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とかく学校

 さて、そのあと利尻先輩と烏野の特訓がどうなったかは、もう省略することにする。とりあえず、利尻先輩はあまり先輩としての威厳を示さなかったとだけ言っておこう。


 そして、その後僕は家に帰って、朝食を食べて、制服に着替えてから、利尻先輩と烏野と一緒に登校した。普通に話していれば、この二人はケンカしているなりに仲が良い感じに見える。うまく結ばれてほしいものだ。


 ともかく、僕は二年生になって、登校初日である。とはいえ、クラス替えはないから、そんなに特別な日ではない。ただし、裏返せば、それは今日がいつも通りの日だということでもある。


「おはよう、中海! 昨日のプロ野球を見たか?」


 こう僕に話しかけてきたのは、僕のクラスメイトではない。二年四組の教師、桜岡霊裕(さくらおかれいゆう)である。この野球部顧問でもある謎教師は、なぜか毎日一生徒にすぎない僕に絡んでくるのだ。


「あー、見ましたよ。伴鎮(ばんちん)ヨーグルスは負けてましたね」


 僕は気のない返事をしておく。


「はあ、まったく、そうなんだよ。今季は全然勝てやしない。どうすればいいんだろうね」

「だから早く転向してと言っているじゃないですか。地理的には、ここらへんの人は全員仁木島(にきしま)サンダースのファンなんですよ。先生は少数派なんですから」

「そういうわけにもいかないんだよ〜。ヨーグルスは俺のアイデンティティだからさ。……あっ、こら、逃げるな!」


 そんなこと言ったって、僕の本業は友達と話すことなのだ。先生と話すことではない。


「まったく、また桜岡に絡まれてるのかよ。ーーご苦労様。お前のおかげで他の奴が絡まれないのは素晴らしいことなんだからな」

「それは言えてるけどね。まあ、雑談は彼の唯一の短所ではない性質だからな。まだ我慢できる程度なんだよ」


 今僕に話しかけてきたのは、同じクラスの富風(とみかぜ)だ。野球部で1番を打っている人物でもある。僕と親しいクラスメイトの一人だ。


「さて、今日は午前が始業式、午後が入学式だな。早く終わればいいけれど」

「入学式とかの長さはまだましな方だよ。僕は桜岡先生が帰りのホームルームでどれだけ話すかが気になるな」

「そこなんだよな。絶対十五分は超えるぜ。中海、うまく切り上げさせろよ」

「うまくいけばやるよ。下手すれば、あの人は一時間くらいは話し続けるからね」


 本当は、僕だって桜岡先生の担任は嫌なのだ。わざわざ『先生』とつけているのは、長年の習慣で形作られてしまった礼儀正しさの名残であって、本当は僕もあまりこの先生には敬意を払っていない。授業にしても部活にしても、まるでいいところがないのだ。


 しかし、今日は入学式である。烏野をはじめ、少し初々しい一年生たちの姿を見られるのだ。僕の気分は上がってきている。

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