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三十路の魔法にひれ伏せ  作者: 擂鉢
第1魔法
13/19

雪男



――あそこの洞窟に火が見えますね、スノーマンがいるかもしれません。見に行きましょう―



ユキが指さす方向を見ると、洞窟の中でチラチラと揺れる火が見えた。

この極寒地域をあの火だけで、生き抜いているのか・・・いっそ山全体を燃やした方が暖かくなるんじゃないか?まず、住めなくなってしまいそうだけれど。



「とりあえず行ってみるか」





洞窟を目指し、歩き続けようやく目の前に洞窟が現れた。

遠くから見ていたからそこまで大きく思わなかったが意外と大きいし奥の方まで続いている。



「火はついているけれど、誰もいないな」


――ちょっと声でもかけてみましょうか、もしもーし!



ユキの声が奥へと響いていくが、返答はない・・・留守か?

でも、火をつけっぱなしで留守にするなんて、危ないなぁ



「返事ないけれど、奥に結構な人数いると思うよ、いろんな人の匂いがする。それに音もかすかに聞こえる」



ウリアスが耳と鼻ピクピクと動かしている。

俺には匂いも音も全く感じないけれども、狼並みの嗅覚と聴覚もつウリアスには分かるのか。



「よし、それじゃぁ"把握"」



つま先で地面をコンコンと叩くと、足元が黄色い地脈に覆われる。



「何するの?」


「ちょっと人数でも数えようと思って」


「数えれるの?」


「まぁ、ほら俺の魔法でちょちょいとすればわかるよ」



足元にある地脈を洞窟の方に伸ばしていく。



「"影隠れ"」



黄色いい光を帯びていた、地脈が影の中に溶け込んでいく。




「あれ、消えちゃった」


「暗闇であんなのが光ってたら逃げ出すだろ?影の中に溶け込ましたんだ。・・・そうだな、人数は結構奥深くに27人いて、そのうち5人は子供だな。」


「そんな細かなことまでわかるんだね」


「地面に掛かる重量が大人にしては軽すぎるからな、あと魔力量もわかるんだ」



スノーマンと言うから大きいのを想像していたが、一般的な大きさみたいだ。

人間の平均成人の大きさが子供で、俺が思った子供が赤ちゃんとかなら話は別だが、子供だけをこんなところに放っておかないだろう。



――27人ですか、スノーマンは50人ほどの人数で行動する種族ですー。ですが、半分ほどの人数しかいないということは、狩りか新しい移動場所でも探しているのでしょうかー


「・・・、いや近くにいるよ」



頭に生えた耳を小さく動かし、少し真剣な表情でウリアスがつぶやいた。



「近く?こんなところで狩りなんかもできるものなんて無さそうだし、近距離で住処なんて探さないよな・・・」


「あちこちから結構な人数が、静かに動いてる音がする」



あちこち?それは囲まれているのではないか?

狩りから帰ってきたら俺たちが洞窟の周りにいて、警戒して俺達を囲んでいるとかそういうことか



「把握を使いたいけれど、溶け込ませる影がないからなぁ。相手に敵意があると誤解さるのは防ぎたい」


「もしかして僕ら囲まれているの?」


「今気づいたのか、そうだな多分警戒して囲んでいるんだろうな。敵じゃないって示したいんだけれどな」



むしろ食料を調達したいから、仲間だと思ってほしいくらいだ。

この状況をうまく打開するにはどうすればいいだろうか。



――マスター!私は良いことを思いつきましたー!


「ろくでもないことだと思うが一応聞こう」


――人質


「却下だ、言うことを利かすんじゃなくて、仲間だと思ってもらわないと困るんだよ」



だいたい、人質なんて取らなくても言うことくらい聞かせることができる。



――そもそもですねー、人質になるような人を固めているのが悪いんですよう



それもそうだな。弱い魔力しか持って居ない人だけを集めるだなんて囮みたいなことをするもんだな。

俺が把握できなかった魔力があるなら話は別だけれど・・・



「ウリアス、向こうの作戦とか聞こえないか?」


「うぅん、作戦は聞こえないなぁ・・・あ、待って何か言ってる・・・イス?・・・グル?」


「イス?座るのか?」


――私が思うに、呪文のように思いますー



ユキがそういうのが先か後か、恐らくスノーマンがいるであろう

ウリアスと俺の足がパキパキと音を鳴らし凍っていく



「うわッ!なにこれ」


「暴れたら折れるぞ、と言うかユキお前自分だけ安全なところにいるな」


――何をおっしゃいますかー、私は常に飛んでいるのですー。けして逃げたとかそういうのではないのですー



ふわふわと俺の頭の上に止まりのんびりと欠伸をする

こいつ、魔法が発動されるのわかってたな。まぁいい、ここは大人しくしている方がよさそうだな



「ウリアス、今は大人しくしておくぞ」


「ん?どうして」


「魔法でどうにかできるが、そんなことしても相手に警戒心を与えるだけだ。今は無力な一般人のフリでもしておくぞ」


「確かにそうだね」



俺達がこそこそと話を進めるうちに、胸元まで凍っていった。

少しひんやりとするが、春風のおかげで震えるほど寒くはないな。


俺たちを囲むように、枯れ木や雪の山の影からスノーマンらしき人物がゾロゾロと現れる。

その中のうち一人、背丈はウリアスと同じくらいの人物が俺たちに歩み寄ってきた。



「アンタ達は何者だ」



フードを深くかぶっているため、顔は分からないが声的に男だろうな。



「何者って言われたら旅人かな。今食料がなくて困っててさ」


「スノーマンに食料を分けてもらおうと思ってたんです」



嘘偽りのない言葉を並べる



「なるほどね、でも不思議に思ってるんだけれど。人間も妖精族も獣人族もそんな軽装備で寒くないのかい?」


「あぁ、これはね魔法で・・・」


「ウリアスそれは今言うべきじゃない」


「魔法ね。でも闇属性の魔法で寒さがしのげるとは思えないけれど」



それもそうだ。今こいつらに見えているのは紫色の瞳だけつまり、春風が説明が出来ない。

が、あいつは俺の瞳は見れても、フードを深くかぶっているからユキの目は見えないだろう。

他の奴らもフードをしっかりと被っていて、小さなユキの瞳なんて気づかないだろうな



「ユキ・・・」



小声でユキを呼ぶと小さく「分かっています」と返してくれた

さすが、俺の考えを勝手に読むだけあるな。初めてその力が役に立ったぞ


俺の頭を2回ユキが軽く叩く。

多分目の色を変えた合図だろう、あとちょっと馬鹿にしたことに対してもかな?

まぁいい、これで春風の魔法は説明がつく



「どうしたの、何か隠し事?」



隙間から見えるくちもとがニヤリと嫌な笑みを浮かべる

俺達が怪しければ即凍った部分でも破壊する気だろうな。



――これに関しては私の魔法ですー。実は私は2つの属性が使えますー



俺の頭からふわりふわりと羽ばたく

ウリアスには、話を合わすように目配せをする。こいつはうっかり言ってしまうタイプだからな



「俺達金もそんなになくてさ、装備買うのもったいないからコイツに魔法をかけてもらったんだ」


「そういう事か。実は俺も2種類の属性が使えるんだよ」



そういってフードがゆっくりと取られていく

片方が青色、もう片方が琥珀色の瞳だ



「水と光属性だね、氷の魔法なんてあったなって思ったけれど、そうかこの寒さで水の魔法は凍ってしまうんだね」


「ご名答だよ。水の性質は腐食だけど光属性も入れた魔法だから、腐食効果は打ち消されているよ」



そういえば光属性は浄化だな。というか性質はオリジナルの魔法だと変わったりするのに、腐食の性質がそのまま残ってるとか、殺傷能力高いな



「まぁ余談は置いといて、実はずっとアンタ達のこと見てたんだよ。ここに近づく前から」


「ほう?それで、無害だっただろ?」


「確かに無害かどうだろうな、妙なことをしていたんだよ。アンタの足元が黄色く光ってた」



近づく前から見てたって言ってたし、そりゃその場面もがっつり見るよな。

というか、ユキ絶対こうなること分かってたな。

ウリアスは洞窟の匂い嗅いだ時に分かってほしかったなぁ



「・・・」



これは、フォローがしにくいな

恐らく、地脈までは見えないだろうが、黄色い光が俺から出たということがまずい。

大地の属性使ってみたかったから使ったけれどそれがダメだったんだな



――それも、私なのですー



くるりと宙返りをし俺の鼻先に止まる

体重を消しているのか、それほど重くない。これ体重消されてなかったら骨折とかしてたのかな



――私は大地につかさどる妖精なのです。先ほどの光は、大地の力を使い洞窟の中を調べていたのですー



嘘ではないな、唯一間違っているとすれば俺が使用したと言うことだけだろうか。

良く思いついたな



「大地につかさどる妖精・・・それに火の属性が使える・・・」



目の前の男は顎に手を置き、考えるそぶりを見せゆっくりと口を開いた。



「なぁ、俺達と取引をしないか」




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