魔法
獣人族の村を出て、何日か歩くと辺りが白銀に包まれた世界になった。
――肌寒いを超えた寒風・・・
「その空間にあるこのフワフワは・・・」
――「雪----!!」
目を輝かせ、同時に雪の中にダイブをし固まる二人。
この寒い仲良く雪に突っ込めるな・・・、普通に考えて寒くて、凍結しそうだ。
あぁでも、子供って体温が高いからそこまで寒くないのかな。
「しかし、森でたくさん花が咲いていたからてっきり今は春だと持っていたが、違ったのか」
――この世界に四季というものは、存在しません。フラーレアの森は年中春みたいなものですー。年中無休で花が咲き続けます。
「花の労働環境過酷だな。」
――そしてここは、年中無休で雪が降っていますー
その年中無休っていうのが、労働環境に聞こえる。
つまりはここは年中寒くて、森は年中暖かいってことだよな。寒帯とか温帯とかそういうものなのかな?
「そういえばお前たち、寒くないのか」
ずっと同じ服装で、こんな寒いところに来たら普通防寒グッズ出てくるだろう。
俺は絶賛寒くて一歩も動きたくない。
「僕は、自然と夏毛から冬毛に変わったからそこまで寒くないよ」
髪の毛のもう量増えたなって思ってたらそういう事か。
え、髪の毛だけで体温調節できるの?獣人族すごいな・・・
――私の場合、温度言うものを遮断してますー。別に感じようと思えばできるのですが、そういうのを感じない方が便利かと思いまして。
「さすが神様もどき。なんでもありだな」
――"もどき"ではありません。見習いです、そのうち神様になります。
とにかく、二人ともちゃっかり自分の事はしっかり地温調節しているわけだな。裏切り者度もめ。
仕方ない、ここは魔法で何かしようかな。
そういえば攻撃魔法とかばっかり覚えて、日常的な魔法とかあまり考えなかったな。
そもそも日常的な魔法が俺にはわからないんだがな。
「悪い二人とも、ちょっと体温調節させてくれ」
「ん?いいけれど、どうやってするの」
「魔法で何とかするよ。ユキあの木の棒持ってる?」
――あの小汚い蜘蛛の巣だらけの木の棒ですねー。ありますよー
ゴソゴソと羽を漁り、どうやってソコに入れていたのか謎だが妖精フォルムのユキよりも長い木の棒が出てきた。
あの森で拾った木の棒。魔法の特訓の時にお世話になった棒だ。
「お、ありがとう。よし、じゃぁ呪文だなぁ何にしようかな」
「ん・・・?」
――ウリアス様は、マスターが魔法を考えるところ初めて見るんですね。
「え、考えるの?ここで?」
「そうそう、じゃぁユキよろしく」
――了解ですー
後は、暖かく暖かく、、、
――式が出来上がりました、いつでも大丈夫です。
「"春風"」
赤と緑の文字が木の棒先に現れる。
火属性と風属性を合わせた魔法か、これなら暖かくなりそうだな。
文字が螺旋状に全身を包み、体の中へと入っていった。
「これが魔法の生まれる瞬間・・・」
「あぁ、俺限定だけれどな」
「そうなの?」
――そうですー、本来魔法が新しくできる時は式の計算や、その属性の性質などを詳しく知る必要があります。ですが、マスターの場合ですと式の計算、性質の解読などは全て私が行いマスターは呪文と言う名の言葉を作るだけなのです。
「だから、俺自身式なんて知らない」
村でフィリー君が言っていた申請とかをもし出すとなっても、俺は式を描くこともできないし、どうやってその魔法ができたかも答えることができないのだ。
「じゃぁ、ユキがずっと魔法のサポートを?」
――いちいちそんなことをしていると私が疲れてしまうので、初めてその魔法を使う時だけ私のサポートが必要ですが2回目以降の発動はマスターが呪文を唱えるだけで使えるようになるのですー
「それすごいことじゃない?」
「俺自身すごいと思ってる」
普通に考えてチートだもんね。いろんな属性使えるは、魔法も色々使える上に思うだけで新しい魔法がユキによって作られる。主人公キャラと言うより、もともと最強設定の魔物みたいな感じ。
四天王とかの、めっちゃ強い魔物タイプ。
「そういえば、トージは魔法使う時に陣出ないんじゃなかった?今は出てたよね?」
「あぁ、ユキが関われば陣が現れるんだよ。俺だけの時は出ない、だって式とか知らないし」
「そういうことだったんだね」
――式がわからないと、陣を出すことは不可能ですからねー
「さぁ俺の魔法の仕組みについてもわかったし、暖かくもなったしもう少し歩こうか」
寒くて動けなかった足も、今ではしっかり動けるようになった。
「こんな寒いところにいても何もなさそうだしな」
――ですが、この場所結構広くて抜けるには4日ほどかかりますよ?
「僕も実際は言ったことないけど、ここって地図で見ると大きかったと思うよ」
野宿は別にいい、これだけ寒いと多分猛獣もいないだろうからな。心配なのは食糧だな。
寒いから植物も生えていない、小動物もいない、なのに手持ちの食糧はそれほどない・・・
「成長させても、この寒さだと実前に枯れてしまいそうだな」
「そもそも、此処一帯に生えている植物は実がなるものはなさそうだよ。」
つまり、かなりの食糧危機と言うことか、せめて住人とかいればなんとかなりそうなんだけど
この寒さの中暮らしている奴なんていないだろうしなぁ・・・
――いえ、住人ならいるかもしれませんー。
「いるのか」
――スノーマンと言う方たちがこの寒さですと暮らしていてもおかしくないです。彼らは極寒を好みます。
「あぁ、確かに彼らなら此処に暮らしててもおかしくないね、でも移動民族じゃなかった?」
スノーマンってことは、雪男か。俺のイメージだと毛むくじゃらで斧もって襲ってくるイメージなんだけど、大丈夫なのかな?
――洞窟を探しながら暮らしている民族ですので、山の方に向かっていけば会えるかもしれません。とにかく進んでみましょうー
「そうだね、そういえばトージのさっきの魔法僕にもかけてくれる?流石に山の方に行くには寒いと思うから」
「あぁ"春風"」
ふぅっとウリアスに息を吹きかける
「本当に魔法陣なしで、さっきの魔法が使えてる・・・あれ、でも呪文だけでいいんじゃ」
「いや、なんか物足りなくてさ、あと正確にちゃんと魔法をかけるにはちょっと条件が必要だったりするんだよ」
――手間がかかる条件をすればするほど正確に魔法が使えますー。言葉だけで魔法は使えたとしても、命中力がなければ意味ないですからねー。私もそこまで完璧にしませんー
俺としても、魔法使っている感じが少しあって楽しい。
全てが何もしなくて、思った通りにうまくいくなんて楽しくない。