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三十路の魔法にひれ伏せ  作者: 擂鉢
第1魔法
7/19

奇襲

 


 ―フラーレアの野原-



「ここにもか」



 草花が揺れる野原の中に、薪の跡や魔法を使用した跡がところどころにある…

 ここ一週間以内に誰かがここで生活をしていたのか?

 それにコレは洞窟の近くに落ちていた銀髪…



「このまま先に進めば、獣人の街があったよな」



 鬼神の消失に何かしら関わりのある人物がそこにいる可能性が高いか。


 1度王都に引き返し、王に報告をした方がいいだろう…が、



「あのフラフラ王様に報告すればきっと自分も行くだなんてこと言いそうだしなぁ」



 簡単に王都から出られては困る。

 仕方あるまい…言伝を頼むとしよう。



「我、水の加護を受ける者、花の精よ我が言葉を聞き給え"マアガ"!」



 野原を花吹雪が舞い、花びらが人の形を成していく



「あら、これはこれは王都の騎士の子が妾に何の用じゃ」


「マアガ、すみませんが私の代わりに部隊を王都に戻る様にお伝えください。それと王に報告もお願いしたいのです」


「その銀髪のことを報告すれば良いんじゃな」


「ご存知で?」


「妾は花の精、この地の花が見たものをすべて知っておるぞ」



 なんだ、最初からコイツに聞けばよかったか。



「なら、詳しく」



「教えてください」と口を開こうとすると、喉の奥になにか違和感を感じた。

 呼吸が苦しい、息が吸えない…喉の奥に何かが詰まっているような感覚だ。



「騎士の子よ、水の加護を受けているが故に妾は基本従う。しかし、あの者については例外なのじゃ。知りたくば自分で見て知るがよい。奴を敵にするも見方にするもお主ら次第じゃ」


「…カハッ」



 喉の違和感を吐き出すように咳き込むと、口からボロボロと花が溢れる。



「まぁ、軍と王への言伝は頼まれてやろう。その毛の持ち主のことは教えぬが、お主が見た鬼神の洞窟の周りのことは伝えてやろう」


「分かりました、ではお願いします。私はこれから獣人の街に向かいます。」



 花の精霊は真実を知る精霊が、面白いことを好む。

 人間が、考え迷い苦戦する様を見るものが好きな精霊。性悪だ。



「そうだお主は、水と風の属性を扱えるようじゃな」


「そうですが」


「一つ助言じゃ、獣人の街は"瞳狩り"が多い街。二つの属性を持つお主は狙われるかもしれぬから気をつけるんじゃぞ」



 嫌な笑みを残し花びらとなって消えた。

 恐らく、俺が率いてきた軍の所にでも行ったのだろうな。


 "瞳狩り"魔力が少ない者が多い街だからこそ、信じるものが多いのか。

 この髪の持ち主に花の精が興味を持つということはただの魔法を使えるやつじゃない。

 眼を狙われる可能性もある…



「急ぐか、エーブ リフル」



 強い風が草花を揺らした。














 夜も老け、ウリアスに借りた布団で眠っていると

 なんだか外が騒がしい。

 ユキとウリアスは涎垂らして寝てるし…仕方ない一人で様子見に行くか。



「そういえば、目の話した時からカーテンも閉めたままだったな」



 音を鳴らさないようにカーテンを開ける。



「へ?」



 なんか窓の外に人たってるんだけど…え、ていうかなんか振りかぶってるよな?木の棒か?

 まてまて、そんなもんここで振りかぶったりしたら窓が割れッ…



 バリンと音を立て窓が割れる。



「"影纏い"!!」



 眠る2人を影の壁が包んでくれたおかげで二人に破片はなんとか当たらずに済んだ。

 魔法一通り陣なしで使えるようにしといてよかった。あとちょっと遅かったら、二人にガラスの雨が降ってたな…

 俺は、掠りまくってめっちゃ痛いけど。



「ん、何これ…真っ暗」


――マスター?



 流石にこの音で起きないわけないよなぁ…

 黒い影が溶けていく。



「あれ、ちょっと明るく…トージ!」


――マスター!!大丈夫ですか!


「ガラス飛び散ってるから気をつけて」



 俺靴履いてるけど、二人とも寝てたから素足…こんなガラスまみれの所なんて歩いたら怪我をする。



「あれ、コイツ眼の色紫だぜ」


「でも、昼間見た時は不思議な色してたわ」


「見間違えとかじゃねーの」



 深くフードを被り手に何やら武器の様なものを持つ3人組が割れた窓から入ってくる。



「ユキさん。確か、負の感情って俺に吸収されてるんだよな?見るからに敵意剥き出しなんだけど」


――あまりこの眼は使いたくないんですけど、解析するために使いますー。…神力の瞳


「ユキの眼が…」



 月明かりくらいしかないから、見られないと思ったけどやっぱり獣の目だから夜でもしっかりと見れるんだな。



――負の感情が吸収されている様子がありません。しかし、吸収しなくなった訳では無いと思われますー。恐らく自然の物や動物の負の感情だけを吸収するみたいですー。


「まじで」


――恐らくです。ですが、今彼らの敵意があることは確実ですー。



 だよねー、なかったらこんな物騒なことしないし。

 獣人は動物には含まれないってことか。



 これがさっき ウリアスが言ってた眼を狩る連中か?

 えぇ、もしかしてこれ戦わないといけない感じか…あ、でも 今俺の目は紫だし 普通のやつに思われて見逃してくれるかも…

 ウリアスは非戦闘員だし、ユキもガラス周りに飛び散ってたら動けないだろうし、1対3とかキツい……あれ…



「ユキ、お前羽あるだろ!!何、か弱いフリしてんだよ」


――女の子を戦闘員に加えるだなんてマスター酷いですー


「無知の人間を1人戦わせようとしてるお前に言われたくねぇよ」



 渋々羽をパタパタと動かし俺の肩に止まる。



「俺は普通に闇属性の人間だからさ、帰ってくれないかな?」



 3人が顔を見合わせる。

 フードのから見える口元が怪しく笑う。



「属性は普通かもね」


「魔法発動した時に、陣が見えなかった」


「そこの妖精さんも不思議な眼をしている」



 低く構え、完全なる戦闘態勢。

 いやはや、よく見ていらっしゃる。陣なくても適当に光るエフェクトみたいなの欲しいな…これだと魔法使う度に変わり者ってバレる。



「二人のその眼を俺達に、」


「ちょうだい」


「まぁ、断られても無理やり奪うんだけどね!」



 言葉を言い終えると同時に1人が飛び掛ってくる。


 早い!!魔法じゃなくてこれは獣の力だな。

 フードで耳は見えないが月明かりでうっすら見える尻尾。

 そこまで動物詳しくないけど、この速さチーターとか豹とかかな…。

 あとの奥の二人は、1人はあれ絶対水牛とかそんなんだろ…角がフード突き破ってる。

 女の子は、と!!



「ずいぶん余裕ぶっこいてるじゃん!」


「いやいや、焦ってるよ。おじさんだしそんな体力ないんだよね。気持ち的に…」



 武器を振りかざすチーター君をひょいっと避けるが、避けた先に観察途中の女の子が大きく太い尻尾を振りかぶっていた。



「オラァ!」



 気づいた時には遅く、尻尾が俺の横腹にヒットした。



「ッグハ」


「トージ!」



 痛いなぁ、骨折れてるんじゃないのこれ。

 あの尻尾の感じ、ワニとかそんなのかな?



――マスター大丈夫ですー?手を貸しましょうかー


「ッ貸す気もないでしょ」



 満面の笑みで「よくご存知で」と言う。

 後で、説教だ覚えとけよ!!

 とは思いつつも、俺もなんだかんだ自分の魔法がどこまで通用するか試してみたい。

 でも、ここで試すとウリアスの家が崩壊しそうだ。というか既に崩壊しかけている…

 とりあえず、窓から逃げるか。



 割れたガラスを踏み窓から飛び出す。



「おい、逃げたぞ!」


「逃げたって俺のスピードに付いてこれないのに」


「早く追うわよ!」



 続くように3人組が後を追う。



「ここから遠ざけてくれた……トージ怪我してた…そういば確か引き出しの中に」



 布団でガラスの破片を除け、机の引き出しを開ける。



「1本しかなくて取っておいたけど、今使わないとね」



 靴を履き、家を駆け出した。









「どう、観念した?」


「観念はしてないけど、やっぱ戦わないとダメ?」


「大人しく妖精と眼を渡してくれれば戦わずに済むよ」



 誰が渡すか……誰かに魔法使うのなんて初めてだし、加減わからないんだけどな…



――誰もいないんですし、悪人に手加減は不要かと思いますー


「うーん、いや 一応街の広場だからさ。崩壊とか怖いじゃん」



 火属性は絶対ダメだし、風も壊しそうだし…大地は使いたくない……あ、そもそも 闇属性じゃないとバレるな。



――狙われてるので、別にもう1つくらい使ってもいいんじゃないですか?


「それもそうか、なら試したいの1つ思いついたんだよね…"水写し"」



 ワニ娘と目を合わせる。



「何、ッあなたいつの間に私の横に!」



 隣にいた水牛君の方を向き距離を取る。



「は、何言ってんだ俺はずっとここに…お前なんだその目!」


「お前コイツに何した」


「おっ、"水写し"」



 チーター君も目を合わせに来てくれた。これ1人1人目を合わせないといけないのめんどくさいな。



「!いつの間にこっちに来た」



 チーター君も水牛君を見て距離を取る。



「お前まで眼が!」



 二人の眼に水の渦が写る。

 いやー、この一瞬でこの薄明かりの空間で目の変化に気づくなんてやっぱ眼を狙ってることしてるだけあるなぁ。



「お前何をした!」


「敵に、情報与えるわけないでしょ。ついでに、目を合わせてくれてありがとう…"水写し"」


「なに言っ…!」



 3人とも晴れて仲間を俺とユキだと思い込んでいる。



――性格悪い戦いですー


「俺怪我してるからあまり動きたくないの」


――治癒魔法苦手ですもんねー



 地面に座り、3人組の戦いを見る。

 水写しは、水属性の魔法で簡単に言うと幻覚を見せる魔法だ。

 相手と目を合わせて唱えれば、水の渦が相手の目に幻覚を写してくれる。



「いやー、この技覚えといて助かったわ」


――そうですねー、しかし動物というものは賢いものですよ…


「え、うぉ!」



 座っているところにワニ娘の尻尾が降ってくる。



「あれ、解けた?って訳じゃないね、あぁ、目を閉じてるんだね」


「私たちは動物の力があるの。目が頼れないなら鼻が利くわ」


「なるほど、そういう事か。これは獣人向けじゃないんだな」



 さて、どうしたものか…というか、獣人ってそんな強くないって言ってたのに割と戦闘系なんだけど



――3人で互いの欠点をサポートしているみたいですね、連携しているみたいですー。



 俺達も連携すればきっとすぐに倒せるはず。

 あっちはなんだか主人公的な感じだ、それに対し俺は完璧なる小悪党みたい。



「被害者は、俺で変わらいけど」


――ゴタゴタ言ってないで戦いますよー


「俺だけな」



 しかし、しっかり戦わないと人数も体も俺が不利だ。



「仕方ない、戦おうか」



 横腹の痛みを堪えながら立ち上がった。

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