誘拐
今日、2話目です。
主は可愛かった。純白で素直だった。あの時、までは。
あの時、俺が主から目を離さなければ、
あの時、俺が刺されなければ、
あの時、俺じゃなくて別の執事だったら、
何か、変わっていたのだろうか……。
♦♦♦♦♦♦
あの日は、とても晴れていた。主の髪は、天然の金髪で太陽の光が反射して、何時もよりとても可愛かった。あの時は主が小5で、俺が14歳だった。主は、それはもう可愛かった。だから、怪しい男どもには特に気を付けていたのに…。
「朱鷺―。」
男子にしては、高めの声が俺の耳に響いた。主だ。
「はい。どうしましたか主。」
「あのな、ちょっと目をつむってくれ!」
そういった主は、背中で隠していたが手に何かを持っていた。
何なのかは見ればわかることだが、あまりにも主がニコニコしていた為見ないでおくことにした。
「はい。」
「あーちょっとしゃがんで」
身長差を補うようにしゃがんで、目をつむった。ここで、俺は失敗した。
主が持っているのが気になっていろいろなパターンを考えていて周りに注意を払えていなかったのだ。
……いつまでたっても、主は、目を開けていいよと言ってはくれない。
「主?」
周りに気を配ると、主の気配がない。
急いで目を開け立ち上がり、周りを見渡しても、主はいない。
「ちっ。」
自分のやるせなさに対しての舌打ちをした。普段の彼ならありえないことだ。
早急に対処をするために、主の家へ連絡した。
「暁です。・・・はい。主が攫われました。私の不注意です。・・・場所はわかります。私はすぐ主のもとへ向かうので、警察への連絡は頼みます。・・・・・・はい。よろしくお願いします。では」
電話に出たのは、メイド長で話が早かった。
俺は、燕尾服の左の内ポケットから出した端末機で主のGPSが発信されているところを確認した。
移動速度から見て車だ。
「ちっ」
二度目の舌打ち。俺には、移動手段がない。車の免許の持っていない。走ったとしても…。遅すぎる。
あまり目立ちたくなかったんだが。一番早く行けるのはあれしかないよな…。
俺は、近くにあった家の屋根へ木や塀を使いながら器用に登った。
GPS端末機を片手に屋根と屋根の上を走りながら移動した。
これは、パルクールといって本来は体を鍛える運動だが、俺はそれを移動手段に使ったのだ。
足場は多少不安定だが、今までたくさんパルクールを練習したのと、平衡感覚には自信があったため不安はなかった。
朱鷺が考えていたのは、主のことだけ。
「止まった……。」
GPSの動きが止まり、さっきのスピードよりとても遅いことから、歩き始めたのだと推測した。
これならっ……。行ける!
主。待っていて下さい。