反撃
「ユキ、前に野原で特訓した時の結界かけれるか」
――………あまり神力は使いたくないのですが、特別サービスですー。…神力 "囲い檻"
透明なガラスのようなものが俺たちを囲む。
なんか、今ユキが建物の方を見てたような…まぁいいか。
――これで、好き放題暴れても破損した建物などは自動修復されますー。
「ありがとう。じゃあ、恰好つけずに戦おうか」
「何言ってんだかわかんねぇけど、俺達もあんまり時間はかけたくないんだ!!さっさと倒されろ!」
水牛君がまっすぐ俺に突っ込んでくる。
すごいな、目を閉じていても正確に俺の場所を捉えている。
こんな事で力使うなんてもったいないなぁ。
「"纏い火"」
「なんだ、熱い」
俺の足元から現れた螺旋状の火に水牛君の突進攻撃が止まる。
「動物は火が怖かったけ。火の属性で戦おうかな、結界のおかげで壊しても平気だし。
とりあえず、目を閉じなくとも水の魔法はもうかけてない。閉じたままだと解けたなんて分からないだろ?」
「信用なるか!」
「うーん、でも意味の無い魔法に魔力を使っても仕方ないでしょ」
幻覚を見せている間も俺の魔力はもちろん使われている。俺の場合は底知れぬ魔力だから幻覚をかけっぱなしでもいいけど、炎の魔法にちゃんと集中したい。
「まぁ、閉じたままでいてくれるなら好都合だけど、"火鞭"!」
螺旋状の火が鞭の様にしなる。
「アイツの言う通りちゃんと見えるわ!目を開けて!!」
ワニ娘の言葉で目を開く水牛君。
でも遅い、もう鞭は君のすぐ近くだ。
「ッ!」
「まずはお前からだ、水牛君」
鞭が体にあたる直前にチーター君が水牛君を抱えて避ける。
「惜しい、でもすごい洞察力。さすがスピード狂だね」
――マスター、悪人みたいな立ち位置ですよ。
うるさい、いいじゃん別に。正当防衛だ。
――過剰防衛というものも存在しますー。
ちょっと黙ろうかな、バ神。
「アイツ3属性使える。闇と水と炎だ」
「やっぱり、昼間見た不思議な色の目は間違いなかったみたいね」
「どうやって瞳の色を変えてるか知らないけど奪うだけだわ!!」
3人がすっごく団結している。
それに比べてこっちは俺1人だけ…まぁ 結界貼ってくれただけマシか。
「眼なんて食べてもいいことないよ」
「お前には関係ないだろ!」
「それに私達は食べたりしない、材料として使うのよ!」
流石に迷信を信じて食べたりはしていないのか。
何かの材料に使う方が使い道として良さそうだな
人の目を使う所で良いもクソもないけど…
「材料でも食べるでもさ、人様の目を使うのは良くないと思うよ。"囲い火"」
炎の鞭で3人の上空を囲む。
「繋ぎ、"火炎粒"」
鞭から小さい粒が弾丸のように飛ぶ。
これは、ちょっと威力調整するべきだな…あと命中力もかけてるなぁ…うまい具合に掠ってるだけ。
「なんだこの攻撃ッ」
「見たことない魔法だし、アイツの呪文は俺達が聞いたことない言葉ばかり!!」
そらそうだ、カタカナ使うやつとか覚えれねぇから。漢字だ漢字、この世界にはもちろんないけどな。
「大人しく捕まってもらうね、御三方」
「クソ!舐めやがって!!シュネア、走れ!」
水牛君が叫ぶとチーター君が、弾を避けコチラに走ってきた。
チーター君の名前はシュネアって言うのか。発音しずらいな…
「引き裂かれろ!」
「物騒なこと言うじゃんか、おじさんそんな子見たことない」
喉をめがけて飛んできた腕をしゃがんで避け、シュネア君の影に手をつく。
「"影人形"」
「なんだこれ、動けない」
「はーい、戻って戻って」
弾が飛ぶ、空間へ引き戻す。
相手の影を触れないといけないから単体の相手向きだなこの技は、複数だと 影に触れてる間に攻撃されそうだ。
「コイツ、無茶苦茶だ」
「その通り、俺はまだまだ戦えるよ。」
――マスター、つくづく悪の塊のような顔をしておりますー。私の好みの顔でその顔やめてくださいー。さっさとまとめて縛り上げてくださいー。
なんだよ、人が生き生きとしてるのに…。まぁ 結界貼るのも疲れるか、仕方ない。
「"影鎖"」
火炎粒をと影人形を解き、自分の影から出した3本の黒い鎖が三人を拘束する。
「いっちょあーがり!」
――はぁー、結界を貼ってるからって好きにしてくれましたねー、戻すのめんどくさいんですよ。
神様がパンッと手を叩くと、穴だらけの地面や瓦礫が元通りに戻っていく。
神見習いとか言う割に、神業みたいなの結構使えるよなコイツ。
ッ、終わったら思い出したかのように横腹痛くなってきた…
「両手を上げ、座りなさい」
地面に腰をかけようとしていると、首に何やら冷たいものが当たる
――ただの傍観者だと思い放ってたんですが何者ですかー。
「え、知ってたなら教えてってば」
「こちらを気にしているようでしたからもしやと思いましたが、やはり気づいていましたか」
二人してピリついた空気出して、俺だけ置いてけぼりなんだけど。
ていうか、これもしかして剣を首に当てられてるのかな。
「あのー、これ外してもらえると有難いのですが…」
「それは難しいです。あなたフラーレアの森にいた方ですよね。」
フラーレアの森…あぁ、あの野原のところか
「いたけど」
「鬼神消失のこと詳しく聞きたいので王都にまで来ていただきます」
「はい??」
鬼神ってあのー、俺が目覚めたところに封印されてるおっかない人間の子供だろ…
え、消失って、消えたってことか?俺なんかしちゃった?変なことしてないしな…
「俺何にも知らないんだけど!」
「ですが、あなたがあの洞窟の近くにいたことは分かっています。こんなところで話すのもなんですので、王宮にて話を聞きます」
この男、さっきらから王都やら王宮とか言ってるけど、国の兵士とかそんなところか?
えぇ、絶対めんどくさいんだけど…
「トージー!よかった!無事だったんだね」
「ウリアス、この状態を見て無事に思うお前はどういう神経をしている」
「てっきり解剖とかされてるかと思ってたから…所で、何でこんな所に国の兵隊さんがいるの」
「なんか疑われてる、お前こそなんでこんなとこ来たんだよ」
家で待っとけばいいのに自分から戦場に来るなんて…ましてや、非戦闘員だろ。
「あ、トージ怪我してたからさ 薬持ってきたんだよ」
「有難いけど、この状況の俺に平然と薬を渡すなよ」
渡された小瓶には薄い青色の液体が入っている。
青色って食欲低下の色だよな…飲む気になれない…
「貴方もコレの仲間でしたら一緒に王宮にて来ていただきます」
――この人はこの街の人で、ただのお人好しですー
俺の首に当てられている剣の上に立つな、振動でちょっと擦れたぞ。
「……エーブ・リフル」
俺たちの騒ぐ声に掻き消されるようなほんの小さな声が聞こえた。
鎖に繋がれたままのワニ娘が口を開き猛スピードで突っ込んでくる。コイツらを魔道具一度も使ってなかった…何で円を書いたか知らないけど、このまま来たら確実に誰か噛まれる。
なんて、考えてるうちに開かれた口はほぼ目の前にあった。
俺狙いかよ。
「"リード・シュラブ"」
俺が呪文を唱えるよりも早く、目の前に人が現れ呪文を唱える。
魔法陣が琥珀色に光ってるってことは、光属性の魔法かな、光属性の魔法って自分でもあまり使わないから、なんだか新鮮だな。
ワニ娘はそいつの手に触れると、地面に落ち眠った。
「いやー、大丈夫?」
「え、あぁ、ありがとうございます…」
振り返って俺の顔を見る。
目がすごく綺麗だな…琥珀色と青色と赤色が混ざっている。この人3属性使えるのか。
「何故貴方がここに!」
兵士くんがすごく驚いた顔をしている。え、なにこの人何者?
もしかして、めっちゃすごい魔法使いとか?3属性も使えたらその可能性あるよな。
「ほら、フィリーが精霊寄越したでしょ?あの人がお前がここにいるって言っててさ、来ちゃった」
「来ちゃったじゃないですよ!すぐそうやってフラフラと…」
なんか、すごく手を焼いているんだろうな…お疲れ様だな。
「そもそも、王都からここまでは馬を使って3日ほどかかります。精霊に伝言を伝えたのは今日ですよ」
「妾は、花があればどこえでも一瞬で行けるのじゃ」
いつの間にか花を頭にいくつもつけたお姉さんが立っていた。
なんだこの人、めっちゃ美人だけど、頭の上お花畑とかイタイ人かな?
「貴方はそうでしょうけど…」
「俺は、さっき聞いてフィリーが心配で光速移動でここに来たんだよ。」
「また、デタラメな魔法を考えたのですか!」
光速移動、あぁ光属性の魔法だから確かに出来るな。
もしかして、魔法考えた人だったりして…
「デタラメじゃないし、ちゃんとした魔法だし」
「貴方しか使えないような魔法はデタラメみたいなものですよ。自分が王様だからって好き勝手してはいけません。それに、新しい魔法は申請とか色々手続きもいるんですよ!!」
「はーいすみませんでしたー」
だいぶ抜けてるな、王様のくせに。
というか、新しい魔法は申請がいるんだな、俺の魔法も申請いるんじゃないか…やり方わからないし、言われたらでいいのかな?
ん?………
「王様!?」
「うわ、急に大きい声出さないでよ」
「え、いやだって、え!?」
この20代半ばの青年が王様!?
「驚いたかい、新入りくん」
全てを見透かしたような3色の混ざった瞳が俺を見る。
あぁ、コイツは敵に回しちゃいけない人だ。