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三十路の魔法にひれ伏せ  作者: 擂鉢
第1魔法
19/19

焔狼



「がんばって魔法で俺の攻撃を押えたかったみたいだけど、俺の魔力の前じゃそんな弱い魔法は無意味だよ」



引きちぎられた紐は、ただの水になり地面をボタボタと濡らしていく



「使える魔法はこれだけではないぞ、その魔法を解くことができたからと言って調子に乗らないことじゃな」



スネイスウルフたちは2列に並び、こちらを向いている

また、変な作戦でも立てているのか、まぁいい 早く片付けてユキを何とかしよう。


魔法陣を出すことはできないが、幸いにもスノーマンたちが俺達を見ていない。

俺が魔法陣を出さずに戦っても大丈夫だろう。

こいつらには、俺が勝って秘密にするように脅せばいい。



「ユキを喰ったことを後悔するんだな。俺に命中力なんてものはない、一瞬で殺せず苦しませてしまうかもしれないが・・・まぁ恨むな」


「お前が強いのは認めるが、ワシら全員を相手してもそれを言ってられるか」



前列でれを威嚇するボスの後ろで2列目にいる奴らが呪文を唱えている。

なるほど、前衛が物理攻撃、後衛は支援と言った感じか



「俺に敵わないことを教えてやろう"衣影(かげごろも)"」



自分の影から、フードのついた真っ黒の衣装を取り出し腕を通す



「お前、何者だ・・・今のは魔法か?だとすれば陣はどうした」



ボスが驚いた表情で俺を見る

そりゃ、影の中から服なんて取り出したら驚くよな



「お前に教える義理はないな、"火炎粒"」



炎籠から火の粒が取び散る

不規則に飛ぶ粒はスウイスウルフはもちろん、俺の頭上にも飛んでくる

スネイスウルフから痛みに耐える声が聞こえる



「グッ・・・ふっ馬鹿め、己にまで攻撃してどうする」


「俺がなんのためにこの服を着たと思っているんだよ」



俺に降り注いできた火の粒は、影衣のなかに吸収されていく



「どういうことじゃ!」



鬼のような形相でこちらを見るが、教えるわけがないだろう。

教えたとしても信じないだろうし、理解なんてものはできないだろうがな。



「ヒントだけやるよ、俺はただの魔法使いの旅人じゃない」


「ええい、見せしめに殺してやろうと思ったが秘密を吐くまで死なせはせんぞ!」



後方の列の式が出来上がったのか、あちら側の陣が一度強く光り消える

じわりじわりと自分のいた地面が膨れ上がる


下から攻撃か



「ほうほう、これは」



亀裂が入ったかと思うと、隙間から水があふれ俺を包もうとする



「なるほど、俺を水で包み込んでしまおうっていうのか。でも残念」



現れた水は、火の粒同様に影衣に吸収され最後の一滴を取り込むと服が俺の体の中へと溶け込んでいった

なるほど、ある程度の魔力を吸収すると俺の体に溶け込んで魔力を補充してくれるのか。

最後まで使ったことがなかったからずっと着ていられるものだと思っていた。



「火炎粒の中ちゃんと式を完成させたのはすごいね。それは褒めるよ。

でも、何頭か集まって強い魔法を完成させたつもりだったみたいだけど、予想以上に力は弱いみたいだね。

ボスのお前は力が弱くなってしまってるみたいだ、本来の力がどんなものか見てみたいな」


「やかましぃ、さっきから妙な魔法ばっかり使いよって」


「降参するか?してもいいが、俺はお前を倒す」


「誰がするか・・」


「そうか、じゃぁさっさと、俺のいいなりにでもなってもらおう」



火籠に手をそっと当てる



「"焔狼(ほむら)"」



炎の中から引き釣り出すように引っ張る

一体あの炎のどこから出てきたのか、大きな足が地面につく

焔狼の全体はボスと同じくらいの大きさ、若しくは少し大きいくらいだろう

地鳴りのような遠吠えが辺りに響き渡る



「喰え」



熱風を巻き上げ、体よりも大きく炎に包まれた口を開き炎籠の中のスネイスウルフを飲み込む



「よし、戻ってこい」



火の子を散らし、俺のもとへ戻ってくると喰らったソレを吐き出す



「よしいい子だ、初めてにしては良いぞ」



焔狼は喉を鳴らし、体を摺り寄せてくる

うん、動物と言うのは良いが熱いぞ



「・・・ッ貴様、我らに何をしたッ・・」



地面に横たわる奴ら、ボスだけ何とか意識があるようだ

後は、気絶しているみたいだな。

さっきの遠吠えで、どうやら炎籠の外の仲間も意識を手放したらしい



「こんなになるとは俺も思わなかったんだがな、遠吠えでまさか気絶されるとは思わなかったんだ。

お前たちがどうしてそうなったかは、この焔狼が魔力を食べ、体力を抜きとったからだ。さっきあいつの口から吐き出された玉のようなものはお前たちの体力だ」


「そんなふざけた真似」


「いや、これはふざけもない事実だ。残念ながらこういうことができてしまうような人間なんだよ、俺は」



焔狼がスネイスウルフの体力の玉を転がして遊ぶ。

力加減を間違えれば砕けてしまいそうなものだ、砕ければ・・・その辺の力加減はあいつもわかっているだろう



「ならば、さっさと儂を殺すんだな」


「そうだな、殺してもいいのだがお前はどうやらとびぬけて強いみたいだ。でも今は体力も魔力も底をつきかけているみたいだ、俺と戦う前からな」


「何が言いたい」


「お前に、体力と魔力をやる。お前だけじゃない、全員にやろう、その代わり俺の言うことを聞くんだな。本来の力を取り戻してもう一度戦いたいならその後でもいいぞ」



鳩が豆鉄砲を食ったような顔でしばらく俺の事を見る

そしてフッと笑った



「いや、分かった儂の負けじゃ。お前に興味がある、儂らを束ねるに相応しい力をもっている」


「束ねるというか、普通に言うことを聞いてくれればいいんだ。とりあえず、みんなを起こさないといけないな。焔狼はお前たちにとどめを刺しかねないからな」


--なら、特訓もかねて光属性を使いましょー



頭上から聞き覚えのある声がする



「ユキ、お前どうやって出てきた」


--正直中で本来の姿に戻り、私を喰ったやつの肉体を四散させるつもりだったんですが、焔狼が中に入ってきたので、溶け込んだんですー



心配はしていなかったが、何事もなかったように話すユキを見るとどこか安心する



「光属性か、確かに滅多に使わないからな。使ってみるか」



光属性とか最初に特訓した時ぐらいじゃないのか?



「ユキ、全員に体力と魔力を与える魔法とかあるか?」


--同時に与えるものは存在しません、かなり複雑な式になると思いますが考えてみましょうー、少しお時間をくださいー



目を閉じ、俺では一生理解できないような言葉をブツブツと唱える。

ユキでかなり難しいと思う魔法とか、絶対この世界の人間はできないんじゃないか?

あ、王様ならもしかしたらできるかもなぁ・・・



--できましたー、マスターちゃんと杖持ってくださいねー、式が複雑と言うことはそれだけ強い魔法ですー

しっかり持っておかないと反動でマスターが分散してしまいますからー


「と言うことは常時使えるものではないな、必要なときにだけ使う魔法にするか」


--準備ができれば、呪文を唱えてくださいー


「よし、焔狼支えになってくれ・・・いくぞ"綿毛"」



杖の先に巨大な陣ができる

今までに見たことない大きさだ


陣に向かい息をかけると、いくつもの綿毛が飛び出しスネイスウルフの体に溶け込む



「なんと・・・光属性の魔法も使えたのか、それにこれほど大きな陣・・・この老いぼれがこのような力の強い方に使えることができるとは」


「とりあえず今は休め、急な魔力と体力は体が慣れるまで少し時間はかかるだろうから

少し経てば起こしてやるから」



俺の言葉を聞きゆっくりと瞼を下した



さて、俺は準備でもしようか


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