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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
21/88

020:ロビン・ラックと修行の成果-2-

ブックマーク頂いている23人の皆様、いつも本当にありがとうございます。今日もバリバリいきます。

「失礼します、ジャミール先生はおられますか?」

「何だロビン・ラックか。どうしたこんな朝から」


 その後アルヴィス達と別れ、ロビンは職員室へと訪れていた。


「魔杖、出来たので見せにきました」

「何!? お前……いや、それよりその身体」


 ワナワナと震えながらクライブと同じ反応を見せるジャミール、身体検査再びである。


「信じられん、昨日の今日で起こる変化なのか?」

「魔杖、明日までに必ずって。だから……」

「!?」


 そして彼は自身の発言を思い出していた。何気なく、本当に何気なく【今日無理だったら明日、明日無理だったらまた明日】くらいに軽く考えていた発言だった。彼は言葉に【必ず】と付け足していた。その必ずは【必ず作成を終える】ではなく【必ず報告する】という部分に付随させたつもりだったのだ。監督責任者として状況を知る義務感からの発言だ。その自身の発言が、一人の少年をここまで追い詰めていた事に今気が付いたのだ。


「いや、その、何だ。悪かった。良く頑張ったな」

「はい!」

「で、何にしたんだ? 見せてみろ」

「はい」


 魔杖を手に取り魔力を流し込む。そして変形させる。


「ちょっと頼むよ烈破(れっぱ)

「ガントレットか、成る程な。それに良い銘だ。名は体を表すという。魔杖に恥じぬ己を心掛けろ」

「はい!」


 こうして何とか今日という期限に間に合い、彼の退学(思い込み)は無くなったのであった。因みにこの時、ジャミールは自責の念からロビンの肉体の変化を追求する事が出来なかったりしていた。



 ______




 教室に辿り着き、違和感を覚えるロビン少年。扉の前で少し立ち止まる。何かは分からないけれど、何かが違う。その違和感の正体も分からぬまま、扉を開けた。


「……!?」


 そこには、視界に広がる魔力の流れが見て取れた。


「わぁー、こんな風になってたんだ……」


 何も見えていなかった。何も感じていなかった。それは当たり前の事で、つい数日前までは押し入れで一生を終えると思っていた生活をしていたのだから。


 だが、今は違う。


「君の魔力凄いね!!」

「え? な、何?」

「めちゃくちゃ青い! それに凄く綺麗!」

「……離れて」

「この教室の中で1番綺麗だ、ううん。俺が人生で見た中で1番綺麗な青色だよ! 凄い!」

「……」


 ワクワクが、止まらなかった。


「あ! アルヴィスは緑だね! アルヴィスの魔力も凄く綺麗! 何だろう、なんか集まって来てるみたい!」

「落ち着け、分かったから服の裾を掴むな!」

「俺ね、嬉しい! みんなの事ちゃんと見える!」

「いやちゃんと見えてないから、何だよ緑って」

「へ?」


 アルヴィスは猛り狂うロビンを鎮めると、ロビンの頭を撫でながら何とか着席させる事に成功した。もはや猛獣使いである。


「色がさ、ほら。ね?」

「ね? じゃねーから。色って何の色だよ」

「魔力?」

「魔力に色なんて無いだろ?」

「え!? うーん、そうかなぁ……」


 アルヴィスの言葉と、自身の見ているものが食い違う。漸く皆と同じ視界を共有出来たと思った矢先の話である。


 思い返せば初めて魔力を直視したのは使い魔召喚の時。ニクスが現れる直前に黒に近い魔力が溢れていた。あれは何だったんだろうか、疑問が尽きなかった。だがそれらはあっという間に霧散した。解決法は至って単純、ニクス先生に聞こう。そういう事であった。


「まっ、いいや!」

「もう先生来るから大人しくするんだぞ?」

「勿論!」

「それをやめろっての」

「全員揃ってるかー、居ない奴は返事しろ。居ないな、授業を始める」

「いやそれ確認出来てないから」


 クラスメイトの華麗なツッコミを無視して授業が進行される。今日の一限目は魔法構成学だった。


「さて、諸君が知っている通り、魔法を使うには魔力が必要だ。その運用に関しては魔力流動学で取り扱う。ここではその魔力の通り道を構成し、意図した形で発現する為の工程、即ち【詠唱】について学んでいく。詠唱は段階別に分かれており、それぞれ構文が異なる。何段階か言ってみろ、ミア・ホワイトニュート」

「5段階、初級、中級、上級、帝級、神級」

「その通り。そしてそれぞれ属性によって詠唱は異なる。また詠唱の仕方には幾つか種類が存在する。一つ言ってみろ、ジュリエス・メラルダ」

「はい、えーっと、何だっけ。詠唱の仕方……詠唱破棄!」

「その通り、他には誰かあるか?」

「詠唱短縮があります」

「そうだな、基本はその3つだ。完全詠唱、詠唱短縮、詠唱破棄。それぞれどこまで言葉を紡ぐかの違いで、魔法の名称の発言まで省略する事を無詠唱という。では何故紡ぐ詠唱の量に段階が分けられているのか、キャルメ・バルラバーディ」

「え!? えっとー、戦う時に楽だから?」

「言いたい事は分かるが、知らない者が理解出来る様に説明しろ」

「えぇ……、例えば目の前に攻撃魔法が迫っていて、それを防御するにあたって完全詠唱では時間的に間に合わない場合、とか? の為、みたいな?」

「まぁ良いだろう。場面や敵によっては詠唱の余地がない場合もあるという訳だ。ではどう考えても無詠唱が望ましい中、完全詠唱が存在する理由は誰か分かるか?」

「詠唱は完全に紡いだ場合の方が魔力消費が少なく、また無詠唱は魔力コントロールが繊細な為、そもそも難易度が高いというリスクがあります」

「その通りだアルヴィス・アルカンシエル。それ故に魔法の詠唱は場面によって用途が変わり、選択肢が多ければ多いほど戦いにおいて有利であると言える。ではもう少し実践的な話をする」


 こうして、魔法学校の1日はあっという間に過ぎていった。

 この日のロビンは寄り道もせずに、一目散に自室へと帰還した。理由は言うまでもなく。ニクスを質問攻めにする為だ。



 ━━━━━



「ねーねーニクス先生、魔力に色ってあるよね?

「藪から棒に何ですか、魔力に色? それは個々の魔力に見え方の差があると言いたいのですか?」

「うーん、多分」


 カンカンカンと軽快に包丁を扱うロビンだが、それに比べて表情は重たく沈んでいた。急いで帰宅し開口一番「腹が減りました」とニクスに先制され「ご飯用意するね!」となり、色々すっ飛んでしまい、今漸く昼間の件を思い出したのだ。


「結論からいうと色はありません」

「無いかー」

「ですが、そもそも色の認識が俺とアナタで同じとは限らないと理解出来ますか?」

「えっと、俺が見てるトマトの赤が、俺にとって青だと思ってる色でニクスは見えていて、それを赤と呼んでる、みたいな?」

「その理解で問題ありません。つまり見え方に差はあれど、見えている物が同じとは限らないという前提です」

「ふむ」


 ニクスの説明は要領を得ており、結論が遠くともそれが近道である事を理解しているロビンは答えに焦る事はなかった。


「かなり微細な魔力コントロールが必要になる技術なので、皆が皆魔力を可視化出来る訳ではありません。因みに、俺にとって魔力は波みたいなイメージですね。それぞれ揺れ方に特徴があり、その強弱や大きさ、或いは振動数などで判断しています」

「ニクスにはそう見えてるんだ。何が分かるの?」

「属性、魔力コントロールの優劣、少し分かり辛いですが、総魔力量も推し計ります。ですがそれにばかり気を取られては、本当の強者はそこにすらフェイクを仕掛けてきますからね。意図的な物がどうかの見分けも必要となります」

「えー、そこまで見えるの?」

「さて、俺の話は良いとして。色ですが。見えるのであれば恐らく属性やコントロールの優劣あたりの判断材料になるのではと推察します」

「え!? じゃあ色があるって事は……」

「どう見えているかは分かりませんが、それが見えるというのはとても大切な事です。俺には波に見えますが、それを具体性のあるイメージに変換して同じ様な景色を見ているのかもしれませんね」

「ん? もしかして、ニクス先生の景色が流れ込んできてる……とか?」

「!?」


 その言葉を聞いて、ニクスは手を顎につける。少し険しい顔をし、そして顔を上げた。


「あり得ますね。アナタとの間には魔力的な繋がりがあります。俺はこんな経験がないので思い当たる節は無いのですが、アナタとの間にある魔力的な繋がりに関しては今も感じる事が出来ます。契約の中に魔力の逆流は無かったと思うのですが、共鳴くらいに考えればあり得ると考えられます」

「ニクス先生の力だったのか、ビックリしたなーもう」

「あまり人には言わない方が良いでしょうね」

「そうする」


 ニクスの力を片鱗なりとも共有できる。こんな事が学校に知れた時には呼び出し必至であった。

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