024:ロビン・ラックとサジ・ノートス-3-
ブックマーク頂いております25人の皆様、ありがとうございます。昨日の更新より最初の山場【サジ編】に入りました。よろしくお願いします。
「ねーねーニクス先生」
「何ですか?」
「属性とかって、俺にはまだ早い?」
「好きにすれば良いじゃないですか」
「ニクス先生の意見が聞きたいの!」
「俺の? 俺の意見は【好きにすれば良い】です」
「……ニクス先生ぇぇぇぇぇ」
「だぁぁぁ寄らないで下さい、こらっ、マントを引っ張るんじゃありません! え!? ァァアナタそれ手が脂まみれじゃないですか!? こら、離れ、ちょっ、や、ヤメロォォォォォォ!!」
自室に戻るとそこには自身の悩みを解決してくれるスーパーアドバイザーが椅子に座っている。彼が日々挫けそうな時の心の支えとなっている有難い存在だ。
「ハァハァ、分かりました、ちゃんと答えますから。結論から言うとやめておいた方が良いですね」
「ふむ、どうして?」
「簡単に言うと【応用編】だからです。基礎を固めている段階でやるべきではありません」
「えーでも俺もドバーって火とか氷とか出したい!」
「出ませんよ、アナタにその素養はありませんから」
「……え?」
はっ、しまった。
そう思った瞬間、時既にお寿司なのである。
いや、夕食はハンバーグであった。
「俺……やっぱり才能ないのかな。頑張るからさ、俺頑張るから……」
ウルウルし始めるロビン、そしてオロオロとし始めるニクス。このままでは塩味の強いハンバーグが焼き上がってしまう。それは非常にまずい、何とかしなければ、早く、あの涙が溢れる前に!! と焦るニクス。そして焦げるハンバーグ。いつの間にか馴染みの光景となりつつあった。
「こ、言葉足らずでしたね。アナタには火や水の素養はありません。アナタの属性は【光】です」
「光? 俺光るの?」
「光ります」
「光ると……どうなるの?」
光る。眩しい。光とは形の無い物である。氷の様に進路を塞いだり、火や風の様に圧を生む事もない。ロビンは具体的なイメージが出来なかったのである。
「見せる事は出来ないのですが、光属性はかなり厄介でしたね。まずアンデッド系に強い効果を誇り、収束させれば鉄をも貫通する光線を放てます。俗っぽく言えばビームですね」
「ビーム!!?」
「また水属性と光属性は傷を治す魔法も存在します。しかし、やはり何よりも誇るべきはその攻撃速度です。恐らく極めるレベルまでいけば全属性中最速の魔法となるでしょう」
「最速魔法!! かっこいい!!」
ハァと溜め息を吐いて何かを思い出す様な姿を見せるニクス。恐らく光属性に手を焼いた経験があるのだろう。
「奴らは兎に角速い、状況を立て直す間も無く叩き込んでくる様は正に光速と言えるでしょう」
「どうしてニクスは見せられないの?」
「光属性は扱えないからです。俺は ですからね」
「はぇーそうなんだ。ニクス先生でも無理な事があるんだね」
「アナタ俺を何だとお思いで?」
神か何かとでも? と言いたげではあったが、純粋な尊敬である事を理解していたので、それ以上悪態を吐くのは止めておく事にした。
「でさ。俺ね、せ」
「断ります」
「まだ何も言ってないよ!?」
「どうせまたあの時の神級魔法を使わせようとしているに決まっています。アナタは分かりやすいですからね」
「むぅ」
「そうポンポンと乗せられてたまりますか。自身で励みなさい」
「少しくらい……」
「……」
「ニクス先生……」
「……ハァ、分かりました。今のアナタが覚えても支障のない範囲の詠唱を少しだけ教えましょう」
「良いの!?」
喜びに満ちた表情で次なるハンバーグとなるミンチ肉をコネコネパシパシするロビン。心なしかいつもより力が篭っていた。
「……それは?」
「ハンバーグだよ! 目玉焼きも乗せるから楽しみにしててね!」
「隣りのは?」
「コーンスープ!」
「では何故芋を?」
「付け合わせだよ? ポテトソテー! サラダもあるよ!」
「焼いてる小間切れのパンは?」
「クルトンだね、コーンスープに入れるの!」
「ふむ……美味い」
「あ!? まだダメだって!」
「ぐぬぬ……、分かりました。待ちましょう」
こうして夜は更けっていくのであった。