可愛い朱鷺と、強くなりたいアトリ
朝起きたとき、それは起こった。
アトリが目を開けると、体に掛け布団とは違うぬくもりというか、圧迫感があった。
不思議に思い、掛け布団をめくると……、
―――――朱鷺がいた――――。
しかも、アトリに抱き着いている。
手足を器用に使い、アトリに巻き付かせていた。
「っっ~~~!!!!」
言葉にならない叫びをあげた。
なんでなんでなんでなんでなんで!?
どうしてこうなった……。
一人百面相をしていると、六時の目覚ましが家中に鳴り響いた。
メイドたちの目覚ましも含まれるため、ざっと100個分の音だ。
防音の部屋でも聞こえるような、すさまじい音でこれは嫌でも起きる。
「ん…、ンぅ?……うぅ~」
朱鷺が起き、かわいらしく目をこする。
何時もの朱鷺じゃないみたいだ。
何時もが『きれい』なら今は、『可愛い』だ。
「あー主。おはよーございます」
あいうえおが伸びていた。
それがまた、かわいい。
朱鷺の意外な一面。
『寝起きは幼く、かわいい』
♦♦♦♦♦
「先ほどは、申し訳ございませんでした。」
アトリは着替えるために、一度時に外で待っているように言った。そして、着替えが終わり、ドアを開けると腰をきれいに90度まで曲げ、謝罪をしてくる朱鷺がいた。
「あーと……、何が?」
「その、寝ている間にだっ抱き着いたことです……。」
「それは別にかまわない。」
「でも……。」
朱鷺は頑固だった。
「大丈夫だ。」
「すみません、ありがとうございます。」
何度も何度も、頭を下げる朱鷺。
それを見て、アトリは朱鷺をもう少しいじめたくなった。
ドSスイッチオン である。
「朱鷺。」
「なんですか?」
アトリはにやりと笑い、朱鷺の耳元に口を寄せ、言った。
「寝起きの朱鷺、すごくかわいかった。」
ボフッ!!そんな音が聞こえるぐらい、朱鷺の顔は真っ赤になった。
腕で顔を隠しているが、隠しきれていない。
言った本人も、まさかここまでの反応とは思ってもみなかった。
「耳まで、真っ赤」
そう言って追い打ちをかけると、朱鷺は逃げるように「少し、外します」と言い、どこかへ行った。
朱鷺の意外な一面
ピュアですぐ真っ赤になる。
♦♦♦♦♦
「ただいま戻りました、主」
そう言って、リビングに来た朱鷺の顔はまだほんのりと赤かった。
その後は、アトリはにこにこしていたが、反対に朱鷺はとても静かだった。
朝食を食べ終え、アトリは口を開いた。
「父さん。俺、武術を習いたい」
その場にいた全員の視線がアトリに集まった。
「どうした?急に」
「昨日の誘拐で痛感した。俺はとても弱い、ということに。だから、ただ執事の朱鷺に守られっぱなしの主は嫌なんだ。」
真っすぐと父さんの顔を見ていった。
「わかった…。ただし、やるなら本気でやれ。これが条件だ。」
「うん。本気でやって俺は強くなるよ。ありがとう父さん」
「アト、怪我をするな、とは言わないけど、無理をしないでね」
武術を習うということは、怪我がつきものである。
母さんはそれを心配していた。
「うん。」
アトリはそう言い、リビングを出て行った。
そんなアトリを朱鷺は追いかけようとしたが、まだ仕事があるため追いかけることはできなかった。
朱鷺が焦りながら食器を運んでいたら、璃音さんが「早く行きなさい」と言ってくれたため、主をいち早く追いかけることができた。
主は自室に入りと踏み、3回ノックをした。
「入っていいぞ」
「失礼します、――――……。」
「武術の件、だろう?」
朱鷺は何か言いたげな顔をしていた。
それをアトリが察したようだ。
「はい」
朱鷺が俯きながらそう言った。
「私では、不安ですか?」
「そういうわけじゃない。俺は、自分の身ぐらい自分で守りたいんだ。昨日も俺が弱かったから、朱鷺はケガをした。だから、もっと強くなりたい」
「私の怪我は主のせいではありません。」
「例え、例えそうだとしても、俺はこれからのために強くなりたい。」
アトリの意思は強かった。
これでは朱鷺は折れるしかない。
「そうですか…。ではしっかり強くなってくださいね。ですが、奥様もおっしゃたように、ご無理はなさらないようにお願いいたします。私にできることなら何でも致しますから。」
「本当か!?じゃあ、たまにでいいから俺に稽古をつけてくれ!」
「私でよければ喜んで」
♦♦♦♦♦
学園を早く書きたい…。
予定では、これから4話目ぐらいの予定です。
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まだまだ初心者の私ですが、これからもよろしくおねがいします!