⑧今治城駅-3「4人の夜」
⑧今治城駅3
「輪島?」「美波?」「美波ちゃん?」
3人が声をそろえて言ったとき輪島は起きた.
時間はもう20:00を回っていた.
輪島が何もなかったかのように
「たこ焼きは?」
「まだだよ. 4人で食べよう? 美波ちゃんごめんね」
「本当にごめん知らない街を歩かしてしまって綾も悪かった」
「僕もごめん. 最初から追いかけてやれなくて」
「でも追いかけてきてくれたじゃん.」
「それは遅かったから」
2人が謝っているなりに笑っているのに少しむかついたが別にもう良かった.
「早くお風呂にいっておいで.」
「たこ焼き待っておくから」
そう2人はいって輪島は再び風呂にいった.
そしてその間やっぱり僕はいろいろ突かれた.
「桜川. 本当にようやったな かっこいいよ~」
「まさかおんぶしてくるとは思わなかったしね~ 綾ならタクシー呼ぶわ」
「しょうがない. 金もバスもなかったし,輪島歩けそうになかったから」
「でもよかったな. 距離が縮まったぞ.」
「桜ちゃんの家に泊まらんかったらこんなんもなかったな」
「輪島がかわいそうやろ」
「あ,ごめんさすが好きと想う人への対応が違う.」
「当たり前のこと言っただけですけど」
「でも本音で,直樹.ありがとう.」
「私も本音はそれ. 美波ちゃんを救ってくれてありがとう」
「あ,うん,どうも. でもなんで下の名前?」
「ちょっと感謝の気持ちを言うには下かなと思ったから.」
「そっか」
そして輪島が風呂から出てきた.
「さぁ.少し遅くなったけどたこ焼き始めようか.」
普通のたこ焼きなのにみんな笑顔で
中学のときよりも楽しくしゃべっていた.
とうとうみんなが興奮し出したのか僕を下の名前で呼び始めた.
「直樹! ソースとって.」
「うーい」
しばらくするとみんながたこ焼きで遊び始めた.
「直樹.コレ食べてみて.」
「いいけど… なんか赤くないか…?」
そのたこ焼きを口にしたとたん吐きたくなるほどの辛さに襲われた.
すごく辛い. 口の中がひーひーする.
「なにこれ」とようやくしゃべってもしんどいぐらいからかった.
みんな3人は笑っているがコレの苦しみはすごいものだ.
「美波がハバネロ入れたらどうなるかな?とか言い出したからよ.」
「美波がやったのか… からい.」
その瞬間わからなかったが僕は輪島を下の名前で呼んだらしい.
「直樹. 今美波ちゃんのことなって言った?」
「ぜったい下の名前で読んだよね. 綾は聞いたぞ.」
こうなったらごまかすしかあるまい.いまだにひーひーする口から
「綾奈も桜も食べたらわかるはずだ. コレは辛い.」
「なんかうちらも下の名前で呼ばれてるよ」
「まぁ綾たちも下の名前で呼んでるしいいじゃない」
よし,ごまかし成功.
あまりにも辛さが続くので3人にこれ以上のものを作ることにした.
中身に七味唐辛子,ハバネロ.ソースの代わりにチリソース.
「3人とも食べてみて」
「いや見るからにからそうだし.」
「僕にすごいの食べさせたでしょ. お返しだよ.」
「やったの美波ちゃんだから.」
「じゃあ美波から. 次に綾奈か桜な.」
「え~ 直樹ひどい.」
「ひどいのことしたのはそっちでしょ」
「まぁまぁ. 帰りの媛鉄,快速特急にするから」
「なら食べる!」
ここで3人いっせいに美波に対してひいた. ドンびき.
電車のためにその辛いのを食べるのか…
「やっぱり美波って鉄道オタクなの? 好きの上?」
「それは夕方からの疑問.」
「美波ちゃん. どうなの?」
辛そうな顔をしてすごい声で答えた.
「好きですよ. 電車. オタクだけどなにか?」
再び3人でひいた. ひいてしまった.
女子で鉄道好きっているんだな. しかも愛媛に.
そんなこそこそばなしをしながら2人にも
激辛たこ焼きを食べるようすすめて.
「直樹! コレを辛いって言わずにたべられたら何をくれる?」
「そうだよ. 美波にだけ何かがあるのはずるい!」
「そうだな… 2人とも西宮に僕の金で連れて行ってあげる.」
「ああ,意外な感じだけどいいかもね. この雰囲気が兵庫でも味わえるのか」
「その場合美波と桜ちゃんが行かなかったら綾は行かないからね」
「美波は特急か西宮かどっちかだね.」
「え~. その選択は厳しい.」
また3人でドンびき. やはり輪島は鉄道オタクだったんだ.
とりあえず. 4人とも激辛たこ焼き食べたのでおあいこです.
しかし4人分の松山→西宮の料金を払うのはなかなかきつい.
1900×4=7600円か… 大変な約束をしてしまった…
「なぁ西宮連れて行くって行ったけど僕の帰るときでいい?」
「何日後?」
「何日だろうな… そんなには無いと思うけど…」
「そこが決まらないと綾らも答えられない.」
とりあえず明日ここを経つとして明日実家に一泊.
するとあさってに西宮に帰ることになる.
でも別に実家に帰らなくてもいいというのは事実.
親に連絡もしていなければ聞かれてもない.
「僕は明日かあさってに帰るかな」
「美波はいけるよ.」
やけに輪島が行く気だ. 媛鉄が関係しているからか?
「明日は無理かなあさってならいける.」
「桜ちゃんと同じ.」
第一なんで予定のない2人が明日無理で
実家に帰るはずの輪島が明日いけるんだ?
どう考えても不思議. 不思議でたまらない.
「じゃああさってで」
そうは言ったものの明日をどうやって過ごそうか…
「直樹. 何時にどこ集合?」
「どこにする?」
みんなで話し合って決まったのは媛鉄小松駅.
なんせJRじゃなくて本当によかった.
JRの場合やけに高くなって4人分も払えない.
「なぁJRじゃ駄目なの?」
「絶対無理」
「まぁ媛鉄でいいじゃない.」
「綾奈ちゃんは伊予鉄が最寄だもんね~」
「関係ない. っていうか黙れ.」
「伊予鉄がどうかしたの?」
話を聞くと実際に伊予鉄が最寄らしいけど.
彼氏の家に行くときに乗るのが伊予鉄城北線らしい…
そんなんで伊予鉄をだすなよ…
鉄ヲタじゃないけどそこは思う.
「とりあえず. 何よりも松山からJRだと遠回りだから」
輪島ナイス! その説明は思いつかなかった.
とりあえずJRだけはつかいたくない. 高いから.
「じゃあこっちは小松まで出ないといけないのか… 何時の電車?」
「さぁ? 別に何時でもいいんじゃない?」
「はやめがいいよ. 早目が」
「綾は朝に弱いけん無理.」
「じゃあ12:00ぐらいに小松でどうですか?」
「もう少し遅らそう?」
大垣が布団(座布団)の準備をしながらいろいろ言っているのは
いまいち聞き取れなかった.
しかし座布団で寝るのは初めてのような気がする.
大垣も客がこんなに来ると思っていなかったんだろうな…
もう時間も23:00を過ぎようとしていた.
中学のときと違い共通の話題が少ないので
修学旅行の時みたいに夜の長話はなかった.
とりあえずあさっての約束の時間を決めてもう寝た.
明日1日どうやって過ごそうかな…
実家に帰るのも面倒くさいな…
家の最寄り駅は古町.
大街道から伊予鉄に大回りで行かないといけない.
わざわざ上一万方面へ行くのもなんか嫌だしな…