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ロビン・ラックと魔法学校  作者: 生くっぱ
ロビン・ラックと王子の邂逅
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012:ロビン・ラックと魔杖の生成-2-

 午前中をたっぷりと魔法基礎学に当てたクラスメイト一同は皆疲れ切っていた。久しぶりの授業と魔法基礎学というジャンル、特に基礎の最初と言うのは正に基礎中の基礎。ある程度修練を積んでいる者からすれば当たり前の事しか出てこない様な授業だった。


「初日から授業中に寝る所だった……」

「楽しかったね!」

「お前ほんとポジティブだな。アレの何が楽しいんだよ」


 わしゃわしゃと頭を撫でられるロビンと撫でるアルヴィス。早くも兄弟の様な上下関係が構築されようとしていた。


「昼飯何にする?」

「ハンバーグ!」

「似合うなー、ロビンにハンバーグ似合い過ぎ。でも美味そうだから俺もそれにする」


 何処にいても目立ってしまうアルヴィスだったが、隣にロビンがいる上に謎に仲が良い為、第三者の立場だと会話に混ざるに混ざれないのだ。遠巻きから視線を感じても、積極的に距離を詰めてくる者はいなかった。彼らは皆好かれたい気持ちもあるが、嫌われたくない気持ちも強いのだ。


「おーい、大将ー!」

「サジか、クライブもいるのか?」

「俺はこいつと同じクラスだからな」

「昼飯は何にしたんだいロビン少年?」

「ハンバーグ!」

「よし、俺らもそれにしよう。おばちゃーん、ハンバーグランチ4つで!」

「俺の意思は?」


 4人で固まってハンバーグランチを食べている様子は非常に良いムードで、叶うならそこに混ざりたいと願う人たちで周りは埋め尽くされていた。


 本来護衛という立場のサジとクライブも、ロビンがいる事でアルヴィスの存在がある種守られている事に気が付いていたので、ロビンは体良く利用されていた。


「美味ーい! みんなでご飯食べるの楽しいね!」

「一人で食うのは職務の時くらいだな、アレは仕方ないからもう気にもしてないが」

「右に同じ」

「俺も俺も! 俺なんて単独行動が多いからいつも干し肉齧ってばっかり!」


 だがこの団欒感に飢えていたロビンにとって、それがどんな形であろうと、この空気が味わえるのならどうでもいい話だった。仮にその狙いを正直に伝えたとしても、彼は【役に立てて嬉しい】くらいにしか思わないだろう。そんな彼だからこそアルヴィスが接し易かったりもするのだ。


「お前さ、魔杖はどんな形にするつもりだ?」

「魔杖かー。一応昨日確認したんだけどさ、俺戦った事なんて無いからどうしようかなーって」

「戦った事が無い? ロビンは戦闘経験がないのか?」

「叩かれた事なら沢山あるんだけどね」

「戦闘でか?」

「ん? 家で、叔父さんに?」

「……ロビン少年はここにくるまで苦労したんだな、お兄さん泣けてくるぜ」

「俺たちは立場上、戦闘が出来るのは前提みたいな所があるからな。良かったら何でも聞いてくれ」

「良いの!?」


 クライブのその言葉は、知識も経験もないロビンにとって有り難い以外の何物でもなかった。嬉しそうにキラキラとした目を輝かせるロビンを見て、嫉妬に近い感情を抱いてる者が約1名。


「俺も王子だからって舐めるなよ? こう見えてクライブより強いからな?」

「護衛として立つ背がないから勘弁してくれ」

「俺は正面きってはあまりやらないからなー、大将とやるなら罠張って遠距離から一方的にボコるかな」

「ヤメロ」

「あはは、皆んなありがとう! じゃあねー、俺はこういうイメージなんだけど」

「成る程、それならー」


 楽しい昼の一時であった。

 そして、午後はいよいよ魔杖の生成である。




 ━━━━━




魔杖(まじょう)】、それは魔法使いが必ず持っていると言っても過言ではない武具である。その形状は一般的な物よりも短いスティック状の杖であり、腰に下げたとしても形状や重量が邪魔にならない見た目をしている。そのサイズ感から袖に隠す者や服の内側に入れる場所を作っている者、腰に下げる者など様々で、収納場所は各個人の戦闘スタイルに依存する。


 またセブンス魔法学校が人気なのは、本来入手困難なこの武器を、学校側から初日配布されるという点が大きい。だがもしこれが()()()()であるならばここまで人気を誇らなかっただろう。


 というのも、魔杖は二段階目の形状が存在するのだ。【(めい)】を呼ぶ事で取得時に設定した形状に変形させられるという特殊なそれは、その形を棒状に留めず、剣、盾、槍、弓、斧など、本人の得意とする戦闘スタイルに合わせた魔力親和性の高い武器として使用する事が可能なのである。


 またこの魔杖を長く使い込んでいく事で【特性】という物が発言する事もあり、特性持ちの魔杖使いはどのタイプの戦場であっても重宝されていた。


 魔法戦闘が予想出来る場合はスティック状のまま詠唱を乗せる事で魔法の威力を底上げし、近接戦闘が始まる気配がしたならば剣状へと変形させて対応する。そして危機に陥った場合は【特性】を発現させる。この応用力の高さから、セブンス魔法学校の伝統である【使い魔】と【魔杖】は絶大な人気を誇っていた。


「それでは各自、イメージはしてきたか? 魔杖の説明にはいるぞ」


 はーいと答える声はするものの、各々まだ思案している様子が色濃く出ており、顎に手を当てる者、下を向く者、杖を持っているイメージをする者など様々だ。それ程までにこの魔杖の形状生成は大切なのだ。本来魔法適正があり、この学校に至るまでの過程で必ずと言って良いほど武器には触れている筈なので、基本構想はそれを基準になされる。


「お前らの前に魔杖が山の様にあるだろう、そこから好きな物を一本選んで、(めい)を与えろ。それでもうその杖は所有者付きの杖となる。デザインでも長さでも太さでも色でも形でもいい、ピンときた奴を手に取れ」


 ジャミールの言葉に促され、ぞろぞろとクラスメイト達は杖の前に集まっていく。これにするか、はたまたこれにするか。皆が悩んでいた。


「え、ロビンお前もう決めたのか?」

「この子が呼んでたから!」

「いや杖は喋らねー……よな? いや待てよ」


 ロビンの言葉を聞いたアルヴィスは探していた手を止めて杖全体を睨み付ける様にスタイルを変えた。そして。


「本当だ、確かに何か感じる。俺はこいつだな」


 例えそれがロビンの様な素人の発言でも、一蹴せずに耳を傾けて、己の栄養としてしまう。そんな柔軟な姿勢のアルヴィスを見てニヤニヤしていたのがロビンである。


「さっさと選べよ、まだ次があるんだぞ」


 再度ジャミールに促され、悩み続けるクラスメイト一同はやがて全員がその手に杖を持っていた。

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