第一話:隣の席の子は…
「はぁ…」
溜息をつきながら物憂げに窓の外を見つめる一人の男子生徒。山内和也は、昨日の席替えで決まった新しい座席に不満を募らせながら、自分自身のくじ運の悪さを嘆いていた。
席への不満には理由がある。というのは、この暑い7月に最も陽射しの照り付ける窓際、それも一番前の列になってしまったのだ。
「なんでいっつもこう最悪な席に当たるかなあ」
こう呟くと和也は机に突っ伏し、寝た。朝のホームルームまではまだ時間がある。少しばかり寝て、モヤモヤした気分を解消しようとしたのだった。
教室が騒がしくなる。目を覚ました和也は、もうホームルームの時間か、とおもむろに時計の方向を見た。時計の針は8時25分を指していた。ホームルームまではあと5分。
背伸びをしながらふと隣の席に目を向けてみる。まだ隣は空席のままだった。そういえば、隣は誰だったんだろう。昨日席替えが終わったあとすぐに帰ってしまったから、隣が誰なのか全くわからない。まだ来ていないのは三人。この内の一人が隣に来ることになる。
誰が来るのかなあと考えていると、ようやく和也の隣の生徒が来た。察して、隣に目を向ける。瞬間、和也は目を疑った。
隣に来たのは、小阪舞依。バスケ部のエースでもある彼女は、なんと和也が片思いを抱いている相手だったのだ。
(「ヤッター!!」)
和也は心の中でこう叫びつつ、自分のくじ運の良さを感じていた。