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3話 てへ☆ ちょっと失敗して天界に帰れなくなっちゃった

「おい、ダ女神。どれだけ走れば人里まで着くんだ?」


『うーん。そうですね~。大体7日くらいでしょうか?』


「脱水症状で死んじまうだろうが! 水場だ! 安全な水が飲める場所を教えろ!」


『はぁぁぁっ。どれだけ女神使いが荒いんですか? 私にも我慢の限界ってものがあるんですよ?』


「じゃあもういい。二度と話しかけてくるなダ女神! 自分でなんとかする」


『はぁ……私も好きでショウマさんとやりとりしてる訳じゃ無いですよ。四六時中見張っとかないとさっさとクリアしようとするじゃないですか』


「だったら黙って水場を教えろダ女神!」


『じゃあ、もう少し左に進路を変えてください。……あっちょっと行き過ぎです。はい、そこです』


 僕は女神の指示にしたがって水場を目指す。


 ………………

 …………

 ……



 僕はそのまま三日ほど走り続けた。


「おい。ダ女神。さすがに喉が渇いてきたぞ。後どれくらいで着くんだ?」


 レベルアップの影響か体力的には全然問題はないのだが、もう三日も水を飲んでいない。


『ぽりぽり、むしゃむしゃ。あ~そうですか~まあ、あとちょっとで着くと思いますよ~。ゴクゴク。ぷはぁっ』


「てめえ、もう殴るだけじゃ済まないと思えよ」


『はいはい。その言葉は聞き飽きました。殴れるといいですね~』


 僕のこの押さえられない怒りは一体どこに吐き出せばいいのだろうか?


 僕は無我夢中で走り出す。


「三日前の僕のあほーー!!」


『どうしたんですかショウマさん? 頭おかしくなっちゃったんですか?』


「現在進行形で頭がおかしくなるようなことを言うダ女神がいるんだよ!」


『ふふふ、私の魅力にあてられちゃったんですね。でも、ごめんなさい。私は女神で貴方は人間。絶対に叶うことの無い恋なの』


「うおおお!!!!」


 頭のおかしくなりそうな僕は、ただ声を張り上げて走り続けるしか正気を保つ方法がなかった。


 それから数時間が経過した。


 僕の視界の先に森が目に入ってくる。


「うおおお! ついに水が飲める! 一息つける!」


 僕が森の中に入ろうとすると声が聞こえてくる。


「止まれ! そこの人間! ここは神聖なエルフの森。 エルフ以外のものが入ることはできぬ」


 エルフのお姉さんが僕に声をかけてきたようだ。


「いや、そこをどうにか。水だ、水をくれ。水さえあれば他には何もいらないから!」


「人間は甘い言葉を囁いてエルフを騙すと伝え聞いている。お前が本当に水を欲していようと、お前の願いを聞き入れることはない」


「うおおおおお!!! マジ頼むよおおおお! ダ女神が俺に飲み食いの音を聞かせるんだよおおおお!!」


「お前が何を言っているのかわからないが、お前魔法は使えないのか? こんな魔境を歩いているんだ、水魔法の一つや二つは使えるだろ?」


「魔法の使い方なんか知らないんだよ。俺はちょっと力が強いだけなんだよ」


「お前どうやってここに来た?」


「ダ女神に召喚されたんだよ! 俺はこの世界のこと何も知らないの!」


「さっきからダ女神とか言っているのはもしかして、女神アトレア様のことか?」


「そうだよ! そのアトレアとか言う神様だよ!」


「なんてバチ辺りなやつだ。女神様をダ女神などと呼ぶとは、嘆かわしい」


「ダ女神はダ女神なんだよ! おいダ女神! お前もちょっとこのエルフを説得しろよ」


『ぷはぁっ。風呂上がりのいっぱいは最高ですねえ。あれ? ショウマさんエルフの森に着いたんですね。これで水が飲めますね』


「だあああ! 四六時中監視するって言う話はどこいった! 何風呂入ってやがる!」


『はぁ、乙女が毎日お風呂に入るなんて常識じゃないですか? 何ですか、モラハラですか?』


「モラハラでも何でもいいからこの目の前のエルフに俺に水を恵んでくれるように頼んでくれよ!」


『ショウマさん。私の声はショウマさん以外には聞こえるようにできません。天界規約に違反しています』


 うん、死のう。


「ダ女神、俺はこの場で飢え死にするまでじっとしてるよ。この先のことを考えたらここで潔く死んで現実に帰るのがいいと思うんだ」


 僕は仰向けになって、じっとしていることにする。


『はぁ、本当にショウマさんは駄々っ子ですね。はいっ……これでどうですか?』


 僕の目の前にスピーカーが現れる。ちっ初めからそうすればいいんだよ。


『あ~テステス。そこのエルフさん。私はこの世界の神アトレアです。訳あってここにいる人間は水がいるの。身元は私が保証するからちょっと水を分けてあげてくれない?』


「なんと怪しげな魔法を使う奴め! 女神様の声を真似たところで私は騙されないぞ!」


『いや~だから、私は本物の女神ですよ~。早くお水を持ってきてあげて』


「ふん、女神様がお前のような人間に力を貸すはずがなかろう。さっさと立ち去れ!」


『だから~』


「問答無用! それ以上言うならば攻撃を加えるぞ!」


『だから私が女神だって言ってるでしょうが! ちょっと待ってなさいあなた!』


 突如光りが立ち上ったと思ったらそこにはアトレアが立っていた。


「どう、本物の私を見てもそんなことが、ぶへぁ!」


 僕の必殺の右ストレートを食らって吹っ飛んでいくダ女神。ふふふ、ようやく俺の前に姿を現したな。


「ちょっと待ちなさい! あっ……ちょっと待って! ……痛い! 痛いってば!」


 ボコスカ!ボコスカ!


 僕はこの三日間で貯まった鬱憤を全て晴らすために女神をボコボコにする。


「ふう、もう俺死んでもいいや」


 今までで一番晴れやかな気分だ。もう思い残すこともない。


「女神パワー!」


 僕にボコられてボコボコになっていたダ女神は謎の力を使って傷を治していた。


「ショウマ! あなたねえ! 女神である私じゃなかったら死んでるわよ! 犯罪よ犯罪!」


「ふん、死んでないんだからいいだろうが。それに今まで僕の憎悪を募らせた自分を呪うんだな」


「ぐぬぬぬ!」


「あの~」


 僕達のやりとりを見かねたのかエルフが恐る恐る話しかけてくる。


「アトレア様。先ほどまでの私の非礼をお許しください。水はすぐにお持ちします。どれくらいあればよろしいでしょうか?」


「許すわ。水はとりあえず一週間分くらいあれば大丈夫ね」


「かしこまりました。少々おまちくださいませ」


 そう言ってエルフは森の奥へと走って言った。


「これで水の件は大丈夫そうね。ショウマ私に感謝しなさい」


「てめえが転移失敗しなければそもそもこんなことになってないんだよ!」


「はぁ、本当に手間のかかる子」


 僕は女神に今一度殴りかかる。


「おおっと、私だってそれなりに強いのよ来ると分かってれば避けられるわ」


 ダ女神が。なんてうっとうしいんだ。


「それじゃあ、私は戻るわね。そ~れ」


 ダ女神の周りに光りが立ち上る。光が消えると、そこにはダ女神が立っていた。


「あれ? おかしいわね? そーれ」


 今度は光すら立ち上がらない。その代わりに


『ビー、ビー。重大な天界規約違反を確認。規約違反対象者。女神No.3321111番 通称 アトレア。天界規定により刑を執行します。執行される刑は管理者権限剥奪措置。正規の方法でゲームをクリアしてください。なおゲームをクリアするまでに命を落とした場合、輪廻から外れ消滅します』


「ちょっとまって! まだ大丈夫なはずでしょ!」


 ダ女神は叫んだけど。天界からの声は二度と聞こえてこなかった。


 僕はにんまりと笑ってダ女神の肩に手を添える。


「ダ女神……いや、同士アトレア。一緒にこの世界をクリアしようじゃないか」


「嘘でしょおおおおおおお!」


 こうして、僕とアトレアの二人旅が始まった。




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