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4話 夢……これは夢よね?

「嘘よ……こんなはずじゃ……」


 ダ女神は地面に跪き頭を垂れている。


「おい、ダ女神、さっさと行くぞ」


 僕達はさっきのエルフのお姉さんに二週間分の水を分けて貰った。僕は水をがぶがぶと飲み喉を潤す。


「ぷはぁっ。水って最高だな」


「嘘よ……私が何したって言うのよ……」


「ダ女神、いい加減うっとうしいぞ。さっさと魔王を倒して帰ればいいだけだろう?

 お前も俺並に強いんなら何とかなるだろ」


 僕の言葉を聞いて、ハッとしたようにダ女神が立ち上がる。


「そうよ! ゲームをクリアすればいいのよ簡単なことじゃない!

 行くわよショウマ! 人間を滅ぼすわよ!」


「てめえ、何物騒なこと言ってやがる!」


「ショウマ、よく考えなさい。魔物はもう人間界を8割支配しているのよ。今から魔物側につくか、人間側につくか。どっちがいいかなんて10歳の子でもわかるわよ」


「真剣な顔でいうんじゃねえ! そもそも早くクリアしたら不味いんじゃなかったのかよ!」


「ショウマ、状況が変わったの。子供みたいなことを言わないで。お願い」


 僕は渾身の右ストレートをダ女神に放つ。


「うおっとぉ! ショウマさんも学習しませんね。正面からでは私に攻撃は当たりませんよ?」


「ダ女神が! 大人しく殴られておけよ!」


「はぁ、ショウマさん、私は真剣な話をしているんですよ? 話の腰を折らないで貰えますか?」


「てめえ、月のない夜に気をつけろよ……

 ふんっ、一つ気になることがあるんだが、あの天界の声も言ってたけどこの世界ってゲーム扱いなんだよな? シミュレーションじゃなくて? だったら魔物側が勝った場合ってゲームクリアになるのか?」


「……てへ☆」


「ならないんだな?」


「ああああっ! もう終わりよ。世界の終わりだわ。この世界は魔王に支配されてみんな死んじゃうんだわ!」


 ダ女神はヒステリックに叫びだした。


 僕はやさしく話しかける。


「ダ女神、僕といっしょに魔王を倒そうぜ。二人なら何とかなるさ」


「ショウマさんは死んでも自分の世界に戻るだけですけど、私は死んじゃうんですよ! 一緒にしないでください!」


「やっぱりてめえはぶっ殺す!」


「やってやりますよ!」


 ボコスカ! ボコスカ!


 僕達は二人ともボロボロになり、地面に仰向けに倒れ込む。


「ショウマさん……もうやめましょう。こんなこと、二人がいがみ合っていても何も解決しません」


 数分前に自分が言ったことも綺麗に忘れ去るその鳥頭っぷりには感動を覚えるよ。


「ああ、そうだな。少なくともここで喧嘩してても始まらん。とりあえず人里に行くぞ」


 僕は起き上がって、ダ女神に手を差し出す。


「そうね。先ずは人のいるところに行きましょう」


「よし、ところでダ女神、人里はどっちだ」


「分からないわよ。そんなの」


「はぁ? 何言ってんのお前、女神パワーとやらがあるんじゃないのかよ?」


「管理者権限を剥奪されたから使えないわよ。今の私はショウマさんと同じ一プレイヤーですよ?」


 本当に使えないダ女神だな!


「じゃあ、どうすんだよこれから! 人のいる場所も分からないなんて餓死するだろうが!」


「はぁ、これだからショウマさんは、いいですか? そんなのさっきのエルフに聞けばいいじゃないですか? 人里がどっちにあるかくらい知っているでしょう」


 僕はダ女神の言葉にハッとする。くぅぅめちゃくちゃくやしい。


「ほら、ショウマさん行きますよ」


 僕は無言でダ女神についていく。



「人里の位置ですか? 申し訳ございません女神様。エルフでは人里の位置は分かりかねます」


「嘘でしょぉぉぉ!」


 ダ女神はまた地面に跪き頭を垂れる。


「エルフの誰も知らないのか?」


「そうですね。人と最後に交流があったのはもう数千年も前のことです。その時代に生きたエルフは誰も残っていません」


「そうか、じゃあしょうがないな。すまん、迷惑をかけた。ダ女神行くぞ」


 ダ女神はまださっきの体勢で何かブツブツとつぶやいている。


「嘘でしょ……はっ、これは夢、そう夢よ! ぐぎゃ!」


 僕はダ女神の頭に一発お見舞いする。


「アホなこと言ってないで行くぞ。大体の方角なら検討がつく」


「えっ、ショウマさんって神か何かなの?」


「神はお前だろうが! いいか、俺はこの森にあっちの方から走ってきた。この森に向かいだした3日前に少し左に進路を変えただけだ。じゃあ、ちょっとここから右に向かって走れば人里に着くんじゃないのかなって思っただけだ」


「ショウマさん……あなた、天才っだたのね。ごめんなさい。私、ショウマさんは10歳の子供以下の知能しか持っていないと思っていました本当にごめんなさい」


 ダ女神は深々と腰を折って真剣に謝罪してくる。


 ものすごく罵倒されているのだが、こうも真面目に謝られると怒るに怒れない。


「もういいから行くぞ」


 僕達二人は人里目指して走り出した。

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