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最強執事の主観察  作者: 黒白
幼き、アトリと朱鷺
3/12

誘拐 アトリ視点

今日一話目です。


目を開けたら、とても暗かった。閉じても明けても暗かった。見えるのは、永遠に続くような闇のみ。

怖いっ・・・・。


「朱鷺っ!!」


いつもなら、名前を呼べば来てくれるのに。

どうして来てくれないの?朱鷺。

朱鷺、怖いよ。どこにいるの?朱鷺っ、朱鷺!!


「おっ。やっと起きたんだね。はぁ、はぁ、」


朱鷺じゃない野太い声が聞こえた。なぜか鼻息が荒く、気持ち悪い。

朱鷺の声は、少し低くて耳に残るような感じで、落ち着くのになぜかこの男の声には虫唾が走る。


「だ、れ?」


「僕のことはご主人様って呼んでね、アトリちゃん。あの執事のことは忘れるんだよ。僕とずっとここにいるんだよ。」


「えっ?でも帰らないと……。」


「何言ってるの?ここがアトリちゃんと帰ってくるところだよ。大丈夫。気持ちいいことしかないよ」


頭の良い俺は、この言葉で瞬時に察した。誘拐されたんだと。

目的は何なのだろうか。このおじさんは、何をしたいんだ。

俺は、どうすればいい?

その時、頭の中で朱鷺の声が聞こえた。


『主。もし攫われた場合の対処法を言うので覚えていてくださいね。いいですか?』


朱鷺に出会って少しだけ経った時、朱鷺がそんなことをいっていたのを思い出した。

その為、朱鷺が近くに時がいるような気がして、少し落ち着いた。

やっぱりすごいな朱鷺は。未来予知をしているみたいで。


『まず、今の状況を確認してください。手や足など拘束がしてあったり、目隠しをされていたり、とにかく自分の状況を理解することが大事です。』


目隠しはされてる。手は、鎖か……。足は大丈夫だな。

よし。確認したぞ、朱鷺。


『確認が出来たら、どうやって誘拐されたかを思い出してください。何か、薬を飲まされたり、注射器を刺されたりしていませんか?』


分かった朱鷺。

確か、朱鷺にあげるものがあって、そこで目をつむってって言ってそれで……。

後ろから、鼻をつままれて何かを飲まされたんだ。そしたら、眠くなって、ここに連れてこられたんだと思う。


『それの確認できたら、あまり相手を刺激しないようにしてください、そしたら


               私が絶対に助けに参りますから。』



朱鷺。待ってるから、待ってるから……。


「どうしたの?アトリちゃん、急に黙って。どこか具合でも悪いの?」


「大丈夫、です。」


「よかった。ねぇ、アトリちゃん。僕のことご主人様って呼んでみて」


いや。無理無理無理無理!!そういうおじさんも気持ち悪いけど、何より「ご主人様」っていう俺のほうがきしょいよ!!

 俺も同じような呼び方を朱鷺にされているけど、朱鷺は好んでそう呼んでくれている。

実は俺みたいに嫌だったり……。しないよな?

 それより!ご主人様呼びの件だ。どうするどうするどうする!!!言いたくないに決まっているだろう。


『あまり相手を刺激しないように―――――』


ウッ……。でも、朱鷺が言ってたし。

やっと、自分の中の葛藤に終止符が付いた。

 よし、逝ってしまおう。あっ間違えた…言ってしまおう。

この際、プライドなんて捨てるんだ!!


「ご、ご主人様?」


し、しまったー!最後に疑問符をつけてしまった。

何てことしているんだ自分!!キモさが増しただろう!!


「・・・・・・」


「あ、あの?」


やっぱり、駄目だったのか……。下から、俺をさらったおじさんを見た。

つまりアトリは必然的に上目遣いになっているのだ。


アトリは性的におじさんの理性を刺激してしまった。

上目使い+首傾げ+拘束されている手。

アトリのすべてに、おじさんは興奮していた。


「っアトリちゃん!!いいよ、いいねっ……。可愛いよっ」


息を荒げながら、俺に近づいてきた。

目隠しをされているため、おじさんが何をしたいのか全くわからないのが決め手となり、アトリの恐怖は最高潮に達した。


「え、あ…なに?」


声が震えているのがいやでもわかる。

するとおじさんは、俺の着ていた服を持つとビリビリに破いた。

空気にさらされる肌。今はまだ春先のため肌寒い。

アトリは、本能によって軽く身震いしたが、寒いなどとは思えなかった。

 なぜなら、余りの驚きに、固まってしまっているからだ。


そんな俺のことを見ながら、肌を撫でてきた。

きめ細かくも色白い、触らなくてもわかるすべすべの肌。

触ると、びくびくと揺れる体。


これもまた、おじさんを興奮させた。


脇腹を撫でられゾワリと、全身に鳥肌が立った。


「ぃや、だ。やめろ!!」


気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!朱鷺早く来てっ。

朱鷺!朱鷺!

心の中で、朱鷺のことをずっと呼んでいた。


「……き……朱鷺!!!」


その時、音が聞こえた。それも、かなりの爆音。

また何か、おじさんがしたのかと思い身構えていると何かが倒れる音。


何なんだ!いったい何が起きている…?


アトリは、目隠しがされているため何もわからなかった。

すると、何かが被せられた。

その時に鼻孔をかすめる匂い。


「あ……朱鷺?」


「はい、主。遅くなってしまい申し訳ありませんでした。」


 声、匂い、口調、今わかるすべてが俺の知っている朱鷺だった。


「朱鷺っ!!」


俺は、声のしたほうへ飛びついた。

思っていた通り、朱鷺はそこにいた。


「朱鷺、朱鷺っ」


あぁ。さっきから、「朱鷺」としか言ってないような気がする。


「主。少しじっとしていてくださいね。目隠しと、鎖を切りますから。」


「ん。」


黙って俺はされるがままになっていた。

目にくっついていた圧迫感と腕の重みがなくなり、目を開けると少し頬が赤くなっている朱鷺がいた。


それが、妙に色っぽかった。

徐々に自分の頬も赤く染まっていくことがわかり、顔を隠すように朱鷺抱き着き、顔をうずめた。


「?どうしましたか?主」


朱鷺の、心臓の音が聞こえた。

でもそれはどこか、早いリズムだった。


あぁ。そういうことか……。


朱鷺は、急いできてくれたんだ。だから、顔が赤くて、心拍数が早かったんだ。

日頃、俺のペースに何事も合わせてくれるため、余り急いでいたり、焦ってたりしているところを見たことがない。たった3歳しか変わらないのに。

いつも、悔しさを感じていた。


でも、そんな朱鷺が急いでくれた。俺のために。

 

うわぁ。なんか、すっごい嬉しい……。


そんな気持ちを伝えるために、腕にぐっと力をこめた。


「う、わっ。ちょ、主、苦しいです」


「わざとそうしているんだ」


「なんですかそれ。」


そのつぶやきには答えないでおいた。

でも、さすがに朱鷺でも苦しかったようで少しだけ腕の力を緩めた。


「うっ……。」


朱鷺じゃない声が聞こえた。

もちろん俺でもない。消去法で出される答えは、おじさんだった。


「ちっ。もう起きたのか」


んん!?今のは、朱鷺だよな?

敬語、てか舌打ち!?ありえないありえないっ!


今まだ敬語じゃないところ聞いたことないんだけど?

だから、敬語は癖なのかと思っていたけど違うのか?


いろいろな疑問が浮かぶ。これは本人に聞くしか……。


「なぁ、朱」


「おまえ、アトリちゃんの執事だな!?」


俺の言葉を遮った、おじさん。


「そうですが、何か?あと、貴方のような方が、主の名前を呼ぶだけで主がひどく穢れます。貴方が息をするだけで空気が穢れ、その空気に触れた主がまた穢れます。貴方の声が主に聞こえるだけで主の耳が穢れます。貴方が、主の目に映るだけで主の目が穢れます。貴方の存在はもはや主にとっての害虫でしかありません。いや、それでは害虫に失礼ですね。」


ま、まさかの毒舌。もはやそれ、遠回し死ねって言ってるようなものじゃないか。


「な、なんだとぉっ!!」


おじさんは、ナイフを持って朱鷺に突進してきた。

危ない!!


「朱鷺っ!」


朱鷺にはよける気配はない。

どうするつもりなの?


おじさんが、目前に迫った。

もう駄目だ、と思い目をぎゅっとつむった。

何も音がしないため目を開けると、


床に滴る赤い液体。それが真っ先に目に入ってきた。

それの出どころは、朱鷺の手だった。


「あ、や……。」


朱鷺は、ナイフを素手でつかんでいた。

俺は、赤いそれを見たとき、手が、体が震えた。

それは、おじさんの同じ様だったようで、ナイフから手を放して座り込んでいた。


「う、うわぁぁぁっぁぁ―――――っ」


おじさんは、腰が抜けておりただひたすらに騒いでいた。



「黙りなさい。五月蠅いですよ」


ピタッとやむおじさんの奇声。

す、すげぇ……。


「なんの覚悟もないのに人にナイフを向けるとは、愚か者ですね。いったいあなたは何をしたかったのですか?……はぁ、まぁどうでもいいですけどね。ただし、金糸雀家を敵に回したこと、後悔してくださいね?」


おじさんがその問いに答えることはなかった。


「金、糸雀?あっ…そんな、こ、と……。」


 金糸雀家、それは一般人でも知っているような家名だ。

それほどまでに、金糸雀家の世界への影響力は絶大。

その家を敵に回した、ということは、社会的な死を意味するといっても過言ではないだろう。

それを、このおじさんはわかってしまったのだろう。


死んだような眼をしているおじさん。


ちょうどその時、警察がすでに壊れているドアから入ってきた。


「警察よ!」


おじさんはそれでも反応をしない。


「この人ね?誘拐犯は」


「はい。もう抵抗しないと思うので、早くその人を連れて行ってください。主が穢れるので。」


朱鷺にしては冷たい声に、蔑んだ目。


「朱鷺?」


「はい。どうしましたか?主。」


 朱鷺の顔はいつも通りに戻った。

 ほっとした。


「ううん。なんでもない」


「左様ですか」


その様子を、目を見開きながら見る警察官たち。


「えーと、被害にあったアトリ君というのは……。」


「はい。私の主です。」


では、と、警察官の人が何か言おうとした時、それを遮るように朱鷺が言った。


「失礼ながら、今日は自宅に帰らせていただきます。メイドたちや、主のご両親も

主の帰りを待っておられます故。なにより、主の心のケアも必要です。事情聴取は今日じゃなくてもいいでしょう?」


「あっはい」


「では。その害虫は頼みました。失礼します」


最後まで毒舌……。


そこから、俺たちの姿が見えなくなったころ警察官の一人がつぶやいた。


「害虫?」





長かった。ふぅ……。

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