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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
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045:ロビン・ラックと魔核の脅威-5-

「お前そんな生活してたのか?」

「割とそんな感じだったね」

「かー、苦労してんだなー。何かあったら言えよ?」

「ありがとラディ!」


 二人は仲良く並木道を並んで歩き、街を目指していた。セブンス魔法学校があるのは首都フィリービアの中。故に少し行けばそれなりの都会で、学校があるのが首都の中でも端っこの方と言えた。学校を出ればすぐに街という訳ではなかったが、少し行けばすぐに出られるので、人によっては頻繁に出入りしていた。


「だから時々おかしな感じだったんだなー。気になってたんだよ、世間知らずもそうだけど。今日の服装とかマジでビビったからな」

「俺服とかボロボロのやつ一着しか持ってなくてさ。雑巾みたいって言われて過ごしてたからさ」

「ヤバすぎだろ。俺も大概だと思ってたけど、お前のそれはヤバすぎ」


 ラディックに借りた服に身を包んだロビン。彼はその服を大層気に入っており、時折視界に入ってはニヤニヤし続けていた。服装の似通った二人が歩く様子はまるで兄弟の様で。どんどん兄が増えていくロビンであった。


「で、何を買いたいんだ?」

「んとね、この間授業で出てきた奴なんだけどさ」

「授業で? 何だ?」


 ラディックが話を聞くに、ロビンの求めている物は【魔道具】であった。魔力を練り込んだ物体に特定のルールを付ける事で効果を発揮させる。魔力発動は本人の魔力に依存するので一度身につけたなら壊れるまで効果を為すという。だがそんな効果が故に魔道具はそれなりに高価な物だった。


「お前それ金は大丈夫なのか?」

「この間の公務でさ、俺初めてお金貰ったんだ!」

「初めてって、マジかよ……」

「だからさ、これがあれば買えるんでしょ?」


 校内であれば鍵を用いれば生活必需品を【出世払い】で手に入れることが出来る。だが校外であればそのルールは適用されない、現金が必要だった。だがロビンは現金を持っており、それは先日の公務の給金であった。


「まぁこれだけあればどんな種類の魔道具でも一つくらいなら買えるか。どんな奴を買うんだ?」

「魔力的な攻撃から身を防いでくれる奴!」

「へー、実戦的じゃん」


 魔道具はその効果によって値段はピンキリで、ラディックが想像するに、ロビンの所持金であればまず何とかなりそうだと考えていた。


「形状はどんな奴にするんだ?」

「えっとね……ん? 何かおかしい?」

「おかしい? 何が?」

「え、あ、その……向こう?」


 ロビンが指で示した先を見ても特に違和感はない。だがロビンが感じたのは視界の変化ではなかった。否、視界の変化ではあったが、魔力的な変化を感知したのだ。()()()()


「何もないだろ? ……いや、僅かに。待てよ」


 そういうとラディックは意識を集中し始める。普段は黒いラディックの目が紅く変色し、僅かに紋様が浮かび上がる。デマイズの魔眼だ。そしてもう一度同じ方角に視界を向ける。


「……何だ、魔力の乱れ? 近くに魔獣でもいるのか?」

「どうする?」

「被害者が出る可能性がある、一応様子を見よう」

「分かった!」


 魔獣は空気中に含まれる魔素から生まれるとされており、ランダムに出現する。普通は人気のない所で生まれ、それが彷徨う果てに人と遭遇し被害を齎すのだ。今二人が居るここは首都ではあるがまだ郊外に位置する学校寄りの場所。防衛の任についている魔法使いも、このもう少し先であれば駐在していたかもしれない。だがここには居ない可能性がかなり高かった、何故ならこの位置は非常に中途半端なのだ。放置するには懸念が大き過ぎる。ラディックは対応する決断をした。


 生徒達が学校に禁止されているのは【無許可での使い魔の行使】だけで、戦闘行為は原則自由であった。内容や場合によっては罰がある事もあるそうなのだが、戦闘そのものが禁止という訳では無いのだ。故に。


「魔杖、構えとけよ」

「オッケー」


 二人は戦闘を考慮した上で道から外れて右に曲がり、木々の生い茂る先にある現場へと向かった。


「キャァァァァァァ!!!」


 まだ遠いが悲鳴が聞こえてきた。声の位置から察するに。もしそのまま道を直進していたら聞こえていなかった可能性が高い。


「チッ、間に合えよ」


 ラディックとロビンは速度を更に上げていた。二人の目には空中に無作為に存在していた魔力がどんどん形を成していき、それが塊となっていくのが確認出来ていた。そしてそれは今の時点で既に三体。視界は悪く、魔力を視認出来ていなければ恐らく何も見えなかっただろう。


「間も無く見えるぞ、油断するなよ!」

「了解!」


 既に両手に烈破を構えるロビン。そして先行するラディックは草の塊を抜けると、その先に魔獣の存在を確認する。オオカミに近い見た目の四足獣でサイズは2メートル程。そしてその同種が4体。眼前には怯える親子が一組。まだ接敵しておらず、見た感じは無傷だった。


形成される砂の剣(サンドナイフ)!」


 視認するや否やすぐさま魔力でナイフを2本生成しそれを走りながら地面から引き抜く。そしてそのナイフを親子と魔獣の間に凄まじい勢いで投げて差し込み敵を威嚇する。その行為に怖気付いた魔獣は親子から距離をとり、ラディックとロビンを睨みつけながら後退する。そしてその隙に。


「大丈夫!?」

「っ!」


 ロビンが親子を背に庇う形で割り込み、そのロビン達と魔獣の間にラディックが割って入った。後ろを確認すると、親子は怯えており、ロビンが右腕を横に広げて安心させている様子が伺えた。やはり現状問題は無い様でロビンは「ウンウン」と頷いている。後ろは任せられる、ならばと。すぐに視界を魔獣へと戻すと、ラディックは魔力を大きく練り始めた。


「やるぞ【鷹の目】」


 発言の瞬間、4匹いた魔獣は全員首を切り落とされ、その場に血を吹いて倒れてしまう。そして改めて見ると、親子と魔獣の間に居た筈のラディックは魔獣の向こう側に立っていた。


「凄いやラディ……」


 圧倒的だった。ある程度速度に優れている獣族の魔獣、ブラックウルフ。群れで行動し、多いと数十体で集まり行動する。単独で戦うにしても鋭い爪と牙を持ち、縦横無尽に地を駆ける獣は、捉え辛く難敵であると言える、筈なのだが。


「この様子なら警戒も必要ねぇか。周りを見るに……もう大丈夫みたいだな」


 周囲を見渡した後にそう呟いたラディック。彼の眼には魔力的な異常が収まって見えており、ひとまずの難は去ったと考えて良さそうだった。


 魔眼を開眼したラディック。彼は一般的なレベルを既に凌駕しており、そんな彼と行動を共にしていたロビンは憧れの眼差しを向けていた。だが、そんな場合でもない。


「もう大丈夫だよ、怪我はない?」

「あの、お母さんが……」


 のっぴきならぬ面持ちでロビンに縋る少女。気を持ち直したロビンは親子の様子を丁寧に観察した。すると。


「痛っ!」

「お母さん!?」


 どうやら突然現れた魔獣から逃げようと、身体を無理に動かした結果足を痛めたらしい。このくらいならと、魔力の構築を始めるロビン。


「じっとしててね?」

「え? あの……」

「【眩き光の粒子】、癒しの光(ヒール)

「あ……痛みが、無くなった?」

「ふぅ、それなら良かった!」

「あの……ありがとうございます。本当に助かりました」


 親子に大した怪我もなく魔獣を討伐し、事なきを得た二人。迅速な判断が功を奏した形となった。

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