015:ロビン・ラックと神級の修行-1-
15人のみなさまブックマークありがとうございます。一番最初のお二人も、昨日参加してくれた人も、みなさまのお陰で私は今日も続きが書けています、ありがとうございます。
「ハァ、どうしてこんな事に……」
溜息混じりのニクスだったが、一度出してしまった言葉はもう戻らない何故なら。
「ねぇねぇどうやるの? その魔法はどんなやつ?」
このキラキラである。あまりの眩しさにニクスが直視出来ず、薄目に見た上で視界の端にロビンを入れていた。これはまさに不可避の攻撃といえよう。
「少し離れていてください。詠唱した方が魔力消費を抑えられるのでそうしますが、その分余波の影響が出るかもしれません。即時発動ではなく溜めがありますので」
「オッケー!」
ニクスの言葉を聞き、彼から少し距離を取ったロビン。具体的にはカウンターキッチンの影に隠れていた。
「やれやれ、この詠唱は本当に久しぶりだ」
フワリと、小さな風が頬を撫でた様な気がした。そして詠唱が始まる。
「いと暗き闇の慟哭、世に散る数多の黒を統べる者よ、尽くを蹂躙する簒奪と破壊の果てに、我が願いに応え神域の漆黒に秘めし大いなる力を眼前に顕現せよ」
ビリビリと肌で感じる魔力の構築、敵意が無い分恐怖心は煽られないが、それにしても魔力量が凄まじい。家の中にあるあらゆる家具がガタガタと小さく揺れており、テーブルの上に置いてあったみかんがボトリと床に落下した。
徐々にバリバリと言った雰囲気がニクスを包み込み始める。魔力が形を成そうとしていた。
「【断たれし太古の理想郷】」
その言葉が紡がれた瞬間、一切のエネルギーが全て一点に凝縮し、その真下から一つの扉が出現した。その扉の見た目は非常に禍々しく、魔界への扉であると言われても信じてしまいそうな雰囲気を醸し出していた。
「さ、出来ましたよ」
この所業に対して、あっけらかんとニクスは言葉を吐き出した。彼にとっては朝飯前もとい夕飯前なのだ。
「布団は持っていきますし、私はちょくちょく出ますので、水分は何かに入れて持っていく様に」
「オッケー! 他には?」
「出入りは自由なので、食事の際は出て食べれば良いでしょう。一度の食事にかけて良い時間は15分と言った所ですかね」
「ニクス先生が外に出る理由は?」
「1ヶ月も馬鹿正直に付き合えないからですよ。指示だけするので鍛錬は一人でしなさい」
「オッケー! それだとニクス先生にかける迷惑が減るんだよね? それでいこう!」
「では、入りますよ」
「ドキドキ!」
2人は部屋の中に出来た新たな扉を開き、通り抜けた。
「……何もないね」
「修行をするのに物があっては壊れかねませんからね。それでは早速始めますよ」
「よろしくお願いします!」
先生と生徒、二人の修練が始まった。
「まず、方針を言います。その後に実行です」
「オッケー!」
ニクスはそのままの、ロビンは授業で使う修練用の服を着ており、既に準備は万端だった。
「魔力を鍛えると、必然的に肉体の強度もあがります。故にある程度身体を鍛えつつ、魔力の修練が中心となります」
「オッス!」
「肉体の疲労がピークでも、魔力的な修行は可能だったり、魔力が尽きていても肉体を鍛える余地があったりと、それぞれの隙間を上手く使いながらやりなさい」
「オッス!」
「肉体を鍛えるメニューはこれを見なさい」
ニクスはメモを手渡し、内容を説明した。
「簡単に筋トレのメニューです。アナタの身体は弱過ぎる」
「オッス! 頑張るね!」
「そして魔力の訓練、ここだけ最初は私と一緒にやりましょう」
「何からすれば良い?」
「ぐっ」
興奮気味にニクスに詰め寄るロビン。ニクスは2歩後ろに下がった。
「落ち着きなさい、まずは魔力を感じる所からです。えーっと、ここです。ここがアナタの魔力的中心。なのでここに意識を集中しながら、ゆっくりと溢れ出てくるイメージで魔力を練りなさい」
「オッス……」
ニクスが指を指し示したのはロビンの左肺のやや中央寄り。その指の刺さった地点を頼りに魔力を探るロビン。
「出てきましたね、順調ですよ。アナタの魔力だと、気張るのではなくうちに溜めて溢れる感覚でいい筈です」
「むぅ……」
「出来ていますよ、その調子です」
「ハァハァ、こんな感じ?」
「初回と考えれば上出来と言えるでしょう。下腹部と両腕に無駄な力が入っているのと、表情を強張るのを止めると尚良いですね」
「お、オッケー」
ニクスは淡々と説明を続けた。
「今の段階だと、魔力の修行はその魔力の広がりを身体全体を覆える所まで続ける事。そしてそれと並行して筋トレのメニューをこなして全身にくまなく筋肉を付ける事。魔力で身体を覆える状態が10分維持出来た段階で次に進みます。良いですね?」
「お、オッス……」
「俺が食料を調達しておきますから、食料購入に必要なプロセス、或いはシステムを説明して下さい」
今初めて魔力という物を感じ、そして練ろうとしていたので理解出来ていた。10分の維持というのは、今のロビンにとって容易い話ではなかった。
いやこれ精神と時のへy