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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
24/88

022:ロビン・ラックとサジ・ノートス-1-

昨日に引き続き23人の皆さまが居てくれるお陰で今日も続きの執筆に着手できます。ありがとうございます!

 とある日の昼食時の事。アルヴィスがジャミールからの頼み事を引き受け、ロビンは一人学食を目指して移動していた。


「おやおや? ロビン少年じゃないか」

「サジだ! 良かった、俺一人でご飯かと思ってたよ」

「大将はどったの?」

「先生に頼まれ事してた」

「あーそういうパターンね。了解了解。なら先に一緒に食ってるか」

「クライブは?」

「クライブの兄貴は今日休み」

「え、何かあったの?」

「まぁあの人も色々ね、ここで言っちゃうと後から怒られるから自分で聞いてくれると助かるんだけど」

「あはは、病気とかじゃないなら良いよ!」


 普段はアルヴィスやクライブがいる為、2人だけというのは案外珍しい状況だった。故に、ロビンは前から気になっていた事を質問してみる事にした。


「サジってさ、何でアルヴィスの護衛やってるの?」

「ん? 何でって、大将が好きだから?」

「じゃあどうして好きになったの?」

「大将との出会いを知りたいって事かい?」

「そう!」

「全く、人の馴れ初めを聞こうだなんてハシタナイ。よくぞ聞いてくれた!」


 近くにいた人間が「どっちだよ!」と心の中でツッコミをいれていたのだが、ロビンは反応出来なかった。コミュ力発展途上の彼にツッコミは高度過ぎたのだ。


「俺はなァ、結構辺境の出身で、まぁビンボーだったのよ」

「へーそうなんだ」

「んでな、領主様ってのがいて、そいつが収穫のを7割を税として納めろって言う様なめちゃくちゃなやつでよ。みんな飢えて死にそうだったワケ」

「えー酷いなー」


 お互い食べる物を回収し、席に着いた。だがロビンは食べる所ではなくサジの話の続きに夢中だった。


「ま、辺境はどこもそんな感じだと思うけどさ。うちはたまたま大将が査察に来ててさ」

「アルヴィス!」

「だから俺は言ってやったんだ、【お前らの贅肉を増やす為に俺たちは飢えてるんだぞ! 分かってるのか!】ってな」

「えー、アルヴィスに言ったの?」

「大将の取り巻き連中がみんな栄養満点の顔してたからよー、こうイラっときちまってな?」

「うーん、サジたちは飢えてたんだもんね」

「そうそう。そしたら大将が【そっか】って。んで馬に乗ってパカパカ去って行ったワケよ」

「冷たーい。他に言い方なかったのかなー」


 王子として立場のあるアルヴィスは一部の農村を任されていた。だがその全てを把握出来ている訳ではなく、また書面通りの対応が為されている保証もなかった。故に、彼は彼の意向で時折査察に回っているのだ。


 サジの話はまだまだ続いた。


「あの時の大将の言い方は……まぁ仕方ないな。俺も俺だし。けどよ、貴族や王族なんてみんな口だけで、結局自分達の事しか考えてないアホばっかでさ。大将もそうなんだって、王子に生まれたからって良い飯食いやがってって、俺心底ムカついててさ」

「うんうん」

「それから驚いたのは次の税の取り立ての時さ、何と免除されたんだよ」

「免除? 取り立て、無かったの?」

「そう、今まで取り過ぎだった分で1年間の免除。でその先は減免されてたんだわ。ビビったね」

「アルヴィス!!」


 殆ど手付かずの昼食の隣を行儀悪くバンと叩くロビン。アルヴィスの行動への賞賛代わりに身体が動いてしまったのだ。


「俺ァね、やられたよ。あわよくば飯の一つでもってつもりで、藁にも縋る気持ちで言ったのによ。一年間の免税だぜ? 税、免除。あれで村がどれだけ救われた事か。あの時の自分の言葉も、態度も、何もかも許せなくなるのにそう時間は掛からなかったさ」

「そっか……。でもそれからどうやって?」


 今のは出会いの話であって、まだ村人と王子のままだ。ここからどう進展するのか楽しみでならなかった。


「査察に来てた訳だからさ、待ってりゃまた来るかもしれないだろ? だから鍛えたのよ。でも大将の周りには腕利きが大勢いたからよ。その中で俺に何が出来る? って自問しながら鍛え続けたワケ。そして遂に大将が現れたのさ」

「アルヴィス!!!」


 もはや賞賛の台パンは止まらず、目は光り輝いていた。


「それでサジは何て言ったの!?」

「そりゃーシンプルに【俺を連れて行け!】ってな。あの時はクライブの兄貴にバチクソ反対されたんだよなー」

「クライブはアルヴィスの事凄く大事にしてるもんね」

「んだな。けどよ、俺も同じ事を思ったワケさ。クライブの兄貴の言う事に反論出来なかった。俺みたいな得体の知れない奴を身内においたら、いつか背中を刺され兼ねないからな。辞めておいた方が良い」

「アルヴィスの背中刺しちゃうの!?」

「大将はこう言ったんだ【良いぜ、お前を信じてやるよ】って」

「アルヴィスぅぅぅぅ!!!!」


 バンバンバンバンバンバンバンバンバン。


「信じられちまったなら仕方ねぇ、後は野となれ山となれだ。そんな感じで今に至るって話さ。どうだ、大将カッコイイだろ?」

「アルヴィスカッコいい!!!!!」

「人の居ない所で恥ずかしい話をするな馬鹿」


 と、そこに役目を終えたアルヴィスがやってきたのだ。用事に疲れたというよりは、この状況に混ざる事への辟易とした気持ちが表れた表情をしていた。


「げ、大将。いつからそこに?」

「【お前を信じてやるよ】って所からだな」

「ふぅ、何度聞いてもカッコいいですぜ大将」

「てめっ、ワザと言わせたな!?」

「アルヴィスカッコいい!!!!!!」


 当然、アルヴィスが近づいていた事に気が付いていたサジは、話のピークをアルヴィスが到着するタイミングにぶつけたのだ。策士である。


「しかしまぁ、懐かしい話だな」

「ですねぇ、今度はクライブさんに聞いてみな?」

「聞きたい! 絶対聞くよ!」

「俺だけつまんねーじゃねーか」


 こうして、珍しい昼のひと時は幕を下ろしたのだった。

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