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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
33/88

031:ロビン・ラックと王子の奪還-2-

「傷だらけの一団とは、何事ですか?」

「すまない、話を聞いて欲しい。俺たちはアルヴィス・アルカンシエルの一団で、襲撃に遭い、この状況となってしまった。少しお力添え頂けると助かるのだが……」


 デマイズの里。

 少し物静かではあるが、かなり栄えており、一人一人の人材の優秀さが見て取れる様な作りをした場所だった。娯楽施設はやや少なく、代わりに修練や瞑想などに向いた施設が多く点在しており、一族としての意識の高さが垣間見える様な里となっている。その入り口には当然見張りが付いており、そこで止められていたのがクライブ一行である。


「そのアルヴィス・アルカンシエル様のお姿が拝見出来ない様に思いますが?」

「……恥ずかしながら、攫われてしまっている」

「信じる根拠は?」

「一応俺が近衛騎士の称号を持っている、これだ」

「成る程、強ち嘘という訳でもない様だ」

「それで……俺たちはどうすれば?」


 デマイズはかなり特殊な立ち位置をしており、この国の突起戦力として重宝されている一方で、その強過ぎる能力が故にある程度の【独立した政治】を認められていた。他の貴族や村と比べるとこの里の権利は大き過ぎて、詳しく状況は条約を知らなければ介入する事が難しい存在となっていた。


「今我々も別の案件でかなり兵を失っている。これ以上里を守る人員を減らして里の脅威を悪戯に発生させる訳にはいかない。それに近衛騎士の称号だけで全てを鵜呑みにする事も出来ない。我々に今提供出来るのは滞在を許可する事、それだけだ」

「お心遣い、感謝する」

「あそこの施設を使うと良い、中の物も自由に使ってくれ」


 案内された客人様の施設に入れて貰い、傷を負った者たちを回復していくロビン。そしてサジを寝かせ、今ある装備、持ち物、食糧、戦力を確認していくクライブ。


「こ、ここは?」

「目が覚めたか」


 そうして少し時が経ち、再びサジが目を覚ました。


「痛ててて、あれ、傷が殆ど……。ロビン少年、か」

「感謝しろよ」

「感謝か、してもし切れませんよ。で、その少年は?」

「寝てるよ。魔力の使い過ぎと、後は精神面かな」

「そっか、まぁそりゃそうか」


 ロビンが寝ている所を指差してくれたクライブのお陰でその存在を確認するサジ。ロビンはスヤスヤと眠っていた。そんな彼の寝顔を見て少し申し訳なさそうな表情をしながらも「無事で良かった」と小さく呟いていたサジ。その様子を見て溜め息を吐いたクライブは、座っていた椅子で足を組み直して話し始めた。


「お前には聞かなきゃいけない事が沢山あるからな、覚悟しておけよ?」

「ですね、今なら話せます」

「……そうなのか?」


 少し呆気に取られるクライブ。状況からして、もっと話し難い話題になるとばかり考えていたのだ。そんなクライブに対してサジは言葉を続けた。


「多分、アイツら俺が死んだと思い込んでそうなので」

「そう言う事か。確かにお前はロビンがいなければ死んでいた……か。いや、確実に死んでいたな」

「ですね」

「ムニャムニャ、な、何か呼ばれた気がしゅる……」

「気が付いたかのか。それなら何か飲み物を取って来よう」


 二人の会話に気が付いたロビンが起きて来たので、話は三人でする事となった。




 ━━━━━




「俺ァ元々、山薙のメンバーだったんですよ」

「な!? それは俺たちに会う前からって事か? っと、しまった……」

「あ、俺がやるね」

「すまんな……」


 驚愕の新事実を聞かされるクライブはあまりの衝撃に飲み物手からを落としてしまう。そしてそれをテキパキ片付けるロビン少年。例え寝起きだろうが寝る前だろうが、床が汚れれば拭くのは当然なロビンである。


「だからまぁ端的に言えば何もかも向こうに握られていたんで、この作戦を持ちかけられた時、引き合いに出されていたのは俺の家族と、村でした」

「……人質を取られていた訳か」


 家族、妹、そして友人や村の仲間たち。その全てを守る為に盗みをし、王子へ懇願し、今へと至ったサジの根幹と言っても過言ではない【村】という存在。それ自体を人質として握られており、行動に怪しいそぶりを見たら適当に殺してくると脅されていたのだ。この話を聞いていたロビンは掃除する布を拭く手に少し力が篭っていた。珍しく、怒りを露わにしていたのだ。


「んでまず間違いなく大将は山薙のリーダーより強い。だから捕まえるにはひと工夫必要だってんで、俺を使い捨てる事にしたんですよね」

「……そういう事だったのか」


 これはサジなりの贖罪でもあったのだ。山薙は裏切れない、だがアルヴィスやクライブに申し訳ない気持ちもあった。そんな葛藤の中、到底許す訳にはいかない自分自身への処遇として、自ら捨て駒を志願した、という事だった。やり様に寄っては他にも作戦はあっただろうが、確実性と自身への罰が釣り合った彼なりに最善の選択だったのだ。


「つまり今なら話せるってのは……そういう事か」

「今の俺は死人ですからねぇ。それこそ正体さえ割れなければクライブの兄貴たちのサポートも出来る筈ではあるんですが……」


 そう、そこまで言ってサジは恐る恐る言葉を続けた。


「俺の事、信じられます?」

「いや、無理だな」

「ですよねー」

「サジ……」


 タハーと笑い飛ばすサジではあったが、心中はかなり複雑な物があっただろう。それを考えるととても辛い気持ちになったロビン少年。床を拭き終わり、彼もテーブルへと合流する。


「いやー流石クライブの兄貴ですね」

「もうお前に嵌められるのはゴメンだ、けどな」

「ん?」


 クライブは不安そうなロビンに「安心しろ」とでも言いたげな目配せをすると、スッと立ち上がり、サジのすぐ隣まで移動し、そして。バコっとサジに拳骨をお見舞いした。


「痛っって! な、何をするんですか」

「お前の処遇を決めるのは俺じゃない。だからそれまでは信じてやるよ」

「!!」


 そう、クライブはどこまでもいっても一護衛。その立場はサジより少し上であったとしても、身振りの決定権まで持つ訳ではない。彼の処遇を来て良いのは、彼の主人たるアルヴィスなのだ。


「はぁーどこまでも、兄貴っぽいですね」

「仕方ないだろ? アルに聞かない内に勝手に決めたら後が怖いからな」

「確かに」

「えっと、つまりサジは……」


 オロオロとクライブとサジを交互に見るロビン。そんな彼にニカっと笑顔を送り応えるサジ。


「おぅ、ロビン少年。俺ァひとまず大将を奪還するまでは味方だ! よろしくな?」

「サジーー!!」


 涙を堪え切れず、感極まってしまったロビン少年だった。

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