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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと死の少女
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043:ロビン・ラックと魔核の脅威-3-

 授業の内容で一部わからない事があり、図書室を訪れていたロビン少年。魔法基礎は基礎なのだが、日を追うごとに彼には少し難しい考え方が出てきていたのだ。


「えっと、どこだろ」


 図書室はかなりの広さを誇っており、当然本の保有量に関しては凄まじいクオリティを誇っていた。だがそれが故に雑に歩けば迷う事もあり得る程の面積を持ち合わせているとも言え、目的の本が見つかり辛いという側面もまた存在してしまっていたのだ。


 そんな時。


「あれ? ミア?」

「っ!」


 そこに居たのは青髪の少女、ミア・ホワイトニュートであった。小柄で身体付きも細く、背もロビンよりもやや低い、どこか頼りない大人しい雰囲気のミア。そんな彼女は本が好きで良くここを出入りしていたのだが、今日珍しくロビンが訪れており、偶然出会ってしまった形だった。


「ミアも調べ事?」

「……本、好きだから」

「へーそうなんだ。本って良いよね!」

「……」


 本の中には物語があり、物語の中にはそれぞれの人生が描かれている。そしてその殆どはミアの望めないモノであり、また憧れているモノでもあった。故に彼女は本を好んでいた。所謂、現実逃避に近い理由である。


「前は良く読んでたなー、烈火の英雄」

「……っ!?」

「え、知ってるの?」


 ロビンが押し入れの中で散々読み耽っていた一冊の本。火の属性を持つ男が不可能を可能にしていく英雄譚。それを思い出していたロビンは、意外な反応を見せたミアに驚いていた。


「読んだ事、ある」

「えー! 俺あれ大好きだったんだー!」

「……私も」


 ミアは意外だった。ロビンが本を好んでいた事も、架空の物語みたいな題材に手を出していた事も、そしてそれが烈火の英雄である事も。太陽の様な英雄、その物語。かの主人公はミアにとって眩しい程憧れる存在だった。願わくば、その隣で戦う魔暴剣姫(バーサクレディ)になりたいと切に願う程に。


 だが現実は無情で、またミアと魔暴剣姫(バーサクレディ)は性格から戦闘スタイルまでまるで違うので、やはり憧れは憧れでしかなかったのだ。だが、その物語を理解してくれる人が居た事は素直に嬉しかったりもしていた。


「魔の山に向かうシーンでさ、レディが一人で行こうとしたのに、ヴァイが先に待ってたりとかさ!」

「……好き」

「ヴァイのピンチに危険を省みずに助けにきたレディとかさ!」

「……好き」

「うわー嬉しい! 分かってくれるんだ!」


 ミアからすれば逆に分かってくれている訳なのだがロビンも嬉しそうにしていたので、お互いに共感者を得たという感じの二人であった。そしてミアが徐にロビンの裾を摘み。


「……こっち」

「ん? どうしたの?」


 ロビンを何処かへと誘導する。そして一冊の本を手に取った。


「……これ」

「え!!? 二巻とかあるの!!!」

「まだ、続き、ある」

「えぇ!!?? そうなの!!!」


 ワナワナとその場で震え、信じられない事実に直面していたロビンだが、数秒後に正気を取り戻し。


「本当にありがとミア! 俺この本大好きだったから続きが読めるのめちゃくちゃ楽しみだよ! 時間みつけて読んでくるね!」

「……」


 そのロビンの返事に、コクコクと頷く事で意思表示する控え目なミアであった。



 ━━━━━



 そして図書室での一件があってから暫くの後、授業の始まる前の僅かな時間に。


「ミアー! あの本もうすぐ読み終わるんだけどさ、今日の帰りにでも続きが何処にあるのか教えてくれない?」


 自身の大好きな本を手に入れ、それを夜な夜な読み続けていたロビンは驚異的な速度で読破していた。そして物語の続きを求めてミアの席を訪ねていたが。


「今日は、無理」

「え、そうなの?」


 秒殺で断られていた。だが嫌と言う訳ではない様で。


「用事」

「そっかー、なら明日いい?」

「ダメ」

「えっ」


 用事は用事なのだが、どうやら明日も案内出来ない様だった。シュンと落ち込むロビン。


「急にごめんね、また行けそうな時に頼むね」


 その言葉に小さく頷き、返事をする。その直後に教員が部屋をノックし、入室してきたのだ。この時間の担当はマリアンナであった。


「さて、では今日も魔獣生態学をやっていくわよ。と言ってもまだクラスみんなの使い魔を解説出来て居なかったわね。次は誰にしようかしら……じゃあミア・ホワイトニュートさんお願い出来るかしら?」


 突然の指名に少しビクッと身体を硬直させたミアだったが、どうやらマリアンナはクラス全員の使い魔を解説する気らしく、遅かれ早かれ当たる事は決まっていた。故にすぐに返事をする。


「スノーオール、ユッキー」

「オッケー、スノーオールね。飛行系を引き当てるとは、貴女なかなかラッキーね」


 そんなマリアンナの気の利いたパスはミアによってスルーされる。元々質問されている訳ではない言葉、返事は不要と判断されてしまった様だったが、マリアンナは間を作らずに言葉を続けた。


「スノーオールは北部の山岳地帯に生息する肉食系の魔獣ね。群れを成す事はなく、多くても番が二匹で行動している場合くらい。そもそも出会うのが難しい種類の魔獣ね」


 クラスメイトは一様に「成る程」といった雰囲気の顔をしており、やはり不鮮明な敵対魔獣より、使い魔を解説して貰えた方が頭に入ってくる様だった。


「白い羽に黒い模様が特徴のスノーオールは獲物を見つける為に温度感知のセンサーを持っているわ。故に、接敵した場合隠れても無駄ね。すぐ見つかっちゃうから。因みに人も食べるわ」


 一部から「うひー」と悲鳴が漏れており、やはり食われるという事をイメージするのは少し恐怖がある様だった。


「そこそこのスピードを誇るスノーオールは特に雪山でその特性が活き、吹雪の中でも信じられない様な速度で食べるのよ。凄いでしょ? あと氷雪系の魔法も少し使えるわ。これは訓練次第と言う所もあるから、ミアさんの腕の見せ所よ?」


 そう話題を振られるも、やはりスルーするミア。話は聞いている様だが反応はまるで無かった。


「さて、じゃあこのまま山岳地帯で遭遇率の高い魔獣と、遭遇時の対応について話していくわね」


 こうしてマリアンナの授業は進められるのだった。


 そしてその翌日。

 ミアは学校を公欠していた。

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