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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
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047:ロビン・ラックと魔核の脅威-7-

「さっきの二人、確か装飾品屋を営んでるとか言ってたよな?」

「言ってたね、場所が分かると良いんだけど」


 元居た道に戻って来ると、二人は漸くフィリービア目指して歩みを進める事ができた。長く続いた並木道も終わり、漸く見えて来たフィリービアの街、その端っこ。まだ高いと言うには程遠く、街というより村と言った方が近い雰囲気をしていた。そんな街で。


「あの、そこのお二人」

「……俺たちか?」


 まだかなり遠くであったが、街に入った途端に誰かから声をかけられる。どうやら知り合いの様だった。


「突然すみません、あの、私さっき助けて頂いた者です」

「あー、さっきの。無事に帰れたみたいだな、良かった」


 安心したという雰囲気でニッコリ笑うラディックに、少し動揺している少女。だがここで引いては声を掛けた意味がなくなる。意を決して伝えるべきを伝える事に。


「先程は本当にありがとうございました。貴方達が居なければ私たちは今頃……」

「礼ならコイツに言えよ。気付いたのはロビンだ」

「そうでしたか、本当にありがとうございます」

「ううん、気にしないで! それより貴女の名前は? 俺はロビンって言うんだ!」

「私はセアラと申します。あの、良かったらお礼をさせて欲しくて……」

「お、丁度良いじゃん。ロビン、探し物があったんだろ?」

「うん! 買いたい魔道具があるんだ!」

「それなら是非うちに来て下さい、こっちです」


 二人はセアラに連れられて村の外れにある一件のお店へと場所を移した。そこはもう裏から出ればフィリービアの外で、かなりギリギリの位置にある隠れ家の様なお店であった。


「辺鄙な所でごめんなさい。品揃えは良いので、お探しの品が見つかると良いのですけど」


 そう申し訳なさそうにする少女にロビンは自身の意向を伝える。彼の欲しい物は既に決まっていた。


「腕輪か、もしくはイヤリングみたいな邪魔になり難い物で、魔力攻撃を軽減できる様な奴ありますか?」

「ダメージの軽減ですね、それだと……」


 少女は奥の棚の中に置かれていた幾つかのアクセサリーをトレイの上に並べ、ロビンの前へと運んできた。それぞれ色や形状が違い、しかして能力は同じ物で統一されている。言われてすぐにこの対応、彼女の検索能力の高さはこの店の売りの一つであった。


「この辺りが全てお探しの商品になりますね」

「これ!」

「え」


 ロビンは即決だった。


「指輪か、また凄いのを選んだな。でも色味的にそれで良いのか?」


 ロビンが手に持っていたのは細かく黒い石が複数嵌め込まれたシルバーベースの指輪だった。まるで彼のガントレットに合わせるかの様な色合いに、ラディックは少し苦言を呈していた。


「ぶっちゃけお前には似合わない色だと思うぞ」


 ラディックはストレートな性格をしていた。


「俺のじゃないからね」

「違うのかよ! 俺はてっきりお前のだと……、じゃあそれ誰に渡すんだよ」

「へへー、ニクスにあげるんだ!」

「ニク……使い魔に? マジ?」


 嬉しそうにするロビンの横で「えぇ……」みたいな顔をしているラディック。そんな二人の様子を微笑ましく見つめていたセアラが声をかける。この為に声を掛けに行ったのだ。


「では、そちらの商品は差し上げます」

「え、良いのかよ?」

「命の恩人ですから、これくらいはさせて下さい」

「そー言う事なら遠慮なく。良かったなロビン」

「ありがとうセアラ! 良いのが渡せそうで俺すっごく嬉しいよ!」


 満足そうな二人の姿を見て、何とかお礼が出来たとホッと胸を撫で下ろすセアラ。そして、ついでに。


「あの、ラディさん?」

「ラディックだ。悪い名乗って無かったな」

「あ、その、失礼しました」

「ラディで良いよ。で、何?」

「そ、その……」


 セアラは急に言葉につまり、モジモジし始めていた。そして意を決した様にラディックを見つめて。


「貴方にもお礼を! いつ来てくれますか!?」

「お、おう。そのうちな、そのうち」

「ダメです、いつですか?」

「えぇ、何なんだよ……」

「貴方にはまだお礼が出来ていませんから!」

「いや、別に良いよそんなの」

「そうはいきません!」

「えぇ……」


 案外とここ一番で推しが強いセアラにたじたじのラディック。結局「まぁ適当に来るよ」とだけ言葉を残し、そして「絶対でふよ」と噛みながら答える事で決着を付ける事に。


 最後に想定外の疲労を溜めたラディックであった。







「素敵な二人だったわね」

「ね、危うく死ぬ所だった。そう言えばラディくんが魔核(コア)も壊してくれたって言ってた」

「ちゃんとラディさんにもお礼しなきゃね」

「あら、このお金は?」

「……え?」


 自分のお金でお買い物に来たのは生まれて初めてだったロビン少年。実はラディックとセアラの話の意味が分かっておらず【この商品を買う許可が得られた】と判断していた。値段がどう決まっているのかも分からず、ひとまず有り金全部をそこに残して帰っていたという事に気が付いたのは、彼らが帰った一時間後の事だった。


「まさかさっきの……」


 その金額は指輪の販売価格の三倍を越えており、お礼のつもりで渡した筈がまさかこんな事になるとは考えていなかったセアラ。


「ど、どうしよう……」


 流石にこの事態を無かった事には出来ず、とは言え出来る事も無く。ひとまずラディックの再来を待つ他無かったのだった。




 ━━━━━




「ただいまー」

「おや、今日は遅かったですね」

「ちょっと買い物に行っててさ」

「買い物? 食料ですか?」


 ラディックと二人でセブンス魔法学校へと帰還した二人。帰り道では色々な事を話していた。属性の事、使える魔法の事、見えている景色の詳しい説明。ロビンは現状の自分のありのままをラディックに曝け出したのだ。


 そしてそれを受けてラディックが出した一つの結論は【サインを決める事】だった。二人の間でしか分からない合図を作り、必要に迫られた場合はラディックが確認する。そうすればデマイズの魔眼の力という話で落とせるからだ。


 ロビンの細かい所作まで決めた所で、実行が困難なら意味がないと言う事で、今の時点ではラディックを頼るという形でこの問題は解決された。


 そして自室へと帰還し、ニクスを目の前にしたロビン。「えへへ」とニヤニヤしながら詰め寄る様に、怪奇な目を向けているニクス。そして、小さな小袋を取り出した。


「じゃーん!」

「……魔道具?」

「分かるの?」

「貴方も慣れれば分かりますよ。それで、何ですか?」


 ゴソゴソと袋から中身を取り出すロビン少年。中から出てきたのは一つの指輪だった。


「……これは?」


 要領を得ないニクス。魔道具を買いに行き、そしてそれを見せられ、デザインがロビンらしくない雰囲気をしている。まさかと視線を指輪からロビンへと移すニクス。


「そ! ニクス先生にプレゼントなんだ!」

「私に? 何故?」

「いつも付き合ってくれてありがと!」

「……そう言う事でしたか」


 実の所、ロビン少年は神級の魔法こそ使って貰えていないものの、毎日修行には付き合って貰っているのだ。学校で授業を受け、帰宅後訓練、ご飯を食べ、勉強。このご飯以外の時間は全てニクスが付いてくれていた。


 魔力を全身に纏い、日々鍛錬してその絶対量を増やさなければ強者とは渡り合えない。故に魔力量の底上げに始まり、戦闘中に魔力を足や拳に集中する事で普段よりも高いパフォーマンスを発揮する様な細かい技術まで。根幹に関わる【根の生成】から端々に至る【葉っぱ】の技まで指導してくれる。その上で、学校の勉強で躓いた場合は分かりやすく解説してくれたりしていたのだ。


 そんな彼のアドバイスもあり、日頃から視界の魔力変化に敏感になれているロビンは、その能力を活かしてギリギリの窮地を乗り切って来ていた。


 ニクスと共に過ごせない時間さえも、その時の記憶を頼りにロビンは修行を欠かさなかった。もしかするとニクスはロビンにとって先生というより、師匠の様な存在と言えるかもしれない。


 だからこそ、彼は感謝していた。


「どうしてこの魔道具に?」

「俺さ、嫌だったんだ」

「……?」

「俺のせいでニクスが怒った時にさ、痛そうにしてるでしょ? 俺が悪いのにニクスが痛い思いをするのがさ。なんかこう……申し訳なくて」

「ハァ、そんな事を気にしていたのですか」


 それはロビンに原因のある話ではなかった。だが同時にロビンがどうにか出来る問題でも無かったのだった。故に、せめて少しでもそれを柔らげられればと、今回の行動に至る理由となったのだ。感謝と贖罪、得たお金は全てニクスに使おうと最初から決めていたロビンだった。


 ニクスは指輪を手に取り、それを左手の人差し指へと嵌める。すると指輪はひとりでにその大きさをニクスに合わせた物へと変化させ、ピッタリサイズとなった。


「折角の好意です、頂いておきましょう」

「うん、いつもありがとニクス先生!」


 実の所、この指輪ではニクスの受ける肉体的苦痛は一切柔がない。常軌を逸した防御力を誇るニクスが防げない魔力攻撃。これを一般的な魔道具で防げるのであれば、それは神級のアイテムと認定されるだろう。それ程にニクスは強かった。そのニクスにダメージを与え行動を阻害する。それは生半可な事ではなく、指輪一つで防げる筈もない事はニクス自身気が付いていた。だが。


「悪くないデザインですね」

「俺ニクス先生の事は毎日見てるからさ! 自分のより選びやすかった!」

「全く、次は自分のを買いなさい。アナタの方が攻防に於いて足りて無い物だらけじゃないですか」

「うっ、そ、それはニクス先生と修行して何とかするから良いの!」

「では、今日もやりますか?」

「勿論!! よろしくお願いします!」


 だがニクスは内心これに喜んでいた。今の実力を携えてから、誰かに物を贈られた事などあっただろうかと過去を振り返っていたのだ。そして「ない」と結論付けた。こんなオモチャの様なレベルの魔道具、身につけたとて何一つ変わらない。故に敬遠される。ニクスに効果のある魔道具など、早々見つかるものではない。自身の装飾品が一つ増えた事、それを少しニヤつきながら眺めー


「悪くないですね」

「えへへ、喜んでくれて俺も嬉しい!」


 珍しく、喜びを隠さなかったニクスだった。

予測変換が発達し過ぎて、俄に信じ難い誤表記をしている事があります。先頭の文字などから推察して貰えると助かります。AIが賢過ぎて置いていかれてる感が凄いです。

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