずに生涯を終えたケースも存在する。


 無属性魔法を使い熟す、これは魔法使い一同の一つの憧れであり、夢の様な物だったりする。扱いの難しいジャンルの魔法であった。

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