017:ロビン・ラックと神級の修行-3-
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「ご飯食べにきた……今何時?」
「今は20時を回った辺りですね」
「痛たたた、身体中がバキバキだよ」
「運動を始めてすぐというのはそういう物ですよ。それで、どうですか?」
「今で5分くらいかな? 最初に比べたらまだゴールが見えてる感があるよ!」
「おや、もう5分まで来ましたか。想定より大分早いですね」
「そうなの?」
扉を往復する事幾数回、ロビンは魔力という物の骨子を掴み始めていた。それはまだスタートラインに立ったかどうかと言ったレベルではあったが、随分と出遅れている彼にとっては重要な進歩だった。
「恐らくアナタが根を上げない限り、間に合わないという事はまずないと言い切れる程には、早いですね」
「よし……俺頑張るね!」
根を上げない限り、その言葉に少しでも反応するかと試してみたニクスであったが、それは無駄に終わっていた。一瞬の不安も過ぎる事なく、ニヤニヤと笑っているロビン。不気味な奴だなと訝しみつつも、弟子としては教え甲斐のある態度である。嬉しくない筈もない。
「じゃあ行ってくる!」
「お気をつけて」
1日みっちり修練を積んだ後に出てくるロビンに対して、外で待っている彼は短時間の間に幾度となくこの台詞を繰り返していた。時間にして約4分。その時間が経てば彼は帰ってくるのだ。
「ご飯食べに来た!」
「おや、今回は元気ですね」
「ヘトヘトだけど、7分行ったんだ! いよいよだから嬉しくなっちゃって!」
「それは良い知らせですね、ひとまず栄養を補給してしまいなさい」
「オッケー!」
ご飯の時間が15分、居ない時間4分、ひたすらこの繰り返しであった。それに付き合うニクスの苦労も中々の物と推察出来るが、どうもそんな感じもしなかった。見る見る成長するロビンの様子を見るニクスの顔は、悪い気をしている様には見えない、それどころか。
「では、間も無く次ですね」
「やるぞー!」
「ふふっ」
つい、笑みを零してしまう程であった。そして今回彼が去った後に。
「恐らく、次か」
そう呟いたかと思うと。
「ニクスー! 聞いてよ、10分越えたよ!!」
「それはおめでとうございます。では次の入室には俺も同行しましょう」
「よっしゃ! やるぞー!」
予想通りだなという【したり顔】をしていた事に、ロビンは気付いていなかった。そしてニクスはロビンに同行し、修行の場へと移動する。
「今日からは型を幾つかやって貰います」
「型?」
「はい、戦闘時に応用の効きやすい基本型みたいな物です」
「なるほどー、それって大変なの?」
「魔力で覆いながらなので、それなりに」
「えぇ……それなりどころかヤバいよそれ。よし、気合い入れ直さなきゃ!」
パンパンと自身の両手で両頬を叩いて鼓舞するロビン。基礎体力を上げる修行を終え、次なる修行へと移行していた。
「アナタはまだマシになった程度でゴミカスには違いありません」
「酷いよー」
「故に、今まで通り基礎体力の向上をさせつつ、戦型を意識し始める。俺が確認して、正しく出来ていれば合格です」
「成る程」
「まずは俺が見本を見せます、その後に真似をして下さい。基本姿勢からー」
「以上の10種となります。覚えましたね?」
「ふぅ、一通りこなすだけでもキツいね」
「今ので30分ほどですかね。この一連の流れを5秒以内にする事が次の目標です」
「5秒!? ……ううん、ニクス先生が言うんだもん。出来る筈なんだ」
「その粋です。筋トレは引き続きこなす事、では俺はこれで」
「ありがとね! 俺頑張るから!」
元気よく手を振るロビンに少し会釈し扉を通り抜け彼の自室へと帰還する。そして暇つぶしに利用していた教科書を手に取り、ペラペラとめくる事数ページ。
「あーご飯食べにきたー」
ロビンが帰還した。
「これ見た目以上にヤバいね。正確さを求めると身体が全然ついてこないよ」
「今日まで戦う事など意識すらしてこなかったのですから、それは当然です」
「でもニクス先生が言うんだ、俺絶対5秒以内にやってみせるから! 待っててね!」
「お待ちしてますよ」
ガツガツとご飯を食べる様子を見て、目を細めるニクス。ロビンは筋トレと並行して魔力的な負荷を全身に満遍なく掛けるトレーニングをしている。故に魔力たちが自身の通り道を強化すべく、筋肉が過剰な成長を見せていた。僅かに、筋肉が出来始めていたのだ。
「どうやら全てのメニューをきっちり熟している様ですね、身体付きに変化が見られます」
「え!? 俺ちょっとは良くなってるかな? 自分だとあまり分かんなくてさ」
「ええ、良くなってます。引き続き頑張りなさい」
「よーし、やる気湧いてきた! 行ってきます!!」
「いってらっしゃい」
そしてまた再び、4分毎の食事タイムが始まるのだった。