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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
36/88

034:ロビン・ラックと王子の奪還-5-

追記で前書きという。29人の皆様いつもありがとうございます。引き続きよろしくお願いします!


追記の追記です。30人の皆様でした。嬉しい!

「なんだ? お前らこんな所でウゲッ!?」

「グハッ」

「ゴッ」


 見張りの三人を倒し少しだけ目線を遠くへとやると、そこにはサジが「御武運を」みたいな動きをしていた。彼だけは最初から別行動で直接アルヴィスのいる檻を目指す算段だ。サジを除いた三人は扉を開けて内部へと侵入する。


 暫くの間は出会い頭で気絶させるクライブの働きによってスムーズに進行していたが、やがて敵に見つかり「敵襲だ!」と叫ばれてからは大騒ぎとなっていった。


 それでも一目散に目的地であるペルフェンダーを目指して走り続けた三人は、想定していたよりもかなり早い段階で接敵する事に成功した。


「誰かと思えばお守りの方々か、ご苦労な事だ」

「悪いが、今度はそう上手くやられてやれないぞ」

「まるで前は手を抜いていたみたいな事を言うんだな、護衛のお兄さんよ」

「やれば分かるさ、すぐにな!!」


 ここでも長く時間を掛ける事もなくクライブが隙を作りに攻撃を開始する。そしてペルフェンダーがクライブに掛かり切りになった瞬間に。


「今だ、行け!」


 それを聞くや否や二人はすぐにそこ離れ、更に奥の部屋へと足を進めた。二人を見送ったクライブは少し笑みを零し、逆にペルフェンダーは苦虫を噛み潰したような顔をしていたのが印象的であった。


「無駄な事を。奥にはお頭が居る。お前抜きで誰があの人とやりあうってんだ」

「さぁな、俺も詳しくは分からない」

「分からないだと?」

「一人はズブの素人でもう一人は知らない奴だ、分かる訳もない」

「なら何をそんなに嬉しそうにしている?」


 この会話をしている最中も、クライブは終始笑顔のままであった。彼には確信があったのだ。


「正直言って、あの二人を完全な無消費状態で送ってやれるとは考えていなかった。想定できる中で一番良い形で送ってやれたからな」

「その程度の事で?」

「あぁ、そうさ」


 そしてクライブは魔杖を構え、銘を解放する。


「俺は仲間が信じた仲間を信じる。アイツらは信頼に値する。それで十分さ。なぁ、【桜燐(おうりん)】」


 まるでそこに花でも咲いたかの様な優雅な花吹雪が展開される。否、これは花ではない。美しい火花の乱舞であった。


「【燃ゆる炎の種、百歩進んで山と為し千差散りて空と成す、我願いに応え炎塊に秘めし大いなる力を顕現せよ】」


 彼の抜いた剣はその魔力に呼応するかの様に輝きを増していき、そして言葉は紡がれる。


「其は天を蹂躙する蓬左の(エクスハラティオ)夢」


 散っていた数多の炎燐が意志を持ち、クライブの支配下へと入った。これはクライブが使える最も信頼を寄せる上級魔法。そして相対す敵がその姿を見て賞賛を贈る。


「成る程、確かに前回とは違うらしい」


 敵もまた、剣を構える。

 戦いは始まった。



 ━━━━━



 一方、先行しアルヴィスへと歩みを進める二名は順調に奥へと歩みを進めていた。しかしその道中で不味い事態が起こってしまう。


「完全に道が二つに分かれてるな、どうする?」

「うーん、俺の役割は撹乱だから同じ道には行かない方がいいかも」

「そうか、なら俺が右に行く」

「俺左ね!」


 二手に別れるしかない事態。だがやる事自体は変わらない。ただし、道を行くラディックは少し考えを改めていた。


(温存っつっても、この道が間違ってた場合こっちがある程度撹乱出来ている必要はあるよな。散らかしておくか)


 万が一に備えた自主的な作戦の変更。


「【佇む地表の砂、我願いに応え大地に秘めし大いなる力を顕現せよ】、集いし砂丘の宴(サンドストーム)!」


 ラディック・デマイズは土属性に適性を持つ魔法使いであった。周囲を大混乱に陥れる砂嵐による蹂躙。効果は覿面であった。


 周囲の物を吹き飛ばすのは勿論、巻き込まれた敵さえも吹き飛ばしては頭をぶつけて気絶させ、叫び声などが聞こえない程の嵐となっていた。


 各所に時間を使うのではなく、先に進む事を優先するラディック。


「こっちが本命であってくれよ……」


 彼は小さくそう言葉を呟きつつ道を進んだ。




 そして道を分けたロビン少年はと言うと。


「おりゃー! そりゃー!」


 絶賛破壊中であった。


「何だこいつ、人じゃなくて施設を狙いやがる!」

「うぜぇ! 早く止めろ!」

「どっせーい!」


 目につく全てを殴り飛ばし、置いている物、柱、壁、箱から机に至るまで、何もかもを殴り飛ばしては破壊した。何なら少し楽しくなってきていた。物を壊さない様にビクビク生きてきた彼にとって【破壊して暴れて欲しい】という指示は正に真逆の行動と言って良いだろう。ロビン少年は解放されていた。


「どりゃー!」

「ソイツを止めろー!」


 各々が役割を全うしつつ、歩みを進めて行った。だが、事はそう上手くはいかず。ロビン自身は順調に事を進めていたが、辿り着いた先は少し開けた大きな部屋で。


「何の騒ぎかと思えば。テメー、王子様の隣にいた従者の一人だな?」

「お前は……あの時の!」


鍛えられた身体に全身を黒の独特な衣装に身を包んだ男が椅子に座って待機していた。そんな男にロビンは声を荒らげつつも訪ねる。


「アルヴィスはどこだ!」

「王子様ならこの奥さ」

「アルヴィス……今行くからね!!」


 ガントレットを構え、敵と事を構える。事前の取り決めとは違う流れ、ロビン少年のルートの先に【山薙】のリーダー、ゼルドリスが待機していたのだ。


「お前が俺様に勝てるとでも?」

「やってみないと分からないだろ!」

「分からねぇのはヒヨっ子だけだ」


 敵は大槍使いの強敵。自分の役割は撹乱、だがこの役回りになったのであれば話は変わってくる。


(俺が今やるべきは……時間稼ぎ)


 そう、サジは敵を倒せとは言っていなかった。足止めして貰えると助かると言っていたのだ。


(確か早くて5分、この相手を5分足止め……出来るか? いや、やるしかない!)


「行くよ、烈破!!」


 覚悟を決めたロビン少年は先んじて地面を蹴った。


「遅せェ」


 だが敵は既に真横に回り込んでおり。


「っ!?」


 再び蹴り飛ばされ、荷物の中へと激突させられてしまう。


「もう終わりかァ? 威勢の割にゃ物足りねェカスだな」

「ま、まだだ」


 よろけながらも立ち上がるロビン少年。そしてすぐに構えを取った。攻撃するにも防御するにも、魔力で身体を覆わなければ話にならない。その魔力量で、ゼルドリスはロビンの遥か先にいる存在なのだ。


 小手先では通用しない程の実力差。ゼルドリスは魔杖の解放も行わず構えようともしていない。相対す価値のない敵、敵としてすら認識されない。それが今の彼の評価だった。


(俺の……やるべき事!)


 だがロビン少年は。


「何だテメェ、まだヤんのか?」

「当たり前だ!! アルヴィスを返せ!!」


 ガントレットを構え、役割に徹していた。目的は勝つ事ではない、足止めなのだ。ならばこれで良い。それが今の彼に出来る最高のパフォーマンスなのだから。


「グハッ!」

「おらよ!」

「ゴフッ!!」

「最初の威勢はどうしたァァ!!」


 蹴り飛ばされ、殴り、踏みつけられ、その全てを致命傷にならぬ様に避けて、ギリギリの所で踏み留まる。踏み留まる事こそ、彼に出来る唯一の戦い。


「ボロボロじゃねーか、そんなにあの王子様が大事か?」

「当たり前だ!!!」

「ハッ、だせぇなァ!」

「グハッ!」


 だがその奮戦も虚しく、稼げた時間は僅かに1分。それでは流石のサジもまだ何も終えていないだろう。


 立たないと、すぐに立たなければ。自身が足掻く事で1秒でも長く、ここを保たせる為に。今自分に出来る事に精一杯、せめてそう在ろうとするロビンに。


「ウゼェ、もう死ねよ。なぁ【貫通牙(ツーガ)】」


 無情にも解放した魔杖を構えるゼルドリス。それは【ウザい】という認定からの敵対行動。どんな形であれ、少なからず煩わせた。その事実は喜ばしい事だが、無慈悲な槍がロビン少年を貫かんとする。そのタイミングで。


「悪ぃ、遅くなった。よく保たせてくれたな。後は俺に任せろ」


 既にボロボロなロビンの肩に手を乗せ、前へと出る。


「何だァテメェは?」

「俺か? 俺は汁掛け専門の精霊だ」

「イカれてんのかテメー」


 ラディック・デマイズ。臨戦体制の魔力をその身に纏った一人の男が、ロビンとゼルドリスの間に割って入った。

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