悪魔の魅力で誘惑無双!?
性悪男とポンコツ悪魔の第七話です。
今回の主役は、『バカわいい』『ポンコツはステータスだ』『可愛いけど身内にいたら引っ叩く』でお馴染みのリリルです。
一人称視点ですので、少し戸惑うかと思いますが、箸休めと思ってのんびりお楽しみください。
あたしは不満がある。
あの唯って子だ。
何か見てるとイライラというか、モヤモヤする。
跋人にやられた人を見ると、あたしはいつもスカッとしたのに、唯にはそれがない。
「うー! 何でだー!」
唯を大人のお店から無理矢理連れ出した翌日、跋人は近くのボロいアパートの大家に、何かの書類を突き付けてた。そしたら慌てた大家が一部屋を格安で貸すと言ったので、唯はそこに住むことになった。
「住み込みなどと楽をさせる気はない」
あたしは唯がここに住まなかったことには満足していた。
でも唯が来るたびにイライラもやもや。何これ?
唯は屋敷の仕事をするために、毎日やってくる。
あたしの力は悪いことか不幸のためのものだから、跋人のお世話には使えない。
自分でやるにも、何でもテキパキやっちゃう唯にはかなわない。
だから唯が屋敷の仕事をするのは仕方ない。
仕方ないけど何かやだ。
だからあたしは「早く帰れー」ってオーラを出している。
でも、
「あの、コーヒーのお代わりをお入れしました」
「あぁ」
「明日焼くお菓子の仕込みをしてもよろしいですか?」
「好きにしろ」
「まだ帰らないのか」
「この服のほつれを直してから……」
テキパキ仕事出来るのに、唯はなかなか帰らない。何かと仕事を作って屋敷にいる。本当にここでの仕事を嫌がっているのかな?
「では、失礼します」
「あぁ」
「……」
帰る時も、跋人をじっと見て、それから帰る。あの間も何かやだ。もやもやする。何だろ?
「……そっか!」
唯は跋人にぞんざいに扱われてない! それがやなんだ! あたしにはポンコツポンコツ言うのに、唯には別に何も言わない。それだ!
つまり跋人にあたしを大事にさせれば、このもやもやはなくなる!
……ってどうしたらいいんだろう? あたしの力は悪いことに使えるって認めてくれてるけど、それ以外だと……?
「!」
気づいた! 気づいちゃいましたよこの天才美少女悪魔リリルちゃんは!
あたしの可愛さで跋人をメロメロにしちゃえばいいんだ! そうしたら、
「……リリル、お前は可愛いな。唯なんかよりリリルが一番さ……」
ってなるじゃん! うわー! さいこー!
そうと決まれば早速誘惑しないとね。
「はっつひとー!」
ソファに座る跋人を後ろから抱きしめる。首の辺りにあたしの控えめながら柔らかい胸を当てるように。
多分跋人は慌てて、
「な、何をしている!」
って怒るよね。そうしたら、
「あれあれー? 怒ったー? 何で抱きついたくらいで怒るのかなー? ひょっとしてあたしのこと意識してるー?」
って返す。そしたら、
「べ、別にそんな事はないが……」
とか言って照れる! そうしたらもうこっちのもの!
「意識してないならいいよねー?」
って横に座って、腕に抱きついたりとかして、見つめ合って、ちゅーとかしちゃえば、
「リリル、好きだ……」
ってなる! 完璧!
「何だ」
あ、あれ? ノーリアクション!? 振り返りもしない!?
「えっとー、そのー……、ど、ドキドキとか、しないー?」
「ドキドキ、だと?」
「ほらー、女の子に抱きつかれてるんだからさー、こうー、ちょっとはー……」
何言ってんのあたし! こんなこと言って跋人が「そうだな」とか言うわけないのに!
「何だお前」
わわっ!? 跋人が腕から抜ける!
「私に抱かれたいのか?」
つんのめったあたしの、み、耳元で、そんな、冷たくて、甘い声……。
「……はい」
気が付けばうなずいていた……。
「先にシャワーを浴びて、部屋で待っていろ」
そう言われて、あたしは言われた通り、シャワーを浴びて、ベッドで待つ。
……服は脱いでた方がいいかな? でもでも脱がすのが好きな人も居るし、言われてからでいいよね。
……緊張してきた。どんな風にされるんだろう。跋人はドSだから、やっぱり無理矢理かな。それともあれしろこれしろって命令してくるかな。
……あたし経験ないから、跋人が強引にしてくれた方がいいな。そのうちあたしもだんだん……、みたいな。
……あ、でもでも、跋人に命令されながら、何が好きか、とか、どういうことをすると喜ぶ、とか、知るのもいいかな。上手に出来るか、分からないけど。
……もし、もしだけど、する時、優しかったらいいな……。初めてだって言ったら、優しくしてくれるかな? ……いや、メンドくさいとか言われそうだから黙ってよ。
……痛い、のかな。どうしよ、ちょっと怖くなってきた。でも跋人がしてくれるなら我慢できる気がする。多分。
……遅くない? 男の人のシャワーってそんなにかかるもんかな? ちょっと様子を見に行こうかな……。
! ダメダメ! これでドアの前でばったり会ったりしたら、「どうした? そんなに待ちきれなかったのか?」とか言われる! それどころか「待てもできないポンコツが」とか言われて、今夜はなしになるかも!
……あ! むしろ実はドアの横とかで待ち伏せているのかも! ありえる! 跋人だもん! その手は食わないよ!
……逆にこれだけ待たせてるんだから、あたしの方が主導権握れるよね。「ふふっ、どうしたの? ドキドキして入って来れなかったのかしら?」……これだ!
……あたしはベッドで待てばいい。跋人は立ちっぱなし。あたしの方が断然有利! ふっふっふ! 跋人敗れたり! 今夜はあたしの完全勝利!
……朝だ。朝が来た。
何で? 何で跋人一晩中立っていられるの? 椅子でも持ってきたの? まさかベットごと? いや、廊下にそれは置けないか。
わけがわからなくなって、あたしはドアを開ける。跋人は、いない。
「……何これ?」
目の前の壁にメモ? 跋人の字だ。
『放置プレイというやつだ。楽しめたか?』
「……はーつーひーとー!」
きいいいぃぃぃ! 悔しい! 完全にはめられた! 考えてみれば跋人があんな態度取るわけないもん! 何で気づかなかったの!? あたしのバカ!
……あれ? 下にもう一枚ある。……も、もしかして……。
『さかるなポンコツ。とっとと寝ろ』
「にゃあああぁぁぁ!」
あたしの絶叫が屋敷の廊下にこだました。
読了ありがとうございました。
放置プレイの良さがよく分かりませんが、意地悪としては秀逸。
エロさが足りない!? バカな……。この部分のためだけにR15を入れたのに! これ以上のエロは18禁タグがないと運営さんがああ!窓に!窓に!
次の話で一行は病院に向かいます。病院と悪魔の力、どんな展開になるのか、想像はつくかも知れませんが、それは黙ったままお楽しみください!