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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
32/88

030:ロビン・ラックと王子の奪還-1-

28名の皆様、いつもありがとうございます。指先が凍ってるのではと錯覚する程寒いのですが、今日もバリバリいきます。

「……ここは?」

「漸く目が覚めたか、王子様よォ」

「痛っ。あー成る程、頭を殴られたのか」

「隙だらけの脳天なら一発でノックアウトってワケよ。てめーはそこで大人しくしてろ」


 とある施設にて。アルヴィスは拘束された状態で檻の中に入れられていた。幸いというべきか五体満足で生きており、身体に見られる異変は捕まるタイミングで頭に受けたであろう打撲傷がくらいの物。比較的軽いダメージで済んでいた。


「んで、俺をどうするんだ?」

「テメーにゃ何にもしねーよカス。テメーは引換券だっつってんだろ」

「引換券? 成る程な、交渉の材料に使う訳か」

「そういうこった。黙って大人しくしてろ」


 黙って大人しく、手をグーパーグーパーして足を小さく動かし、骨に異常がない事を確認する。骨には異常がなく、筋肉も無事、頭も働いている、だがしかし。


(……やばいな。魔力の消耗が多過ぎる。【猛りも従う嵐の狂順(テンペスト)】を無理矢理解除された影響か、クソッ)


 魔力は丁寧に構築すれば消費が少量で済み、荒く構築すれば消費は多くなっていく。それは一度構築した魔力の解除の仕方にも同じ事が言えていた。荒々しく解除された魔力は消費が多くなり、丁寧に閉じられた場合よりも遥かに多くの魔力が失われてしまう。それが帝級魔法ともなればまた別格、言わば諸刃の剣という訳なのだ。


(暫くは様子見をしつつ魔力の回復に専念か)


 アルヴィスは待つしかなかった。それが助けなのか、引き渡しのタイミングなのか、兎に角状況が動くまでの間に魔力を戻せるだけ戻しておく。今出来るのはそれくらい、という檻の中とは思えない程至極真っ当で冷静な判断だった。



 ______



 時を遡る事、アルヴィスが収監される少し前。

 ロビンとクライブは複数の問題に直面していた。


「大丈夫かロビン?」

「グッ、俺は大丈夫。抜けなかっただけで、身体はまだ無事な方だと思う」

「なら良かった。早くサジを医者に見せないと……」


 蹴り飛ばされ、岩の中に封じられていたロビンは、それが故に重傷を負う事を避けられていた。そしてクライブは敵と斬り分け敵は撤退。敵に抑え込まれた形でアルヴィスを目の前で連れて行かれてしまっていた。故にダメージも少なく、まずは埋まってしまっていたロビンを救出に向かい、そして次に。


 絶命の危機に瀕した重傷のサジであった。


「ゼェ……ゼェ……」

「かなり不味い状態だ。ギリギリ即死って訳じゃなかったみたいだが、このままだと時間の問題だろう」


 猛りも従う嵐の狂順を使用したアルヴィスの渾身の一撃、これをガードしていたとはいえ正面から受けたのだ。無事な筈もなかった。傷は左肩から右の腰まで続いており、致命的なダメージを避ける様になけなしのガードをしていた様で、内蔵が傷付いている状態ではなかったが、裂傷による出血が多過ぎたのだ。


「俺がやる、まだ集中力が必要だから周りの警戒をお願い」

「ロビン? お前何を……、いや、分かった任せろ」


 ロビンはサジの前に出ると深く集中し魔力を構築していく。


「【眩き光の粒子】、癒しの光(ヒール)


 光が溢れだし、僅かにサジの傷が塞がる。だが。


「ゴフッ……」

「ダメだ傷が深過ぎる。ロビン、お前もこれ以上魔力を使ったら……? お前、まさか聞こえてないのか?」


 ロビンは深く集中したまま、目の前の事に意識を尖らせて戻っていなかった。こう言ったタイミングの彼の集中力は、クライブをして言葉を失う程、驚異的なレベルを誇っていた。


「【眩き光の粒子、我願いに応え閃光に秘めし

 大いなる力を顕現せよ】、光り輝く粒子の祝福(シャイニングヒール)!」

「光の……中級魔法か」


 それは万が一に備えニクスから教わった、たった二つだけの詠唱であった。詠唱を知っても理や適性が無ければ魔法は発動しない。故にニクスはロビンに適性の見込める物を選び教えていたのだ。ロビンの生み出した光はサジを包み込み、深く傷付いた身体を修復していった。傷は塞がり、そして出血は徐々に止まっていった。


「凄いな……もう中級を扱うのか」

「先生の教え方が上手いからね」

「そういう問題……なのか」


 やや納得いかない雰囲気のクライブだったが、サジの呼吸が整い始め様子が変わってきたので言葉は出さずにおいた。そして漸く、彼が言葉を紡ぎ始めた。


「や、やるねぇ。ロビン少年……」

「サジ!? 意識が戻ったの?」

「い、意識は割とあ、あったんだぜ、話す余裕、は、なかった、けど」

「良かった、身体はどう?」

「ど、どうやら、死に損なっちまった、みたいだ」

「馬鹿言いやがって、お前には聞きたい事が山ほどあるんだから、死なれると困るんだよ」

「……です、ね。すい、ません、クライブの、兄貴」


 意識を取り戻したは良いが、寛解とは程遠い状況。可能であればどこかで休むべきなのは一目瞭然だった。ここのままでは次の襲撃があれば全員即死もあり得る上にサジの身体にも良くない、移動は必須の状況だ。


「近くに行けそうな所はないの?」

「この近くだと、そうだな。アルの管轄ではないのだが、一箇所だけあるにはあるな」

「そこに行くしかないよ!」

「……行くしかないか」


 気乗りしない雰囲気のクライブ。サジや味方が怪我を負い、一度立て直してアルヴィスを救出に行きたいこの場面で、一刻を争うこの場面で行き渋る、その行き先。


「デマイズ一族の……里に」


 そこは高名な血族、魔眼の持ち主たち。

 法の理すら超越してしまった一族。

 デマイズの一族で構成された里であった。

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